心的強化
言葉を失う少年。
胸を駆け巡るのは、無力感。でも。
(違う。)
少なくとも、これを引きずって生きる事は間違っている。
(なら、どうしたら。)
答えは、未だ見つからない。
幼い綴は、蹲って泣いていた。
それを見た僕は・・・
・・・
僕は、何だ?
分からない。
分から・・・
意識が遠のいていく。
「彼に何をしたの。」
7つもの属性を持ちながら、目の前の怪物に手も足も出なかった憤りが言葉に滲み出ていた。
「心の中を見つめ直してもらってるのさ。具体的に言うと、そいつが表層心理の中で一番恐怖しているものをね。それを克服するまで、そいつはそのまま。」
「・・・アナタを倒せば、その術は解けるの?」
「その通り。だけど、君に出来る?」
キッと悪魔を睨みつけ、彼女は宣言する。
「何としても、アナタを倒す。」
遠のく意識の中で、声が響いた。
(じゃあ名乗りましょうか?僕はあや・・・じゃなくて、スペルです。)
思い出した。いや、忘れていたかったんだ。
僕は、スペルだ。ここでは、少なくとも綾名綴じゃない。
更に薄らぐ意識が静かに、でも確かに切り替わる。
だったら、僕には師匠が教えてくれた事がある。
上手くまとまらない意識の中、それでも気力を振り絞る。
(精神を集めろ。そして、意志を固めろ・・・!)
そして。
「無力な僕は終わりだ。」
『心的強化』
視界が、白く染まっていく。
「はぁ、はぁ。まだ・・・。」
目の前の悪魔はまだ余裕がある。でも、私の精神は尽きかけている。
術の展開速度も、その強度も、段違い。
でも、お弟子君・・・綴さんのために、私は負けられない。
電→『紫電』
静電気の様な音を鳴らす、鮮やかな紫を身に纏う。
「無駄だって言ってんだよなぁ。」
『闇』
黒い球体がいくつも浮かぶ。
黒い球体を睨み、右手を構える。私の最高速、かつて「紫」の色素魔導師に教わった、紫の光を、真っ直ぐに突き出す。
今にも互いの術がぶつかる時、黒い球体が消え、爆発が起きた。
穴の空いた悪魔の身体の残骸に、さらにダメージを与えるべく右手を叩きつける。
煙が晴れた先、2つの影が見えた。
「スペル君!」
彼は、不敵な笑みを浮かべて悠然と立っていた。




