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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志
2章

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第8話

「三人組のうち二人の素性がわからないとなれば普通は怪しんで襲ってこないと思うから、セシリアはそのままでいいんじゃない?」

「やはり……私のような役立たずは馬車で移動した方がよかったんですね……」

「俺らが言うこっちゃねーが、それが正解だな。こいつなら楽勝だ、って奴だけを選んで襲ってるわけだしよ」


 普通は警戒している強者を狙うことはない。

 なので、盗賊による強盗事件はそう頻繁に発生しているわけでもなさそうだ。


「だから襲うのは、ある程度は素性のはっきりしてる別の村なんかの方が多いわけだ」

「もしかして村同士で抗争とかやってんの!?」

「ああ。普段はそれなりに交流して内情を探ってるわけだ。で、こりゃいけるな、となったら若い衆を集めて襲うわけだな」

「どんだけ野蛮になってんだ、この時代……」


 都市部は文化的な様子が見受けられたが、都市外はこんな有様らしい。

 もっとも、ダンジョン内は無法地帯だったし、基本的には弱肉強食な考え方がこの時代の主流なのかもしれない。


「ま、獲物の選定方法はわかったしそれはいいとして。本題に入ろうか」

「はぁ……どう落とし前をつけるかって話だよな?」


 ガイアンたちは降伏した。

 ならば勝者に従うしかないことはわかっているようだった。


「まず、私らはマズルカ教だ」

「と、言われてもな。その格好からしてどこかの神官なんだろうとは思ったが」

「これがうちらのシンボルね。マズルカ教信者は身につけてるから」


 ニルマは神官服の一部を指さした。

 シンボルは記号的で単純な図案だ。

 信者はそれを服のデザインに取り入れたり、シンボルをモチーフにしたアクセサリなどを身につけている。


「この話し合いがどんな結果になるかはわかんないけど、これだけは最初に覚えといて――マズルカには手を出すな」


 ニルマは、あからさまな殺気とともに言い放った。

 ガイアンは、息ができなくなった。


「出したなら必ず報復する。関わった者を殲滅する。だから、このシンボルを目に焼き付けろ」

「あ、ああ……」


 ガイアンは絞り出すような声で返答した。


「いや、どっちが野蛮だよって話ですよね、これ……」


 ザマーが呆れたように言った。


「で、ものは相談なんだけど。あんたら、うちに入らない?」


 ニルマは平然と何事もなかったかのように問いかけた。


「うち……ってのは、そのマズルカ教とやらにってことか?」


 ガイアンの顔が引きつっている。

 ニルマの急激な態度の変化についていけていないのだろう。


「そう。この村に教会を建ててもらって、うちの教義に従って生きてもらう」

「それは選択肢のある話なのか? 負けたんだから従えと言われりゃ逆らえないんだが」

「強制はしないよ。盗賊行為についてはこっちも勉強になったし今回は大目に見てあげよう」


 盗賊とわかっていて放置するのはいいことではないだろう。

 だが、ニルマにとってはマズルカ教信者が襲われることだけが問題だった。

 彼らが今後マズルカ教信者を襲わないならそれで問題はないのだ。


「メリットは?」

「マズルカ教信者に危害を加える者がいれば、マズルカ教はその存在を許さない。だからあんたたちもマズルカ教に守られることになる」

「ふむ……しかし、マズルカ教など聞いたこともないが、どれほどの力があるんだ?」

「今のところ戦力は私一人ぐらい?」

「……いや、あんたが強いのはわかったが、一人じゃどうにもならんだろう?」

「そこは追々戦力を増強していくから、将来性に期待してよ!」

「言ってることが投資詐欺とかの類いですよね……」


 混ぜ返すようにザマーが言うが、ニルマは無視した。


「で、デメリットだけど、うちの教義は盗みと殺しは禁止だから、盗賊行為はやめてもらうことになるね。あと、定期的に献金してもらうから」

「盗みを止めるのはいい。たまに間抜けを襲ってたぐらいで大した実入りはなかった。けど献金ってのはどの程度を言ってるんだ?」

「んー? あがりの一割ぐらい?」


 ニルマは思いついた割合を適当に言ってみた。五千年前はそれぐらいだったはずだ。


「無茶言わないでくれ……現状で収穫物の五割を領主に納めてる。これでギリギリだ。そこから一割取られたら俺たちは飢え死にするしかねぇ。それこそ、盗賊でもなんでもするしかなくなるぜ」

「あーそっか。元々取られてるのもあるんだよね。わかった。じゃあそれが減ったら、こっちに回してもらえる?」

「減らすって何するつもりなんですかね!?」


 ガイアンではなくザマーが血相を変えていた。

 ガイアンはあっけにとられていた。


「いや……本当に減るのか!?」

「やってみないとわかんないけど。マズルカ教が力を取り戻せばできると思うよ」

「ものすごく先の長い話なんじゃないですか、それ……」


 信者が増えオーランド王国内での地位が確立できれば、領主や王を交渉の席に着かせることも可能だろう。ニルマは楽観的に考えていた。


「それに影響力を増していけば弾圧されたりするんじゃないですか? どの国だって宗教勢力が好き勝手に動くのを嫌がるでしょう?」

「弾圧上等! 真っ向から返り討ちにすれば一気に片付くんじゃない?」

「何をどう片付けるつもりなんだ……」

「……俺の一存じゃ決められねぇ。皆で相談したい。待ってもらってもいいか?」


 しばらく考えてからガイアンはそう口にした。


「うん。今すぐ返事をよこせとは言わないよ」


 ニルマは立ち上がった。

 なにがなんでも海に行って聖導経典を探したいわけではないが、それが必要なことはわかっている。

 急ぐわけではないが、あまりのんびりもしていられなかった。

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