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65 データ⑤

「先方から中身を見るなとは言われていない、それと中々に難しい仕事だったからその見返りに中身を見ても良いと思っている」


俺がそう言うとみまが続いた。

「私はもう大抵のことでは驚かないよ」


「わかった、そこらにある椅子を使ってそのディスプレイの前に座って待っていて」

彼女はそう言うと店の戸締りをして「閉店」のかんばんをぶら下げてカーテンを全て閉めた。


(そんなにも物騒なデータなのか・・・?)

少し緊張していると、キャットがやってきてディスプレイ前に座った。


彼女がカチカチとデータを開くと、平凡なリストが表示された。

「あなた達はこれをどう見るかな?」


(名前と数字に何かの符号・・・ドラッグ売買の顧客リストかなにかなのか?だとしたら大したものでは・・・)

俺が画面を見ているとみまが叫んだ。


「あっ!女性の名前ばかりだ!」

「本当だ・・・売春のデータか」


「その横の数字を見てみろ」

キャットがディスプレイを指さしたので読み上げてみる。

「10、12、14、11・・・」


「その数字はな・・・年齢だ!!」

キャットは絞り出すような声をあげた。


「児童・・・売春・・・」

「ひどい・・・」


俺たちが顔をしかめるとキャットがマウスを動かして言った。

「暁君、君はここまで来たからにはこれも見てもらう義務がある」


彼女がある項目をクリックすると、いくつかの画像が表示された。

キャットがそれを拡大すると10歳以下かその前後の児童が裸体でポーズを取っている物だった。


俺は思わず目を背けた。


「これはいわば商品リストだ、商品リストがあると言うことは顧客のリストもあると言うことだ」

キャットは別のウインドウを表示させて拡大させた。


「この名前を見て、どこかで見覚えが無い?」

彼女が話かけて来たので考えているとみまが声をあげた。


「あ!この名前いつも通る道に立てかけてある看板だ!なんとか党の人!」

「そう、地方議員ではあるけど政治家がゴロゴロ名を連ねている、これがそのまま議員名簿になるんじゃないかと思えるほどね」


「ルシウスはそう言うこともやっている企業だってわけだ・・・精々ドラッグや武器売買程度のことかと思っていたが、吐き気がするな」

俺は頭をたれて言葉を発した。


「ああ、胸糞が悪いね、問題はこのデータをあなた達に抜かせてきた顧客が、どう扱うかってところだね」

キャットは目を細めている。


「佐々木は仕事が右から左に流れれば他は気にしないからどうもならないだろうね」

みまは肩を内側に入れて前にもたれた。


「ふぅ・・・俺はこの案件に関わってしまった、そうなった以上依頼主に接触しないと話が収まらないな」

俺が顔をあげてそう言うとキャットは口角をあげた。

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