8 堂満土木
堂満土木のカウンターに座っていた男は何も情報は出ないと俺に告げて来た。
「たいした話じゃないんだ、あのカジノを建設したのはおたくらなのかい?」
「ん?そうだが」
「じゃあ地上げと言うか土地を平らにしちまった連中は誰だか知っているかな?」
男は俺をねめつけている。
「建てたのはウチだよ、いい金になった、だが地上げした連中までは知らねぇ、無数にあるからよ、だがここらで一番デカい業者は知っている、待ってな」
男はそう言って奥に引っ込むと他の連中と一緒に棚や何かを探し始めた。
しばらくして男が戻ってきた。
「あったあった、このパンフがそうだよ」
男がカウンターに置いたパンフには「土地建物の御剣」と書かれていた。
「これ、もらっていいかな?」
「おう、かまわねぇぜ、兄ちゃんは肝が据わっているみたいだが、こっから先は気ぃ付けろよ」
「ありがとう、そちらもご安全に」
外に出てパンフレットを眺めていると帰りのタクシーを確保する手段が無いことに気付いた。
(しまったな、スマホを持っていないんだった、どこかで買わなくちゃな)
そう思いながら大通りに出てタクシーが通りかかるのを待ったが、およそ15分くらいでタクシーはつかまった。
行きに乗ってきたタクシーよりは少しマシだ
迷ったが、静岡駅そばの松竹荘を指示した、立ち食いそば屋で教えられた宿だ。
30分ほどで松竹荘に到着して、タクシーを降り、そのまま松竹荘に入った。
外にはセンサーゲートに監視カメラ、シャッターまで備えてある、シャッターはカードが無いと空かない仕組みだ。
カウンターのベルを鳴らすと聞いていた通りの大柄な男が現れた。
「宿泊?」
「そうだよ、駅前のそば屋の親父から聞いてきたんだ」
「はっははは!あそこは行きつけでなぁ、よそ者が来たらウチを紹介してくれてんだ、ウチはセキュリティばっちり、俺は見ての通りの身体自慢ってわけさ」
俺は宿帳に記入して部屋に案内された、部屋は鉄の頑丈なつくりで、見かけに反して指紋認証が採用されていた。
確かにセキュリティレベルが高い。
部屋は四畳ほどで狭いが、一人では十分な大きさだった。
先ほどもらったパンフレットを見ていると、清潔で安全安心と言った雰囲気の内容で、いかにもきちんとした企業のように思えた。
「住所は・・・焼津か、漁港のイメージなんだがな、こんな企業があるとは思えないぞ」