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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志
2章

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第21話

「じゃあ最初は立ち方からね。足を広げて立ちます。間隔は膝からつま先までぐらいね。で、爪先は正面に向けたまま腰を落とします。股間はアーチ状を意識してね。お尻を突き出さないように。頭頂部から尾てい骨まではまっすぐです。両腕はまっすぐ前に出して、少し肘を落とします。これを馬歩と言います。馬に乗ってるみたいな感じってことね」


 ニルマは馬歩をやってみせた。

 マズルカ流では基本の立ち方だ。

 ただ腰を落としているだけのように見えるがが、守らねばならない点はいくらでもある。

 だがそれを一気に説明しても混乱するだけだろう。まずはなんとなくでも形を覚えてくれればいい。どうせ最初から全てをこなすことはできないからだ。


「じゃあやってみて」


 子供たちが真似をする。

 ニルマは一人ずつ、立ち方を矯正していった。


「これいつまで続けるんだよ!」


 すると、ノーズの足はすぐに震えだしていた。


「いつまでも。だけど、いきなりは無理だから次行くね。左足は曲げたままで、右足をまっすぐ伸ばします。爪先は左側に30度ぐらいひねります。上半身は左に向けて左腕を上にして頭を守るように、右腕は掌にして前に突き出します。これが弓歩です」


 ニルマが見本を見せる。

 子供たちも真似をするがさすがに動きはぎこちなかった。


「馬歩はわかりましたけど、それはなぜ弓歩なんですか?」


 一人だけ、ぼーっと突っ立って見守っているザマーが聞いた。


「知らないけど?」

「それでいいんですか?」

「私も先生に聞いたんだけどねー。弓を引く姿勢とも言われてるし、体重かけてる方の足が弓で、伸ばしてる方が矢だとも言われてるけど、まあそこらへんはどうでもいいよね!」


 名前が重要な場合もあるだろうが、古代より伝わるこの武術において技の名称はかなりの変遷を遂げており、ほぼ意味を失っている。

 なのでニルマは区別できればそれでいいだろうと考えていた。

 知り合いのやっていた武術では、技の名前が「一式、二式」だの「一の位、二の位」だった。さすがにそれでは味気ないので、それよりはましだろうと思っている。


「左向いてるからこれが左弓歩ね。で、ここから馬歩に戻ります。で、馬歩に疲れたら今度は今のを右に向けてやります。これが右弓歩です。今日はここまで。これをずっと繰り返してね」

「これだけかよ!」


 ノーズがあからさまに不満を漏らした。


「立ち方にもいろいろあるけど、この二つが超重要な基本なのよ」

「そうじゃなくてさ。なんか技とかさ!」

「この二つだけでも技になってんだけどね。じゃ、こっちでもいいよ」


 ニルマは馬歩になった。

 その状態から右拳はそのままに、左拳を腰まで引いて構える。

 そこから上半身を右に回転。弓歩に移行しつつ左拳を前方へと打ち出した。右拳は後ろへと引き、打ち出した左腕と引いた右腕が一直線になるようにする。


「これが馬歩弓捶。突き技になってるでしょ。これを繰り返しやってみてよ。最初のうちはゆっくりでいいから」

「いや……これの延長線上に、ニルマ様があるとは思えないんですけどね……」


 ザマーは複雑な顔をしていた。


「もちろんこれだけってわけじゃないけど、全ては基本の上に成り立ってるもんなんだよ」


 朝食まで、この修行は延々と繰り返された。


  *****


 朝食後、ニルマとザマーは街に出ていた。


「冒険者センターに行くんですか?」

「その前にちょっと寄り道」


 ドーズの街の外周部、住宅街を進んで行く。

 向かう先は高級住宅街のようで、いかにも豪華な屋敷が建ち並んでいた。


「このあたりは被害を免れたらしいんだけど……金持ちどもがあんだけの事件後も悠々と暮らしてるかと思うとなんか理不尽だよね」

「ここの人たちが悪事を働いた結果でもないでしょうに」


 このあたりが被害を免れたのはただの偶然だった。

 どれほど厳重な防衛体制を整えていたとしても、エルフの攻撃を前にしてはほとんど意味はなかっただろう。

 ただ、このあたりにエルフの攻撃がこなかったというだけのことなのだ。


「えーと。このあたりかな?」


 長く続く高い塀の中央にある門。そこは当然のように門番によって守られていた。

 武装した男が二人、門の前に立ちはだかっているのだ。


「こんにちはー。レオノーラいるー?」


 ここがホワイトローズのリーダー、レオノーラの自宅のはずだった。


「何者だ! なれなれしくお嬢様の名を呼ぶなど!」


 門番たちは、あからさまに警戒心を見せた。


「マズルカのニルマが会いに来たって伝えてよ」

「そこを動くなよ」


 門前払いというわけでもないようで、警戒しながらも一人が門の側にある詰め所へと声をかける。

 中にも門番がいるようで、そこから屋敷へと連絡を取るのだろう。この時代の技術でも電話の類いはあるのとのことだ。

 それからかなり待たされた後、門が開きレオノーラがやってきた。

 以前に会った時とは違い、落ち着いた雰囲気のドレスを纏っている。

 その顔は、やや呆れたようになっていた。


「なんなの? 朝から?」

「ミカジメ……集金……じゃなくて、浄財の寄進をお願いにきたんだけど」

「……たかりに来たのね……まあ、ここじゃなんだから入ってよ」


 レオノーラに促され、ニルマ達は敷地内へと足を踏み入れた。

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