49 宗教③
宗教団体「神代の法」の教祖が洗脳に類するスキルを使用していると俺は結論付けていた。
みまは相変わらず雑誌をめくっていたが、それを止めて紙面をのぞき込んでいた。
「なんだみま、教祖に関する良いネタが載っていたのか?」
「・・・ノイズキャンセリングヘッドホン」
「え?ノイズキャ・・・ああ!!」
ノイズキャンセリンヘッドホンを付ければ教祖の声もかき消されるのかもしれないと言うわけだ。
「うん、ちょっと知っている店があるから一緒にそこへ行ってノイズキャンセリングヘッドホンがあるか見てこようよ」
「そこらで売っているモノでは駄目なのか?」
「うん、何て言うのかな、ガラクタをハイエンドなアイテムに変えることが出来るお店なの」
みまがそう言うので、俺たちは町工場が集中するエリアに出向いて行った。
「ここ、ここ、キャット・スミス」
「キャット・・・」
「店主のお姉さんが木宿って名字であだ名がキャットなの、それでスミスは鍛冶屋とか職人って意味。
みまは引き戸を開けて中に入って行った。
「キャットさーん、みまが来たよーーー!!」
「おっ、みまちゃんか、久しぶりだね、今日はどんながらくたを直して売り払うつもりなんだい?ん、?そっちの人は?」
「相棒の暁」
「さとるです、はじめまして」
俺は軽く頭をさげて店主を見ると20代そこらの女性で、作業着を着て髪の毛を後ろで束ねていた、服装はともかく一般的に美人とされる雰囲気だ。
「ふむ、ノイズキャンセリングヘッドホンの精度を上げて欲しいってな、ちょうどガラクタが2-3あるし制度も上げることを可能だよ、となると周囲の雑多な音をまるっと消したいのか、特定の音を消すとまぁ大まかに2パターンあるけど」
「後者の特定の音、もっと言うと声を聞こえないようにしたい」
「うん、じゃあ音源はあるかい?」
俺はスマホを取りだして、録音していた教祖の声を再生した、録音をした音源だと洗脳の効果が見られないのは確認済みだ。
「ふーん・・・演説みたいだね、とりあえずPCにつないで音声関係のソフトにかけてみるよ」
キャットはPCに俺のスマホを接続して何やら複数のソフトを手元を見ずに操作していた。
「うん、相性のいいソフトが見つかったけど、色々作業が必要になるから明日の同じ時間ぐらいに来てくれるかい?」
「わかったよ、しかし見た所ソフトもハードも扱えるみたいだね、すごいな」
「ふふふ、ハードは親父、ソフトは兄貴に教わったんだよ、2人とも馬鹿みたいにのめり込んでた、だけど死んじゃってね」
「そうか・・・この世界はどこまでも・・・」
俺はそうつぶやくと、キャットは僅かに悲しみの表情を見せた。




