まずは・・・妄想だ。からの急転
眠っていた。
暖かな春の陽気に照らされ、食後のインスリンもそれを後押しし、僕はとても穏やかに眠っていた。
授業中に。
「おい綾名!聞いているのか?」
「ハッ!」
「この問題の答えが分かるか?」
「はい。If I were a bird, I・・・」
「ふざけるのも良い加減にしろ!今は数学の時間だ!」
どっと笑いが起きる。だが、それも合図したかのように一斉にピタリと止まる。
そして、再び何事も無かったかのように、いっそ機械的に授業は進んでいく。
チャイムで授業は終わる。
「大丈夫?」
隣の席の夢咲が僕の顔を覗き込む。彼女はいわゆる幼馴染と言うやつで、数少ない僕の友人の一人でもある。
「いーや。まずこの学校というシステムそのものに文句があるね。何せ教師っていうのは・・・」
そこで、担任の鳴海に遮られる。
「綾名。数学担当の村山先生が第3指導室で呼んでる。」
「悪いな夢咲。ちょっと行って来る。」
「今日委員会あるんだよ?」
「すぐ戻るから!」
そして、第3指導室。
(なっがい・・・)
この先生は、一度説教が始まるとなかなか止めず、関係ない話まで持ち出してひたすらネチネチ話すのだ。
(あー夢咲と委員会行かなきゃいけないのに。)
だが、こいつを止めることは自分には不可能だ。その上で、この時間を有効活用する為には・・・
(ちょっとなんか考えてるか。)
そして、いつものように僕の妄想が始まった。
家族のこと。少ない友人のこと。小学校で才能が無いと言われ辞めたサッカーのこと。
いつもなら、この辺で周りの誰かが起こしてくれる。だが、今僕の思考に割り込む声は無い。さらにあてどなく思考を巡らせる。
定期的に新しい他人と知り合う時に、いつも上手く話せないこと。論理的思考力という言葉を押し付けられるのが嫌いなこと。
そして、夢咲のこと・・・
不意に、夢咲の顔のシルエットがぼやけた。
(・・・?)
もう一度、思い出そうとする。
だが、僕の意識はそのまま闇へ落ちていった。




