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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志
2章

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第9話

 ヒノデ村を出たニルマ一行は、再び海を目指して歩き始めた。

 森を抜けて街道へと戻り、南へと進んでいく。


「あの……もしかして、今後こんな感じで信者さんを増やしていくおつもりなんでしょうか……」


 セシリアが聞いた。


「うん。だって、今のままじゃどうしようもないでしょ。結局のところ、宗教の力ってのは信者の数なわけだしさ」

「それはそうなのですが……」

「無理矢理感がある?」

「それは……強制的に入信させているわけではないのはわかるのですが……」

「多少強引なところがあるのは認めるよ」

「あ、多少なんですね」


 ザマーが話に入ってきた。


「でも、最初のうちは仕方がないよ。ま、そのうち軌道に乗ったら誘わなくたって、向こうから入れてくれってやってくるようになるから」

「そう簡単なことでしょうか」


 ザマーは首をかしげていた。


「今のままじゃどうしようもないんだから、やれることをやっていくしかないでしょ」

「そうですね……どうにかしなければ、とは私も思っていたんです」

「あ、そういえばさ。セシリアの教会はドーズ地区を管轄する支部なわけでしょ? 本部はどこにあるわけ?」

「王都にありますよ。規模はその……うちと似たり寄ったりといったところなんですが……」

「おおう……本部でもそんな感じか……イグルド教も王都にあるの?」


 メジャー宗派らしいので、ニルマは勝手にイグルド教をライバル視していた。


「いえ。オーランド王国にはありません。隣の国である、ユニティ聖教国がイグルド教の総本山となっています」

「聖教国っていうと国をまるごとイグルド教が支配してるってこと!?」

「はい」

「……うわぁ……そこまで差があるとは……」


 オーランド王国との比でいえば、ユニティ聖教国は二分の一ほどの面積らしい。

 国としての規模は小さいが、宗教としての勢力はずば抜けている。

 イグルド教からすれば、マズルカ教など眼中に入りもしていないだろう。


「そろそろ海が見えてきますね」


 気づけば、街道はゆるやかな上り坂になっていた。

 そのまま歩いて行くとすぐに頂上へたどり着く。

 そこからは、どこまでも広がる青い海を見渡すことができた。


「どうです? 見覚えあります?」


 ザマーが確認してきた。


「うーん。まったく記憶にない」


 聖導経典を投げ捨てた時の事を思い出す。

 鎖を巻き付け、重りをつけて、どこかの崖の上から放り捨てたはずだった。

 あたりを見渡しても、見覚えのある崖は見当たらなかった。


「海に沈めたとおっしゃってましたよね? 具体的にはどんな感じですか? もし、ニルマ様が本気で遠くへ投げていたらそこらを探しても見つからないなんてことになるんですが」

「うーん。投げた記憶はない。ぽいっと捨てる感じで」

「捨てるって言わないでくださいよ……」

「本気で捨てたわけじゃないよ!?」


 当時の気持ちはよく覚えていないが、多少の罪悪感はあったのかもしれない。

 本気で存在を抹消するつもりなら、重力を振り切って大気圏外に放逐することもできたからだ。


「いずれ回収するつもりはあったんだと思うなぁ」

「他人事感にあふれてますね」

「聖導経典は紙の本なのですよね? 海に沈んで五千年も経って大丈夫なのでしょうか」

 

 セシリアが常識的な疑問を口にした。


「そのあたりは心配してないよ。神から授かった物だからね。海に沈めた程度なら半永久的に保つと思う」

「なんでそんな恐れ多い物を海に捨てられるんですかね」

「なあ? てめぇの道具だったんだろ。気配とかわかんねーのか?」


 足もとにいる子犬、ネルズファーが聞いた。


「気配かぁ。さすがに近くにあればわかると思うんだけど……」


 聖導経典はニルマが聖女になった時に神から授けられた聖具だ。常に側にあった物であり、その気配はよく覚えていた。

 ニルマは、丘の頂上で目を閉じた。

 集中して気配を探る。

 しばらくそうやっていると、微かに引っかかるものを感じた。

 明確なものではないが、聖導経典の匂いを感じ取れた気がしたのだ。


「うーん。はっきりとはわかんないんだけど、ここからそう遠くないどこかににはある気がする」

「ものすごく曖昧ですね……」

「さすがに海に沈んでるやつの気配を感じろって無茶すぎない?」

「沈めたのは後先考えてないニルマ様ですけどね」

「だからって俺が鮫になって海を探ってわかるとも思えねえんだがな……」

「とりあえず……街に行って水着を買おうか!」

「なぜ!?」

「なぜもなにも神官服のまま海に潜れるわけないでしょ」


 海ばかりに注目していたが、丘を下った先には港町が見えている。

 ニルマ一行は、まずは港町へと向かうことになった。


  *****


「おお! 思ってたよりも水着がまともだ!」


 ニルマたちは衣服店に着ていた。

 そこで、水着を試着しているのだ。

 ニルマが着ているのは、タンキニ型の水着だった。

 何で出来ているのかはわからないが、撥水性のある布らしい。ニルマが想像していたものよりもずっと洗練されているデザインだった。


「合成繊維でしょうか。石油とかってこの時代でも採掘して利用できるものなんでしょうかね」


 ザマーはパーカーを羽織り、膝まであるパンツ型の水着を履いていた。


「うーん。この時代、化学技術はかなり衰退してるっぽいけどねぇ」


 だが、この時代の文明にそぐわない技術はだいたいは異世界産なので、この布もワーカーの分泌物などを利用したものかもしれなかった。


「あの! 私まで水着になる必要はなかったと思うんですが!」

「そう言いながらも着てるあたり、セシリアさんは押しに弱いですよね……」


 セシリアはビキニ型の水着を着ていて、恥ずかしそうに胸を隠していた。


「ないっちゃないけど、私が見たかった! すごいな! こぼれそうだな!」


 両腕で自らを抱きしめるようにしているセシリアだが、隠しきれてはいなかった。


「ニルマ様は立派な胸が欲しいとかは思わないんですか?」


 揶揄するようにザマーが言う。


「自分にあっても邪魔なだけでしょ。人のを見たり触ったりの方が面白いんじゃない?」

「あ、その、触るって……」

「大丈夫。大丈夫。許可なく触ったりしないから」

「許可があったら触るんですか」

「そりゃあれば触るでしょ。さて。じゃあ海に行こうか!」


 水着を買ったニルマたちは、海へ向かいはじめた。

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