55 教祖の能力④
ヤクザは今までと少し心変わりをしだしたので、所属する組織を崩壊させることになった。
「で、でもよ、そんなの準備とか頭数とかいるだろう?いつやるんだ?」
「今夜やる」
俺がそう答えるとヤクザたちはあっけにとられた顔をして、教祖は少しほほ笑んだ。
ヤクザたちは帰ってゆき信徒たちも三々五々帰宅していった。
「今夜とは早いね」
「アイツらは今の状況で前向きになっている、そんなのは3-4日過ぎれば薄れてまた逆戻りだ、ヤサに返しちゃいけない、だから帰らずに雀荘で夜中まで麻雀でも打っていろと伝えたんだ」
「私も同感だ、人間の前向きな気持ちは何かし続けたり気持ちを保ち続けないとすぐに薄れる、早い方がいい」
夜の21時ごろ俺は「三松興行」の前に立っていた。
「確かに探索の矢印はこの中に続いているな、頭がいるなら都合がいい」
俺はそう言いながらドアをノックした。
「誰だお前」
凄みの効いた声に返事を返す。
「神代の法から来た者です・・・ここへ行けと指示されました」
俺は教団関係者を装い、おどおどとした態度で答える。
「ウチのもんはどうしたんだ」
「我が教祖を見張るとか言って教団にいます」
しばらく沈黙があった後、いくつかの鍵が外される音が聞こえた。
「入れ、付いてこい」
「は、はい」
男はくるりと背を向けたので、俺はポケットの中のグロックを抜き出してそいつの足と肩を撃った。
叫び声が響く中で歩いて行くと、他の組員が何人か出て来たので、全員手脚を撃ちぬき、隣の部屋からも出てくる男たちを迎え撃つためにマガジン交換をした。
その後また数人に9㎜弾を叩き込み、二階に上がると同じことをして周った。
フロアは血で汚れうめき声がそこら中から聞こえてくる。
奥の部屋に到着すると、ここに組織の頭が詰めていると、網膜に表示があった。
ドアを蹴り破り、すぐさま前転して部屋の隅に転がり込むと、拳銃を持った男たちにグロックの弾を撃ち込んでいき、しゃがんでマガジン交換をする。
立ち上がると、デスクに座った男に近づき言った。
「三松だな、神代の法の関係者だ教団に余計な手出しをするな、ここにいる全員を死なない程度に叩きのめした、あとはあんただけ」
「なっ、何が望みだ!!殺すのか!?」
「いや、この組織を解体してどこか遠くの土地でくらせ」
「そ、そんないきなり」
銃声が響き三松の肩に9㎜弾が食い込んだ。
「死ぬか、解体するか?どちらがいい?」
「わかった!解体する!」
「けがの治療もあるだろうから3日だ、3日待ってやる、今度は頭数を揃えてくる、お前たちがこの町に潜伏していてもすぐわかる、どこか遠くでまっとうに暮らせ」
俺がそう言うと三松は小刻みにうなづいた。




