77 神代の法③
「おぉ・・・本当に透明なのだな、自分の手が見えない、だが君は見えるぞ、悟君」
「互いに視認できるように並列化している、教祖は俺の背中を追ってくればいい、「隠匿」は目視出来ないだけではなく一切のセンサー類に引っかからない、堂々と歩いて中に入ればいい」
ルシウスの本社前で俺と教祖は隠匿スキルで身を隠し話しあっていたが、その後ゆっくりと自動ドアを抜け、セキュリティドアを「開錠」スキルで通り、社長室を目指していた。
「38階とは天上人だな」
「身分が高くなると自然、高い所に構えようとするものだよ」
俺と教祖は社長室専用エレベーターに乗って会話をしている。
「しかし聞いてはいたが本当にやすやすと侵入できるのだね」
教祖は腕を組んで天井を見つめている。
「ん?こういう時以外には使わないさ、やろうと思えばどこかの銀行に潜入してスタンダロンのコンピュータからいくらでも金を偽造カードに吸い出すことが出来るけどね」
エレベーターは最上階に到達してそのドアを開けた。
「ふうん・・・長い廊下・・・ガードが二人付いているな」
「暁君、あの二人はどうするね?」
「なに言ってるんだよ、あんたの能力があるだろ、俺たちが客人であるように思わせるんだ、その後隠匿を解除する」
「んっ、そうだったな、では・・・洗脳が完了した」
「よし、隠匿も解除する」
俺たちは廊下を堂々と進み突き当りいるガードに話しかけた。
「通してくれないか?」
「はい、お通りください」
ガードと会話して中に入るとフロアがあり、高価そうな調度品が飾られており、正面にドアがあったので、それを開けて中に入った。
広いフロアの窓を背にしてルシウスの社長、岩崎がパソコンを叩いており、こちらにはまるで気付いていないようだった。
「岩崎さん、遊びに来たよ」
俺がそう話しかけると彼は顔をあげてハッとした表情になった。
「あなた方は誰でしたかな?何か面談予定でもありましたか?」
「ないよ、スキャンダルの件でお邪魔しに来たんだ」
「な、ガードは何をしているんだ!!」
岩崎は端末に手を触れようとした瞬間に身体かたまり動かなくなった、しばらくして顔をあげこう言った。
「教祖様、良くぞお越しくださいました」
「さっすが教祖の洗脳は強力だな」
「ふふっ、暁君の所持している能力に比べたら負けるよ、さて問題はここからだな」
俺たち二人は岩崎の方を見つめて立っていた。




