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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志
2章

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第43話

 ――大聖女、いけると思ったんだけどなぁ。


 ヴェルナーは心の中でぼやいていた。

 完全に古の大聖女として復活したルニカはかなりの力を持っていたはずだ。

 だが、ルニカは戦いすらしなかった。

 ニルマを見て、あきらかに怯えていたのだ。

 あげくの果てには自分に対して浄化を行った。戦わずに死を選んだぐらいだ。過去によほどの目にあったのだろう。


 ――次は何をしようかなぁ。なんとなく強いのを作ろうと思ってたけど、目標ができると張り合いがあるよね!


 ヴェルナーは、過去のことをよく覚えていない。

 気づけば今のようになっていた。

 何か目的があってこうなった気もするのだが、それすら忘れている。

 何もかも忘れているので、とりあえずの目標がなにかすごいものを作ることだった。


――もうちょっとニルマくんの調査をしてみようかな。五千年寝てたっての本当みたいだし。遺跡の調査に本腰を入れようか。それかイグルド教かな。あそこは資料が豊富だし、聖遺物もたくさん残ってる。それに森のダンジョンでニルマくんが戦っていた巨人も気になるな。あれはどうなったんだろ。あれを回収するのは大変だろうし、放置してるのかなぁ。


 調べたいこと、試してみたいことはいくらでもある。

 ヴェルナーは考えているだけでわくわくとしてきた。


 ――とりあえず、ニルマくんのとこに顔でも出しとこうかな。もう僕が複数いることは知ってるみたいだけど……どんな顔をするのか見てみたいし。


 ヴェルナーの行動に大した理由はない。

 大体はただの思いつきだし、興味本位なだけだ。


 ――んーと。ドーズの街に僕はいたかな……。


 ニルマに会いに行くのなら、まだ印象に残っているうちがいい。

 あまり時間をあけてしまうと、なんだか締らない結果になってしまう。

 ヴェルナーは、現時点で稼働している身体の位置を確認する。

 ドーズの街近辺のダンジョンで活動中の身体があった。調査は一旦中断して街に戻そう。

 そう指示を出していると、大きな音が聞こえてきた。

 どこかで何か派手なことが起こっているらしい。

 もちろん、そういった刺激は大歓迎だ。

 ヴェルナーは、どの身体が捉えた音なのかを確認しようとした。

 不思議なことに、どの身体のそばでも大したことは起こっていなかった。

 気のせいだったのか。

 あるいは、同期に不備でも発生したのか。

 そう考えているとまた音が聞こえてきた。

 何が起こっているのか。

 そう思った瞬間、強烈な光を浴びてヴェルナーの目が眩んだ。


「こんにちはー。マズルカ教の方からきましたー!」


 それはすぐ側から聞こえていた。

 先ほどからの音は、ヴェルナーの本体に装着されている集音装置が捉えていたのだ。

 ヴェルナーの光学系感覚器が明順応する。

 ヴェルナーの視野には、神官服を着たニルマの姿が映し出されていた。

 ヴェルナーは混乱した。

 何が起こっているのかすぐにわからなかったのだ。


「ん? 喋るのは出来ないのかな」


 ニルマが近づいてくる。

 そして、ようやく自分がどこにいるのかを思い出した。

 地下深く。誰も入ってこれないように、二度と出られないようにと厳重に封印した部屋にヴェルナーの本体はいるのだ。


「こんにちは。先日はよくもやってくれましたね。ですがまあ、ものすごく驚いておられるかと思いますので多少は溜飲が下がった気持ちです」


 ニルマの側に浮いている本が喋っていた。


「ええ。あなたがおっしゃったように、私とあなたは似たもの同士、つまり卑怯者ですよ」

「ヴェルナー。あんたに付き纏われるのも鬱陶しいからさ。ミクに逆探知してもらったよ」

「私が使っていたものと同系統の術ですしね。遠隔操作の大元を探るのはそれほど難しくはありませんでした」


 ニルマがさらに近づいてくる。


「脳みそが水槽に入ってるって、こんなの初めて見たよ」


 ニルマが真正面に見えていた。

 その水槽の上部に目が付いていることをヴェルナーは思い出した。

 ニルマが手を伸ばす。

 天井付近にも目があることをヴェルナーはさらに思い出す。

 そちらから見れば、ニルマが円筒形の水槽に掌を当てているのがわかった。


 ――助けて! やめて! 僕が何をしたっていうんだ!


 そう言いたかったが、ヴェルナーの本体には発声機能がなかった。


「私に喧嘩売っといて本体は高みの見物なんて許さないよ。やられたら徹底的にやり返す。それがマズルカのやり方だ」


 ぴしり、と音が聞こえる。

 ニルマが何をしたとも思えないのに、水槽にひびが入っていた。


「脳には痛覚がないとのこと。あなたが苦しみもだえる様を見られないのがとても残念です」


 水槽が砕け散り、培養液があふれ出る。

 感覚器に繋がる導線が断線したのか、何も見えなくなり、聞こえなくなった。

 一切の感覚がなくなり、真の闇に閉ざされる。

 ヴェルナーは、自分が死んだのかどうかもよくわからなくなった。


  *****


 当面の様々な問題は聖導経典により解決した。

 契約が切れて野放しになっていたネルズファーとは再契約を締結。

 これにより、ネルズファーは人に危害を加えることができなくなった。今後は、ニルマの命令がなければ子犬の姿のままだ。

 幽霊屋敷に蔓延っていた悪霊は、聖導経典の知識にある浄化の儀式で対応できた。

 これにより、ニルマは本拠地をその屋敷に移すことになった。それなりの広さがあるので、教会からあぶれた孤児は屋敷で預かってもいいかという話になっている。

 今後もちょっかいをかけてくるであろうヴェルナーについても聖導教典がその位置を突き止めた。

 その場所は、こともあろうに幽霊屋敷の地下だった。

 地下室のさらに下、幾重もの扉で封鎖された小さな部屋があったのだ。

 そこでニルマはヴェルナーに留めを刺した。

 ニルマからすればヴェルナーは喧嘩を売ってきた相手だ。

 複数のヴェルナーがいてそれを操る本体がいるのなら、その本体を倒すまでニルマの喧嘩は終わらない。中途半端な結末にするつもりはさらさらなかった。


「いや、どんな偶然なんだって話ですよ」


 国民昇格試験から数日後。

 ニルマとザマーは冒険者センターに向かっていた。

 聖導経典のミクは、ニルマが斜めがけにしているショルダーバッグに入っている。

 この時代に、ふわふわと浮いている本など目立って仕方がないということでこうすることになった。


「なんかさ。エムちゃんとかも、ヴェルナーが実験で作ってたらしいよ」


 M8号。

 幽霊屋敷を支配していた、しっかりと意識のある悪霊だ。

 彼女は消えたくないとのことだったので、悪霊から善霊へ転換していた。これによりいるだけで瘴気をまき散らすような存在ではなくなっている。

 もうどこにでも行けるようになったのだが、それでもエムは屋敷に居座っていた。


「なにがどうなったら地下で脳みそだけになってんですか……」

「さあ。何か人しれないドラマでもあったんじゃない。どうでもいいけど」


 その後、ヴェルナーの姿をした少年が倒れているのが各地で発見されたというが、それもニルマにすればどうでもいい話だった。


「ヴェルナーって死体を操ったり、魂を操ったりしてたわけなんですよね? 自分が死んだ場合も悪霊みたいなのになるってことはないですか?」

「一度死んだらノーカンだよ。もっとも、また襲ってくるってなら今度は魂すら消滅することになるけどね」


 そんな話をしているうちに、二人は冒険者センターに辿り着いた。

 仮設の事務手続き棟へと向かい、昇格の手続きをする。

 試験は合格していたので、二人は無事に国民に昇格できた。

 次に納品受付の建物に行き、残りのポイントを現金化する。

 4000ポイントのうち2000ポイントは昇格に使われて残り2000ポイント。これが2000万ジルになった。

 かなりの大金なので、教会の経営も少しは楽になるだろう。


「一段落ついた感はありますね」

「でも落ち着いてもいられないけどね。問題は山積みだし」


 教会の経営はまだ安定していないし、信徒をもっと増やす必要がある。

 世界全体を見れば、異世界からの侵略問題は解決の兆しも見えていない。

 けれどニルマは、そのうちなんとかなるのではと気楽に考えていた。

2章完で、以前はここまででしたので今の所は続きはありません。

書籍版は細かい修正だとか、校正入ってたりとか、若干戦いが増えてたりとか、書き下ろしがついてたりとかしますので、興味があればそちらもどうぞ。


続きは状況が整えば書くかもしれません。

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