47 宗教①
「・・・ここの建物で間違いないな」
「なんだか宮殿みたいな建物だね」
俺とみまはの今回の仕事は、家族が宗教団体にハマり込み、それを脱却させに向かった者数名も宗教団体に取り込まれ、そのひとたちを取り返すと言う、依頼を受けていた。
「宗教団体なんてのはだいたい神殿宮殿じみた建物だよ、威厳が必要だからな」
「この建物がたくさんの人を虜にする宗教団体で、これからそこに入るのは緊張するね」
宗教団体「神代の法」短期間で大勢の信者を集める新進気鋭の団体である。
様々な興信所や何でも屋が調査に入ったものの、逆に取り込まれると言う状況が発生し、ついには荒事専門の新興産業にまでお鉢が回ってきたと言うわけだ。
時間になったので、神殿のような建物に、俺とみまは入ってきた。
中はかなりざわついており、スーツ姿の教団関係者と思われる者たちがすました顔で周囲を取り巻いている。
最初に出て来たのは教団の幹部で、自分がいかに不幸であったか、それがどうなって救われたのか、教祖の恩寵が無ければ死を選んでいたであろうことを朗々と語った。
(ふん、自分の不幸話から始まりいかにして教祖に救われたのか、それを幹部が語る、典型的な手口だな)
その内に荘厳な音楽が鳴り響き、教祖が現れた、名を「菅藤紘一、法の名はリムレス」だと語り、いかにこの世界は地獄であり、救いの手が必要であるかと、これまたありていな話をし出した。
(世界が地獄なのは同感だが、同意は出来ないね)
俺はそんなことを考えていると額の辺りがピリピリと細かくはじけるような感覚をおぼえた。
(なんだ・・・体調でも悪い?人だらけだから酸欠か・・・いや・・・!!)
俺は立ち上がるとみまの肩を引っ張り上げて席を立った。
「どうしたの、まだお話しの最中だよ」
「良いからここを出るぞ」
俺は気分が悪くなり、外へ通じる扉に向かった。
「どうしましたか?」
教団関係者に問われた
「持病が出て気分が悪くなってしまいまして・・・申し訳ないですが帰らせていただきます」
「おお、それはお気の毒です、体調が良い時にまたいらしてください」
ドアをくぐり建物から出て、少し離れた汚らしい公園のベンチに座り込んだ。
「どうしたの暁、変だよ?持病なんて聞いたこともないし、それよりお話しを聞きに行かなくちゃ」
「フッハァ、アレはヤバイ、俺の能力と同じようなモンを使ってやがる、例えるならば洗脳のスキルだ、俺の再生スキルが洗脳に抗っていたから能力下に置かれずにすんだ、みま、お前も洗脳されかけているぞ」
「暁、何言ってるの教祖様はそんなんじゃないと思う」
「それだ、その言葉はもう洗脳されかけた人間の台詞だ」
「再生!」
俺はみまの額に手を当てて再生のスキルを使用した。




