54 教祖の能力③
ホールに銃声が響き渡り辺りは静まり返った。
ヤクザの右耳から血が滴り、彼は耳に手をやり、血にぬれた手のひらを見てへなへなと座り込んだ。
「俺は射撃がうまいんだ、アンタを殺すようなヘマをしない、だけども世の中には平気で頭の横に銃弾を撃ち込んでくる人間がいることを忘れるなよ」
俺はポケットに拳銃をしまい、ヤクザの前に座り込んだ。
「そっちの三人もここ来て座れ」
他の者は固まったまま動けないでいる。
「こっち来いよ、撃ちゃしねぇよ」
おずおずと近づいてきてそれぞれに座り込んだヤクザたちを見て、俺は声をあげた。
「教祖ーーーーー!!」
「うんうん、わかったよ、少し乱暴だがまぁいいだろう」
教祖は壇上から降りて俺たちのいる床に同じように座った。
「君、どこの中学だね?」
教祖は一番前のヤクザに声をかける。
「へ?中学?焼津18中だよ、卒業はしてないが」
「うん、そっちの君は」
教祖は全員の出身校を聞いて周ったが、全員が中退しており、その後はバイトやカツアゲをしていたが、飯を食わせてもらえて危ない仕事をこなせばいい金をやる、と言った誘いでヤクザになったものばかりだった。
「なんだ、全員ほとんど同じじゃないか」
「こ、ここらの人間はだいたいそうだろう?親なんか帰っちゃこねぇしたまに帰るとぶん殴られる」
後ろのヤクザたちも何度も頷いていた。
「その頃は思っていなかったかな?こんな生活抜け出して、絶対こんな親にはならないと、まともな職につこうと」
「思ったさ、でもそうはならなかったんだよ、いつだよ、いつからこういう道に進んでいたんだよ・・・」
耳を撃たれたヤクザは血にぬれた額に手をあてて頭を垂らしている。
「そこまで戻ればよい、今からでも出来る」
教祖は重い声で言った。
「無理だよ、幹部の連中が許してくれねぇ」
「幹部がいなくなればいい、もう二度とヤクザなんて家業をやるべきじゃぁ無いと思わせればいい、俺はそう言うことを商売にしていてね、ボッコボコに解体してやるよ」
「まぁ、彼はそう言う家業の人間なんだ、さっき撃たれてわかったろう?」
教祖がそう話すとヤクザは全員うなづいた。
「なぁ、あんた、俺たちは本当にあの頃みたいな気持ちで生活できるのか?」
「それはこっちの役割」
俺は教祖の方を親指で示した。




