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二の打ち要らずの神滅聖女 〜五千年後に目覚めた聖女は、最強の続きをすることにした〜  作者: 藤孝剛志


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第10話

 聖堂の中もかなり老朽化していた。

 掃除は丁寧にやっているようだが、それだけではどうにもならないのだろう。困窮しているのは間違いないようだ。

 ニルマは、並べられた長椅子の間を通り、正面奥にあるマズルカ像の前に立った。

 跪き、聖印を描き、指を組んで祈りを捧げる。


「完璧ですね……!」


 一緒にやってきたセシリアが息をのんでいた。


「ここだけ見れば、寝ぼけてパジャマでやってきた聖女様に見えなくもないですね」


 ザマーはなぜか悔しそうだった。


「礼儀作法は死ぬほどやらされたからね」


 礼拝を終えて、ニルマが立ち上がる。


「ニルマ様が、素直にやってたんですか?」

「うん。獣みたいなガキどもを人間らしくするにはてっとりばやかったんだと思うよ」


 その後、セシリアに案内されて、神官の住居へと向かった。

 マズルカ教会は寂れているとはいえ、聖堂、神官の居住施設、墓地、畑など、合わせればまとまった広さの土地を持っていた。

 それらは借金の担保になってはいないが、チンピラどもは、圧力を加えてどうにか取り上げようとしているといった状況のようだ。

 居室に入ると、老婦人がお茶を入れて待っていた。


「私は神官長をやらせていただいているローザと申します。先ほどはびっくりしましたわ」


 ニルマたちが席に着くと、ローザが話しかけてきた。


「あ、びっくりぐらいですんじゃうんですね」


 ザマーが軽く驚いていた。暴力に訴えたことを咎められるとでも思っていたのだろう。


「そりゃあね。返せないこちらが悪いのですけれど、それでもあれだけぐちぐちと言われてしまうと、このやろー! とは思っちゃうわよねー」


 実にあっけらかんとしたものだった。ローザは案外にしたたかな性格のようだ。


「とりあえずはあまり関わりのないうちに一発かましとこうと思ったんですが、それなりに効果はあったんじゃないでしょうか」


 ニルマはテーブルの上に財布を置いた。


「出所はあれですけど、何かの足しにしてください」

「ニルマ様が思ってたより低姿勢だ……」

「あんた、私をなんだと思ってんの? お婆ちゃんに偉そうにしてどうするってのよ」

「ニルマ様の方が歳食ってるんですけどね。五千年をなかったことにしても、二百三十五年分の人生経験があるわけですから」

「ま、それはいいとして」

「いつまでも年齢ネタでいじれないか……」

「借り先は選んだほうがいいんじゃない? どう見てもまっとうな奴らじゃなかったし」


 ニルマはセシリアに聞いた。


「その、借り先は主に信者の方々だったんです。ですが、債権がまとめてあの方々に渡ってしまったようで……」

「で、ポータルを壊しに行ったわけか。それでも足りないの?」

「ポータル破壊報酬はかなりの額になるとは思うのですが、今回は難易度が低かったので……あ、エルフが出てきたとかは関係なくて、出来たてのダンジョンは難易度が低いとされてるんです」


 ポータルは出現から時間が経てば経つほどに力を増していく。

 より多くのワーカーとソルジャーを呼び出すようになるのだ。

 壊れた核を見れば、それがどれほどの力を持っていたかがわかるらしい。


「それに今の借金を返せたとしても、経営が行き詰まっていますので、状況に大差はありません。なので継続的に収入を得る方法を考えていたのですが……」


 セシリアが思惑の説明を始めた。

 この国では、誰もが冒険者となる義務がある。

 正確に言えば、冒険者としての義務を果たさない者は国民として扱われないのだ。

 なので、ほとんどの者が冒険者となって、探索の義務を果たす。

 だが、義務だからといっていきなり探索に出ていけば、すぐに死んでしまう。

 そのため冒険者としての教育が必要になる。

 その教育を担うのが、職業組合と私塾を兼ねたギルドだ。

 ギルドは剣術の流派や魔法の系統で様々なジャンルにわかれている。教会もギルドの一つであり、ここでは回復魔法を教えて冒険者としての神官を養成しているのだ。


「えーっと? つまりセシリアが冒険者として活躍することでギルドとしての教会に注目が集まり、生徒がたくさんやってきて授業料をはらってくれたらいいなー、っていう計画だったと?」

「はい」

「まわりくどいな!」

「で、ですけど継続的な収入を得るにはそれが堅実な方法かなって思ったんですもん!」

「まあね。今の借金を返したとしても、教会がこんな状況じゃ先行きは不安だってのはわかるけどさ」

「信徒さんは減るばかりで寄付金で賄うのにももう限界が……」

「あ、それはそうとさ。一つ聞いていい?」

「なんですか?」

「なんで教会で回復魔法を教えてるの?」


 教会が神官を養成するのはわかる。だが、回復魔法を教えるというのがニルマにはわからなかった。


「え? 回復魔法は神官の代名詞じゃないですか。だったら他に何を教えるんですか?」

「神官って回復魔法使うの!?」

「あの。聖女様、なんですよね?」

「聖女ってそんな魔法使えるもんなの!?」

「そうですね。伝説に名を残すような聖女様は、回復魔法で一度に何人も治療を行ったり、助かりようもないほどに病に冒された人々をお救いになったりされていますね」

「そ、そうなんだ……」


 ニルマにとってそれは衝撃だった。

 神官がそんな、医療従事者のような扱いになっているとは思ってもいなかったのだ。

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