70 抵抗③
竹本と会い、彼らの計画を手伝うことに決めた俺は、その間にこまごました仕事をこなして、三日目の夜にスマホに連絡があった。
「本日20:30にマッピングされた建物に来て欲しい」
「先方から連絡があった、仕事に出てくるよ」
「暗い中気を付けてね、て、暁には何も心配いらないか」
みまがテレビを観ながら言った。
俺はSUVに乗って目的地に向かった、30分ほど経過すると目的地そばまで来たので、目立たない場所にSUVを駐車して、歩いて建物に向かうと、隅の方に2名の男性がいるのが目に入った。
「ああ、暁君、こんばんは」
「竹本さんこんばんは」
「紹介するよ、コイツは成瀬、ITやら何やらコンピューター関係は一通りできるんだ、エニグマを組んだのもコイツだよ」
「どうも、よろしく」
俺は軽い挨拶をすると成瀬はニカッとした笑顔で話しかけて来た。
「暁君はすごいんだってね、ルシウスに潜入してデータを取ってきた、尋常じゃないよ」
「いえ、仕事ですから」
「ふむ、さっそくビルに入ろう」
そう言うと竹本は空きっぱなしのビルのドアから中に入った。
オフィスは荒れていたが、棚や机はそのままで、強盗に入られたような見た目であった。
「LANは大体ここら辺かな・・・あった」
成瀬はネット配線を探し当てて、起動したてのノートPCにケーブルを接続した。
「うん、ネット回線は生きているね」
「そうでなくては始まらない」
2人の会話を聞きながら俺はそれとなく周囲を警戒していた。
「なぁ、成瀬さん、どう見ても廃墟って感じなのにどうしてここの回線は生きているんだ」
「それはね、会社が夜逃げしても、1カ月間の契約分はネット環境が生きているからさ、契約金は先払いで1か月は自動で接続される、通信会社に連絡が無い限りはそのままってわけさ」
「なるほど・・・成瀬さんは本当にいろいろ詳しいんだな、ところでネットにルシウスを暴露した情報をばら撒くって話だけど、SNSでもなんでも多少なり情報登録が必要だろう?」
「成瀬が作ったソフトは無理やりデータを書き込んで、必要な情報をアップロードできる物なんだよ、数個のソフトがSNSなり何なりにアップロードされると増殖を開始して動画なら動画、ニュース形式ならそれらしい記事をネットにばら撒くんだ」
「すごいな、そう言う仕事をしている人なのかい?」
「いや、昔の話しさ、今は農家だよ、よし、これで良いだろう、竹本さん引き上げよう」
全員で建物の外に出ると、軽い挨拶をしてその場で別れた。




