39 カルテルをつぶせ①
「お前ら危険だが実入りの良い仕事を受ける気はあるか?」
新興産業の佐々木はクリップ止めされた紙をヒラヒラとさせて言った。
「どんな仕事なんだ?」
「警察からまわってきた極秘の仕事でな、麻薬カルテルの頭を殺害して組織を壊滅させて欲しいそうだ」
「警察は賄賂をもらっていてそう言う部分に関与しないんじゃなかったのか?」
「そう言う状況に甘んじていられない賢くない連中もいるってことだ、だが人員が足りないと言うことでウチにお鉢が回ってきたのさ」
「佐々木はそれを警察に知らせた方が実入りが良いんじゃないの?」
みまが当然ともいえることを言う。
「・・・ウチのおきてはヤクをやらないことだ、妹がヤク漬けにされて死んだ、それでヤクをのさばらせるような仕事をするほど人間は終わってねぇよ」
俺は自分も妹が殺されているため、佐々木の立場が良くわかる気がした、同時にこの悪党にも矜持のようなものがあることを意外に思った。
佐々木が紙束を渡してきたのでそれに目を通す。
「・・・判明しているのはカルテルの末端の顔写真で、潜伏場所もなかば公然の建物じゃないか、これでカルテルを潰せってのか?」
「末端から手繰って頭を潰すまでがこの仕事だ」
「長い仕事になるね」
みまはパイプ椅子を軋ませながら身体を前にだしてストレッチするような動作をした。
「仕事は受ける、これには警官が二名サポートに入るとあるがどんな具合の奴なんだ」
「わからんが警官と言うだけで、荒事には慣れていないだろう、オマケと思っとけ」
「フゥー・・・楽しい仕事だな」
新興産業を後にして、その足で浦安雑貨店に向かい、店のオヤジに導かれて地下に入った。
「何でも面倒な仕事だってな、どこかの組織を襲撃するとか」
「ああ、俺たち以外に二人いる、こっちの方は腕前は分からない」
「いわゆる突入作戦になるって佐々木は言っていたね」
みまがカウンターにもたれて置かれている銃器を眺めている。
「相手の武装と練度は、数はどうなんだ?」
「何もわからない」
浦安雑貨店のおっちゃんはため息をついて頭をポンポンと叩いた。
「うーん、突入もあれば相手がプレキャリをつけている場合もあるのか、5.56㎜スカーにドットサイト、本当は7.62㎜でアーマーを割るのが良いんだがみまちゃんが扱うには手に余るだろう」
「こっちもプレキャリってのをつけたほうが良いのか?」
俺はおっちゃんに問いかけた。
「当然だ、相手の武装が何か知らんが5.56㎜なら防ぐ、あと小型のバックパックにサブでMP5Kを入れとけ、9㎜だから拳銃弾と互換性がある」
浦安雑貨店のおっちゃんは俺にはいまいちわからない単語を並べたててきて、事態がそれなりに緊張したものだと感じていた。




