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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志


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第13話

 十人の集団は、堂々とニルマたちのいる受付へとやってきた。

 先頭にいる少年がこの集団を率いているようだが、ニルマたちを見て不愉快そうに顔を歪めている。


「なに、この騒々しいやつ――」


 不満を言い募ろうとしたニルマの口をセシリアが慌てて押さえた。


「駄目ですよ、ニルマさん! この方の不興を買うような真似をしては!」


 小声で、だが切羽詰まった様子でセシリアが言う。

 ニルマは小さく頷いた。

 とにかく、社会的に上位に位置する輩なのだろう。ニルマもわざわざ、そんな相手と衝突したいとは思っていない。


「で、誰?」

「この国、アーランド王国の第二十四王子のガルフォード様です」

「王子……てか、いまさらこの国の名前を知ったんだけど」

「……国の名前も知らないで、国民になろうってなんなんですかね……」


 ザマーも小声で加わってきた。


「てか、二十四って多くない? よくそんな奴の顔を覚えてるね?」

「と、いいますか王子様の人数は二十四どころではなくて、三桁を超えるとか……さすがにあまりにも下位の王子様のことはわかりませんが……」

「てか、王子ってそこら辺うろちょろしてるもんなの?」

「この国ではしてるもんなんです……その、王様がとても元気のよろしいお方でして、そこら中にお子様がいるという状況で……全て認知されていて、王位継承権もあるという状態なんです」

「それ、権力闘争みたいなの凄いことになってるんじゃ?」

「それは――」


 セシリアが答えようとしたところで、苛ついた声が聞こえてきた。


「なあ? 俺は聞いてるんだよ? なんで、俺がわざわざ登録に来たのに、待たされるのかって?」

「その、こちらの受け付けですと、すいていますのでさほど時間はかからないかと……」


 ガルフォードが、連れている女を殴りつけた。

 女は派手に吹き飛び、椅子やテーブルに激突した。


「すまないね。ちょっと苛ついたもんで。で、どうするって?」


 女がよろりと立ち上がり、ニルマたちのところにやってきた。


「すみません……大変申し訳ないのですが、順番を変わっていただけないでしょうか……」


 女は、腫れた顔で、必死の形相でニルマに頼み込んできた。


「いいよ。大して時間もかかんないだろうし」


 ニルマたちが席を立つと、ガルフォードはすぐに受付前に座った。


「本日はどのようなご用件で――」

「わかりきったことを聞くなよ。冒険者登録に決まってるだろう?」


 十五歳になって登録にきたのなら行列に並ぶのが筋だろう。

 だが、カシミアはその点を指摘しなかった。しても不興を買うだけだと思ったのかもしれない。


「はい。ガルフォード様ですね。王子様方はすでに王族として登録されていて、冒険者の義務は免除されておりますが」

「あほか。それじゃぁ、継承権で上位に行けないだろうが」

「はい。では、こちらにサインを」


 ガルフォードが渡された書類に名前を書き入れた。


「先ほどのお話の続きですが、王子様の継承順位は冒険者としての功績で上下するんです」

「なるほど。統制はとろうとしてんのか」

「ですので、あの後ろにいる方々は、ガルフォード様を見込んでもり立てようとする方々ですね」


 では、先ほど殴られた女性も、自分から仲間になりにいったのだろうか。

 ニルマはそんなことをふと考えた。


「じゃあ神器適応率を測定してくれ。神将のギルドに入るには必要なんだろ?」

「はい。それではこちらの玉に手を置いて下さい」


 それは、台座に置かれた水晶玉と、その横に置かれたメーターからなる機械だった。

 メータは前後どちらからでも見られるようになっていて、指針が0から100までの数値を示すようになっている。

 ガルフォードが水晶玉に手を置く。

 すると、メータの針がガタンと動いた。


「23パーセント……さすがは王族ですね……」

「当たり前だ。神器ならすでに使える。だが、ギルドは融通が効かなくてな。冒険者センターで発行される証明書を持ってこいと言いやがる。ほら、さっさと証明書を出せ」


 カシミアはすぐに証明書を用意した。

 ガルフォードはそれを奪うように受け取り、席を立った。

 とりあえずはこれで、王子様とやらも満足して去って行くだろう。

 そう思い、ニルマたちは再び席についた。


「で、私もこの測定をすれば終わりでいいんだっけ?」

「はい。こちらに手を置いて下さい」


 ――かすかに神気を感じるな。


 水晶の中には、神器の一部が封入されているのだろう。それは確かに神に由来する物のようだった。

 ニルマは水晶に手を置いた。

 針は、ぴくりとも動かなかった。


 ――この野郎……怯えて動かなくなってる……。


 神器の一部にどの程度の意思があるのかはわからない。だが、それはあきらかにニルマの存在を感じ取っていた。その上で、恐怖で縮こまり反応しなくなっているのだ。


「0……ですね……ですが、その、気を落とさないでください……冒険者としての実力とは関係ありませんから……神器を扱える可能性が全く無いというだけですので……」


 カシミアは申し訳なさそうにするが、ニルマは落胆しようもなかった。数値の意味がぴんとこないのだ。

 次にザマーが測定する。

 針は、3のあたりを示した。


「ザマーさんは、3.1パーセントですね。神器の起動だけならなんとか可能な値です」


 ザマーはニルマを見て鼻で笑った。


「こんなんで勝ち誇らないでくれる?」

「いやー、すみませんね。3パーセントもあっちゃって。ニルマ様は何パーセントでしたっけ?」

「このやろう、ここぞとばかりに雑に煽ってきやがるな……」

「ちなみに、神器って仰々しい名前ですけど、一般人が入手できるものなんですか?」


 期待しているのか、ザマーが聞いた。


「基本的には無理ですね。現存する完全な神器は十三本あるのですが全て使い手が決まっております。もしかすればどこかから出てくるかもしれませんが、その際には凄まじい争奪戦となることでしょう」

「だってさ。残念だったね」

「別に手に入るなんて思ってませんよ」

「じゃあ、これで終わりかな?」

「はい。手続きは終了です。お疲れさまでした」


 少し邪魔は入ったが無事登録は終了し、ニルマは立ち上がった。

 次はポータル核の換金に行かなければならない。


「はーはっはっは! 面白い物が見られたな! いくらなんでも適応率が0とは劣等すぎるだろうが!」


 なぜか、ガルフォードは立ち去っていなかった。

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