69 抵抗②
デスクトップパソコンが置かれた部屋には、すでに暗号を解かれたリストがディスプレイに表示されていた。
竹本はそのリストを細かく調べ出したので、俺は邪魔しないように部屋の傍らにあぐらを組んで座った。
「この子だ・・・この子もそうだ、まだ10歳にもならんと言うのに・・・」
「村にいた女性の名前がリストにあったのか?」
「ああ、10代にもならない児童が売春をさせられておる」
「リストで確認して、取り戻しに殴り込みでもかけるのかい?」
「いや・・・この情報を動画や記事としてネット上にばらまく」
「スキャンダルを起こしてルシウスにダメージを与えようってことか、しかしここから発信するといくら偽装してもIPがいずれ割り出されるぞ」
「町の廃墟群にはまだネット環境が生きている建物がある、そこからばら撒くつもりだ」
(シンプルなプランだ、シンプルなほど計画は成功しやすい、しかしどうなんだ?本当にこんな町内会のお知らせみたいなやり方でうまくいくのだろうか)
「よし、村にはこの手のことに明るい者がおるから、2-3日で準備ができる、そこから廃墟群に行ってデータを一斉にアップロードする、その時には万が一トラブルがあるかもしれない、アンタはそう言うことに慣れているんだろう?」
「ああ、それが仕事だからな」
「当日、ワシらの護衛をしてくれんか?」
「・・・かまわない、ただしもらうもんはもらうぞ」
「頼んだよ」
その後竹本と連絡先を交換し、家を出てSUVに乗り込んでコテージまで戻って来た。
「おかえり、どうだった?」
みまが話しかけてくる。
そこで俺は村であった一部始終を話して伝えた。
「うーん・・・不安だけど他にやりようもない気がするね」
みははそう言って茶を口に運んだ。
「そうなんだ、この手の場合マスコミやゴシップ紙に情報を流すんだが、これは危険すぎて取り合ってくれないだろう、だったらほとんどの人間がネット漬けになっている状況を利用して、ネットにばら撒いた方が良いのかもしれない」
「妙なことになってきたね」
「あのおっさん達は覚悟を持ってやっているんだろうけれど、こっちは他人だからな、騒動に巻き込まれたらいい迷惑でもあるな」
「でも、協力するつもりなんでしょう」
「ああ、見てしまったことには一応最後まで見届けるよ」
「暁ならそう言うと思ってた」
みまは明るい顔をして背伸びをした。




