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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志
2章

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第31話

 オーランド王国の国民昇格試験の前日。

 飛行艇の中心部にある小さな部屋にミクルマはいた。一部の者しか知らない、入ることを許されない秘密の部屋だ。

 ミクルマは、その部屋に聖女アンナを呼びだした。


「あまりへりくだられてしまいますと悲しくなってしまいます。私とあなたの仲でしょう?」


 部屋に入ってきたアンナが跪こうとしたので、ミクルマはそっと手を上げて止めた。


「では、失礼いたしますわ!」


 アンナは堂々とミクルマの対面に座った。

 誰に対しても物怖じしないのがアンナのいいところだ。


「しかし、ミクルマ様がこんなところにおいでだなんて驚きましたわ!」

「少しばかりこちらに用がありまして……結果的にそれが今回アンナ様をお呼びした件につながるわけなのですが」

「どういったご用件でしょうか?」

「ドーズ地区で発生する災厄。私はそれについて調べていたのです」

「災厄……それはエルフが引き起こした大災害のことでしょうか」

「いえ。ですが今思えばそれも何かしらの予兆だったのかもしれません」


 アンナが話にのってきたので、ミクルマは適当に話を合わせた。


「しかし……災厄とはなんなのでしょうか? しばらくこちらにいますが、そのような話はまるで聞いたことがありません」

「それはそうでしょう。これは神のお告げによるものなのですから」

「そ、それは失礼いたしましたわ!」


 もちろん、これも適当な話だった。

 神滅大戦の序盤にイグルド神は死んでいる。

 ニルマに殺されたことをミクルマはよく知っているのだ。もういない神からお告げなどくるわけがなかった。


「それは、どのような災厄なのでしょう」

「古の魔神、ネルズファーの復活」

「ネルズファー……存じ上げませんが魔神というぐらいなのですから、それは恐ろしい存在なのでしょうね……」


 アンナは、勝手に魔神の姿を想像して深刻な顔をしていた。

 これも適当で、ミクルマはどこかで聞いた名前をとりあえずあげてみただけだった。


「ネルズファーが蘇れば、侵略者どころの騒ぎではなくなります。未曾有の災禍となることでしょう。それはなんとしても阻止せねばなりません」

「ミクルマ様は、対策をご存じなのですか?」

「そのことでご相談があるのです。アンナ様は、国民昇格試験の監督をなさるとか」

「はい。ですが、それがどう関わってくるのでしょう」

「実は、受験者の中に魔神ネルズファーを身に宿しているものがいるのです」

「では、その宿主を私が倒す。そのようなお話ですか?」


 アンナは聖女で神将で特級冒険者だ。何かを退治する案件で呼び出されるのを当然と思っているようだった。


「いえ、そう単純な話ではないのです。宿主が死ぬと、魔神は宿主の身を食い破って復活を遂げてしまうのです。それは是が非でも避けねばなりません」

「……なるほど。魔神とは狡猾なものなのですね。無辜の民のうちに隠れ潜むとは……しかしその者にはなぜネルズファーが宿ったのでしょう?」

「……卵を拾い食いしたということです」


 ニルマにネルズファーが宿っていて復活しようとしている。

 そんな話を適当にでっちあげたのだが、宿った理由までは考えておらず、ミクルマは即興で設定を追加した。


「はい? あ、いえ、失礼いたしましたわ。古の魔神は卵の形で復活の時を待っているということですのね!」

「そうなのです。古の賢者がネルズファーを卵の状態に還元することで封印したのです。地下深くに埋められていた卵ですが、先日のエルフ災害により地表に露出。それをたまたま拾ったのが食い意地のはったニルマさんという女性で、うっかり食べてしまったというわけです」

「なるほど……そんな偶然が……げにも恐ろしきは食い意地ですわね……」


 アンナがあまりにも素直に信じるので、ミクルマは罪悪感を覚えてきた。

 もっとも、枢機卿であるミクルマの言葉を疑うような信徒がいるはずもない。聖女にまでなったアンナであればなおさらだ。


「それで、私は何をすればいいのでしょう?」

「ニルマさんを人里離れたところへ、魔神が復活したとしても周囲に影響を及ぼさないような場所へ連れていく必要があるのです」

「ちなみにそのニルマさんは、魔神のことは知っておいでですの?」


 知っているのなら協力を仰げばいい。アンナはそう思ったのだろうが、この話をニルマに知られるわけにはいかなかった。


「知りません。知らせるべきではないと思っています。知らないうちに……人知れず魔神とともに消えていただくしかないと……」

「それはあまりにも酷なお話……いえ。ミクルマ様ほどのお方がそう決断なされたのですから、他に方法はないのでしょう」


 何も知らない一般人を殺す話だというのにアンナは納得していた。

 ミクルマが苦渋の決断を下したのだと勝手に決めつけているのだ。


「はい。ですので、今回の試験で使用するダンジョンを変更していただきたいのです」

「なるほど。できるだけ人里離れたダンジョンへ、ということですのね」

「ええ。そして、彼女だけをダンジョンの奥深くへと連れていって欲しいのです」

「それでどうするのでしょう? 殺してしまうと復活するのですよね?」

「古の賢者が残したネルズファーを封印する術があるのです。それがうまくいけば宿主ごと卵に還元することができるのですが、その際にどのようなことが起こるのかわかりません。人里離れた場所へ行くのは、万が一のことを考えてなのです」


 もちろんそんな封印術などないし、ネルズファーなどいるわけもない。

 これはただ、最終兵器を使用するためのお膳立てでしかなかった。


「わかりましたわ! 未曾有の災厄を阻止するためとあらば!」


 アンナは何一つ疑うことなく、ミクルマの言葉を信じ切っていた。

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