1000PV記念SS 先代白の色素魔導師の物語
1000PV記念に先代白の色素魔導師の物語を公開します。
本編とはあまり関係ないです。
ずっと一人だった。
一人で生きていけるほど、僕は器用な人間じゃなかった。でも、一人で居るのが一番楽だった。そうやって、いつか出来るかもしれない親しい人、大切な人を妄想して・・・
僕はこの世界に来た。
そして僕、片山 夜瀬はたった一人の少女に恋をした。
ずっと人に囲まれていた。
大勢の中で生きているのは疲れる。でも、私は器用だったし、結局は人が居た方が何かと便利な事もある。そうやって、いつか訪れるかもしれない静寂を妄想して・・・
私はこの世界に来た。
そして私、木谷 乃亜はたった一人の少年に恋をした。
それは、紛れもない、あの冬の日・・・
僕はいつものようにギルドに魔物の討伐報告に訪れていた。
「ギルドカードにクレジットを入れておきました。今日もお疲れ様です。」
顔馴染みなのに、未だに敬語で話してくる受付の職員。
今日も一日が緩やかに過ぎていく、そのはずだった。
「このアマ!利息分すら満足に払えねぇのか?」
「ごめんなさい、ごめんなさ・・・キャッ!」
ガタイの良い男が、少女の髪を掴んで引っ張り、クレジットの請求をしていた。
「俺を無礼たツケを払ってもらうぜ、嬢ちゃん。」
「待てよ。」
頭が真っ白になって、気づけば声を掛けていた。
「あぁん?」
「そ、その子を離せ。」
髪を掴んでいた手ではない方で僕を指差し、奴は言った。
「聞こえなかったなぁ。何て言ったお前。」
「離せよ!その子!」
その瞬間、男の身体に赤いエフェクトが纏わり付く。弱属性を用いた特殊な身体強化だ。
「迷惑料でテメェのクレジットも総取りってのはどうだ?え?」
やっと頭が状況に追いついてきた。そして、愕然とした。
「何やってんだ僕は・・・。」
自分の迂闊さに。
「ははっ!無謀なガキに何が出来る?」
その時。そこまで大きい通りでもないのに、人が続々とやって来る。
そして、その視線は全て、今まさに僕を殴ろうとしたその男へと向けられる。
彼の行動を咎める訳ではない。彼に何か言うでもない。ただ、彼を見ているだけ。
「・・・ちっ。」
その男は去っていった。
今ので精神をかなり消費して視界がふらつくが、改めて少女に目を向ける。
黒く艶やかな髪は絹糸の束に夜を溶かし込んだように美しい。長い睫毛を伏せていて目が合わないが、はっきりとした目鼻立ちが整った顔に並ぶ美少女だ。
思わず息を呑む。
彼女が僕を見る。
その瞬間、もう張り裂けんばかりに鼓動していた僕の心臓がさらに速くなった。
潤んだ瞳を僕に向け、少女は言った。
「あ・・・ありがとっ!」
僕は倒れた。
「はっ!」
僕は倒れてしまっていたらしい。
全く、あんなチンピラ一人相手で倒れるなんて、僕はやっぱり人と関わると碌なことが無・・・
「知らない天井じゃん!」
知らないベッドに寝かされてた。
ドアの開く音がして、視界に少女が入ってくる。
あの少女だ。
「良かったです、目が覚めたみたいで。」
どうぞ、とお茶を差し出した少女の笑顔が眩しい。
「ここは?」
お茶を啜りながら聞く。
「私の家です。」
何とか噴き出さずに済んだ。
「何で初対面の男を家に上げてるの!?」
「貴方が倒れたので・・・。助けていただいたし、悪い人じゃないかなって思って。」
信頼の眼差しを浴びる。
「ウン、ボクワルイヒトジャナイ、ゼッタイ」
「何でちょっと片言?」
正直目の前の少女に魅力を感じてない訳じゃない。いや、感じない訳がない。それに、もしかしたら、彼女が僕を好いてくれているかもしれないという淡い期待もあった。
でも、こんな風に信頼されたら、まあ。
彼女とお友達で居るのが一番良いんだな、と思ってしまった。
「その、ありがとう。介抱してくれて。」
「こちらこそ、助けていただいて感謝のしようも・・・お礼なら何でもします!クレジットでも金品でも・・・」
流石にそんな物は受け取れない。
「じゃあさ、友達になってよ、僕と。」
「え?」
「いや、嫌だったら全然・・・」
「是非!お願いします!」
グイッとこちらに顔を近づける少女。
何となく直視しにくい。
「あ、そ、そうだ!名前!教えてよ。」
話題を逸らしてどうにか平常心を保つ。
「乃亜、です。苗字は教えてあげません。」
「僕は片山 夜瀬、よろしく・・・」
何て呼べばいいんだ。
「乃亜って、呼んで!」
「・・・乃亜」
花のように笑った乃亜は、やはり綺麗だった。
「ありがとう、夜瀬!」
僕には、もう彼女しか見えない。
それから、ひと月。
僕は探索者になった彼女と、一緒に魔物の間引きをしていた。
彼女と出会った頃に比べて随分と視野が狭くなった。視力も悪い。今では自分の視属性に視覚のほとんどを頼っている。
「今日は帰ろっか。」
隣でレザーパックというCランクの魔物を倒した彼女は、そう言って僕を見た。
彼女の笑顔は、やっぱり眩しい。
まるで、白明のように・・・。
さらにひと月。
僕らは、彼女の家に居た。
「夜瀬、美味しい?」
「今日も美味しい。ありがとう、乃亜。」
彼女の手料理を食べる。もう僕の目はほとんど機能していない。僕の新しい属性、盲属性が、僕の盲目の恋を象徴していた。
でも僕は、後悔なんてしてない。
彼女が僕を見つめる瞳はこんなにも優しく、その笑顔はやはり眩しいから・・・。
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「夜瀬、どうしたの?」
ふと、色素魔導師補佐の少女にして僕の想い人の乃亜が声を掛けてくる。
「何でもないよ、少しぼうっとしてた。心配しないで。」
「心配はするし、迷惑も掛けてもらうよ?」
当然のように彼女は言う。
「色素魔導師になっても、夜瀬は危なっかしいんだから。」
「・・・そっか。」
「何が?」
キョトンとした様子の彼女に言う。
「さっき昔の事とか、思い出してさ。」
「白属性を得る前って事?」
「それも。色々。」
「ふふっ、懐かしいね。」
僕たちはまた、僕たちの旅路を懐古していく。
そうして、白明に目を焼かれ、盲目の恋に身を焦がし、白の名を冠した少年は、その少女と添い遂げる決意を新たにする・・・。
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