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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志


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第17話

 ガルフォードを聖堂に放置し、ニルマたちは居室に戻ってきた。

 皆がテーブルについたところでニルマが話を切り出した。


「借用書の写しとかあるの?」

「いえ……どなたにいくら借りたかのメモがあるぐらいで」


 セシリアがそのメモを持ってきてテーブルに置いた。


「多いね……」


 それは束と言えるほどの量だった。


「その、細々と繰り返しお借りしていまして……」


 ニルマはメモに目を通していった。

 数は多いが、借り先はそれほどでもない。同じ人物に何度も借りているのだ。


「十人ほどか。一人当たり四十万ジルぐらい借りてる計算だね。ちなみにジルの価値がよくわかんないんだけど」

「そうですね。四人暮らしの家庭の一月の生活費が20万ジルぐらいでしょうか」

「結構な額を借りちゃってるね。借りたのは大金持ちってわけじゃないんでしょ」

「はい……借りているだけでも申し訳なかったのに、おかしなことに巻き込んでしまって……」


 だが、それだけの金を貸してくれる熱心な信徒がいるのなら、まだマズルカ教も捨てたものではない。

 ニルマは少しばかり希望を抱いた。


「契約内容はどうなってんの?」

「利息の設定はありません。ただ、返済期限なしともいかないので、一年以内に返すとしていたのですが……」

「延滞についての取り決めはなかった?」

「はい……その場合は応相談とのことだったんです」

「すると、債権をどうにかして集めた奴らが、期限はとっくに過ぎてんだ、延滞利息金と合わせて今すぐ返せ。みたいなことを言ってきたと」

「その通りです……そして、土地や建物はあるわけですから、それを売れというようなことも……ですが、教会そのものを手放すようなことになってしまえばもう何もかもが終わりなんです!」

「状況はわかった。じゃ、あいつらに話つけてくるね」


 ニルマが立ち上がった。

 ザマーも立とうとしたが、ニルマはそれを止めた。


「あ、ザマーはここで待ってて。私一人で行くから」

「なぜですか?」

「大人の話し合いに、子供にしか見えないザマーを連れてくのも変でしょ」

「まあ、それはそうかもしれませんけど」

「私は当事者として行く必要がありませんか?」

「何かあったときめんどくさいしいいよ。だからセシリアは一筆書いといて。私を代理人にするって。あ、こーゆーのはローザさんに書いてもらった方がいいのかな?」

「何かって……僕、ほんとにいかなくてもいいのかな……」


 ザマーは実に不安げな顔になっていた。


  *****


 アーランド王国には十二の冒険者センターがあり、その一つがあるのがニルマのいるドーズの街だった。

 ドーズの街は三層からなっていて、上空から見れば、四角の城壁が入れ子構造になっているのがわかるだろう。

 一番外側の一層には、冒険者センター、住宅街、商店街などがある。一般的な人々が日常生活を送る場所で、街の七割程を占めていた。

 一層の内側にある二層は歓楽街になっている。賭博場や風俗店などがあり、日常とは切り離された空間になっていた。これらは自然発生したものではなく国策としてこのような配置になっている。

 金を稼いだ冒険者から搾り取り、新たな冒険へと駆り立てるといった目論見があるらしい。

 ニルマは、この雑多で猥雑な二層にきていた。街の中心を通る大通りを歩いているのだ。

 非合法な組織の大半は二層を根城にしているらしい。ニルマの目的地であるチンピラどものアジトもここにあるのだった。

 大通りをまっすぐに行くと、行き止まりになっていた。

 そこが、街の中心部である三層の城壁だ。

 三層は街全体から比べれば極小さな領域だった。一辺が二十メートルほどの城壁に囲まれた、正方形の空間になっている。

 三層城壁の角には見張り塔があり、そこには何人かが詰めている。中を監視しているようだが、それほど張り詰めた雰囲気はなかった。

 中に何があるのかは少し気になったが、今は用事がある。ニルマは三層の手前で曲がり、先を急いだ。

 混沌に満ちた街のようではあるが、区画は綺麗に分かれているので住所さえわかっていれば土地鑑のないニルマでも目的地へとたどり着くことができる。

 薄汚い物であふれている通りを進んでいくと、目的のビルが見えた。

 十字路の角にある、五階建ての老朽化したビルだ。

 入り口には見張りらしき男が二人立っていた。

 アジトの門番なのだろうが、見たところは武器は持っていないようだ。

 冒険者ばかりの街ではあるが、街中での武装は法により禁じられている。少なくとも、武器を腰にぶら下げておくようなことはできなかった。街中で武器を持ち運ぶ際は、使用出来ないようにケースに入れるなどの対応が必要なのだ。

 彼らはマフィアの類であり法を蔑ろにする輩ではあるのだろうが、往来であからさまに法を破ることもできないのだろう。


「なんだてめぇ?」


 ニルマが近づいて行くと、男たちが凄んだ。


「これの持ち主に話あるんだけど通してくれない?」


 ニルマは懐から財布を取り出した。

 チンピラの兄貴分からせしめた長財布だ。当然、中身は取り出してある。


「んなもん知るかよ!」

「はい、そうですかって通すわけねえだろ!」


 彼らのとった行動は単純だ。

 調子に乗った素人が洒落や冗談でアジトを訪ねてきたなら、二度とそんな舐めた真似が出来ないように叩きのめすのだ。

 だが、ニルマに殴りかかった男たちは、背後へとすっ飛んでいった。

 ニルマは少しばかり体をひねって攻撃をかわし、足を引っ掛けてバランスを崩させたのだ。


「うわあああぁああ!」


 その結果、彼らは自らの力で勢いよく飛んで行き、通りがかった馬車に轢かれたのだが、それはニルマの知ったことではなかった。


「こんにちはー! マズルカ教会の方から来ました-!」


 往来でこんなことをしていれば当然注目の的になる

 だが、ニルマには隠すつもりなど毛頭なかった。マズルカここにありと見せつける気満々だったのだ。

 ニルマはドアを開け、チンピラどものアジトに堂々と踏み入った。

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