63 データ③
(どうする・・・どうやって場を収める、スキルを増やすか・・・いやまてよ)
俺は部屋の隅から立ち上がり、端末の前で何やらつぶやいている社員の間から手を伸ばし、ノートパソコンに触れてスキルを使った。
(再生)
再生スキルを使うと警告画面が収まり、サイレンも止み、何事もなかったように静まり返った。
「待機状態に戻ったぞ、どうなったんだ」
「とりあえず端末から調べてみよう・・・ここからアクセスしたような形跡がない、外部からの侵入も見られないぞ、どういうことだ?」
「分からんが何かのエラーじゃないのか、お前はデスクでエラーの原因を調べてくれ俺は外部からのアクセスが本当になかったのか調べてみる」
「分かった」
詰め掛けて来た社員たちはデスクに戻って行った。
「ふぅ・・・危なかった、だがパスが使えないとなるとどうする、会社に鍵を忘れたような状態だぞ」
しばらく考えてはたと気が付いた。
「鍵!開錠スキルだ」
俺はノートパソコンに開錠スキルを使用すると、パスを突破して通常画面が開かれていた。
(しかしこの渡されたハードディスクをつなぐと、モロにアクセスがバレるんじゃないかな・・・ん?、そうだハードディスクに隠匿をかけてアクセスしてみよう、バレたら仕事を放棄して逃げるしかない)
ハードディスクに「隠匿」を使い、ケーブルをつないでみたが、アクセスがバレた様子はなかった。
しばらくするとハードディスク側のソフトが起動してデータチェックのようなものを走らせだす。
10数分経過すると今度はダウンロード作業に入って行った。
これもまた時間がかかり20分ほどして「100%」の表示が出たので、ケーブルを外してサーバールームを出た。
話している社員によると、原因がわからないのでこまごまと要素を潰していくしかないとのことだった。
(残業お疲れさん、俺は早退させてもらうよ)
ルシウスの社屋を出ると腹が減っているのが分かったので、そこらにある合成牛丼の店に入り食事をし、その後列車に揺られ、焼津に帰ってきた。
「たーだいまー」
コテージのドアを叩くと中からみまが出て来た。
「おつかれさまー、どうだった?」
「バッチリさ!・・・と言いたいところだけれどセキリュティに引っかかって大変だったよ、佐々木の渡してきてパスが通らなくてね、警報が出た、よく考えればそうだ、セキュリティの堅い所が何カ月も同じパスを使いまわすはずがない」
「まぁでも成功したんだからいいじゃん」
「そうだな」
俺はそう答えて室内にはいった。




