50 宗教④
21時、俺は暗がりが降り立つ時間、神代の法が見える位置に「隠密」「探索」のスキルを使い建物を見上げていた。
「探索」は教祖が確かにこの建物にいることを示しており、これから先は「隠密」と「開錠」を使い内部へ侵入するだけだ。
下見で見つけておいた建物の横手にある非常口から中に入る。
廊下には灯りがともされているが、室内から洩れる光は無いので、どこかオカルトめいた空気が支配していた。
「探索」を使い、三階の一番奥の部屋まで進んだ、視界に移る矢印はその部屋をさしており、確かにそこに教祖がいることを示していた。
ドアを開けて中に入ると教祖はデスクで紅茶を飲んで菓子をつまんでいる最中だった。
「ドアが開いているが、建付けでも悪いのか?」
教祖がそう言って立ち上がった時に、俺は隠密のスキルを解いて姿を現した。
「な、何だお前は、急に!・・・そうか能力者だな」
とはっきりと頭の中で聞こえた。
(声が聞こえる!?キャットの奴仕事をミスったのか)
そう思いノイズキャンセリングヘッドホンを触るとまた声が聞こえて来た。
「君は気付いているだろうが私の能力は洗脳だ、だがそれは声に乗せた能力ではなく脳に直接流し込むものなのだよ、そのヘッドホンは意味が無いよ、さあ私にひれ伏して君も教徒になりなさい」
その響きは脳にズシリとのしかかり思わず膝をついてしまった、再生スキルが追い付かないレベルの圧がかかっている。
俺はソフトシェルのポケットからタトゥーペンを取りだし、洗脳に必死に抗いながら手のひらに文字を綴っていった。
「ふむ、痛みで私の洗脳に抗おうと言うのかな、多少の効果はあるかもしれんがじきに屈服する」
文字を手のひらに書き終わった後、俺はあまりの圧に推されて床に伏してしまった。
「洗脳完了かな、立ち上がりたまえ」
俺はよろよろと立ち上がり、ヘッドホンを外して首にかけて言った。
「残念だが教祖様、洗脳は効いていないよ」
そう言って手のひらを教祖に見せた。
「洗脳解除」
そう書かれたのを見て教祖は怪訝な顔をした。
「俺の能力は隠密じゃない、このタトゥーペンで身体に文字を彫り込むと、文字に応じたスキルが使えるのが能力さ」
俺はソフトシェルとインナーを脱ぎ捨てて、上半身を教祖に見せた。
「な、なんだその文字は・・・その文字に類する能力が使える?不死!?反則じゃぁ無いか!!」
「俺もそう思っている、反則だな、さて教祖様、尋問の時間といこうじゃないか」




