76 神代の法②
俺は竹本と一緒に「神代の法」の教祖と顔を合わせていた。
「暁君、この方の能力は洗脳と言ったが、教徒を洗脳して教団を拡大しているのではないかね?」
「おっしゃられることは最もで、真実でもあります、しかし私は救われない者や悪党に、正しく生きる道や、前向きな気持ちを寄して自立し、まっとうで、明るい人生を勧めるようにしているのです」
「そう言うことなんだよ竹本さん、それに最近は精神的に自立した者は洗脳を解いて、独り立ちを促しているんだ」
「そう言われてもまだ腑に落ちませんが、ルシウスに対してのわだかまりは同じ気持ちを抱いておられるご様子、そこは信用できると思っています」
「んじゃぁさっそくオペレーションの話しに移ろうか」
「暁君は気が早いねぇ・・・まぁだいたい想像は出来るから良いけどねぇ」
教祖はため息をつきながら笑った。
「まず、俺の持つ透明にする能力で俺と教祖を透明にする、それからルシウス本社に正面から入り込む、どんな鍵も、電子的なものでも開錠できる能力で内部を移動して社長室まで行く、この時に特定人物の居場所を割り出せる能力を利用する」
「はぁ・・・暁君はそんな能力も有していたのか、ルシウスからデータを抜き取ってこられた理由がやっとわかったよ」
「驚きますよねぇ」
教祖が竹本に話しかけている。
「それでそこから私の出番と言うわけだね」
「そう言うこと」
「洗脳して色々と操ると言うことですか?」
竹本が教祖に話しかけている。
「いえいえ、彼の善性を引き出すだけです、そうすれば放っておいても自分からメディアに真実を発信していくでしょう」
「善性?そんなものがあてになるのですか?」
「なります、私の洗脳は、昔は違いましたが今や本人の善性を引き出すために利用しています、それで悪人が何人もまじめに働き、つつましくも明るい人生を歩んでいます」
「教祖は不器用でね、洗脳で荒稼ぎしたり武装集団を形成したりできるのにそれをやらないんだ、能力がもったいないですよねぇ」
「おいおい、それはないだろう暁君、まぁ考えなかったことも無いがこの世界があまりにもひどいありさまだったのでね」
「世の中には、私と思いを同じくする方が確かに存在すると言うことですか・・・」
「そう言うことになるね、俺たち三人がいるってことは他にも少なからずいるっていうことになる、そう言う人間を集めて一歩一歩この世を変えていくことが出来るかもしれない、ていう夢物語だね」
俺がそう言うと全員顔を見合わせた。




