62 データ②
熱海伊豆とその周辺の観光から戻った俺は、翌日すぐにルシウスのサーバールームに侵入することにした。
ルシウスには列車で行き、駅から10分ほどの商業区画に向かった。
物陰で「隠匿」を使い、透明になり、ルシウスの正面入り口は「開錠」で開けて入り、視界に映る矢印をたよりにサーバールームまではエレベーターで向かった。
地下2階、サーバールームはそこにあった。
通路の入り口には守衛が二人腰かけており、何やらゲートのようなものが設えてある。
丁度社員らしき男性が守衛に社員証をスキャンされ、ゲートをくぐって奥の扉に入って行った。
(あのゲートはなんだ?空港の金属探知スキャンのような物か?データを抜くような機器を持ち込めないようになっていると言うことなのか・・・?生体感知もするのだろうか、その場合は隠匿スキルが有効になるのか、いやそれよりもハードディスクが確実に引っかかる)
しばらく考えたのちに堂々と正面からゲートをくぐることにした、ゲートは一切反応しなかった。
(隠匿、の意味は広いからこういう探知機にもカウンターできると言うことか、本当に使えるスキルだ)
奥にある扉を開錠してそっと開くオフィスに侵入した。
中は良くあるオフィスフロアのようになっていて、10数人がパソコンを前にして何やら作業をしている。
(ここは管理フロアのような区画かサーバールームは奥にあるようだな)
視界に表示される矢印はサーバールームの場所を示している。
その扉を開錠で開け中に入る。
室内は少し寒いほどで、入ってすぐの所にデスクがありノートパソコンが設えてあった。
(この端末からデータを抜くってことか・・・)
モニターは待機状態でパスワードの入力画面を示している。
佐々木からもらったパスを入力する。
「パスワードが違います、もう一度入力してください」
(打ち間違えたか)
もう一度ゆっくり入力してみる。
2回目も同じようにはじかれてしまう。
(このパスワード合っているんだろうな)
3回目を入力すると、室内にヴィーと言う音のサイレンが響き渡った。
「くそっ!パスがまちがってるじゃないか」
取りあえず俺は隅に移動してサーバールームの窓からオフィスフロアの様子を見ている。
フロアの人間は大慌てでパソコンを叩いたりどこかに電話していたりしている。
そのうち数人がサーバールームに駆け込んできて、ノートパソコンの画面が警告状態になっているのに気が付いた。
「外部ハックじゃぁ無いのか?」
「ここの端末から侵入しようとした?考えられん、人為的なセキリュティーもあるし、スタッフは情報保護を徹底している!!」
「正確には、はずだ、となるがな」
数人が顔を見合わせている、疑心暗鬼になっているようだ。
(まずいな・・・ちょっと大ごとになりそうだぞ)
俺はしゃがみ込んで社員たちの騒ぎを見つめていた。




