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38 善悪の彼岸

俺たちは狙撃の仕事を終えてコテージに戻ってきていた。

狙撃銃と弾丸は防水袋におさめてコテージそばの地面に埋めた、万が一ガサ入れがあった時に室内に置いておくと見つかってしまうためだ。


室内に戻り、リビングのテレビを点けて眺めていると、ほとんどの局が狙撃事件の現場を生放送していた。

テープやプレートがおかれ、警察官が多数現場に詰めていた。


レポーターは何時ごろにどの方向から狙撃されたのかは判明しているが、それ以外は警察の新しい発表を待つにとどまると言うようなことを繰り返していた。


「斉藤久雄氏は多くの企業を運営しており、孤児やホームレスの救済に力を入れて、全国に何カ所も施設を設けている多くの注目を集める人物でありました」


レポーターは標的の男をそう紹介した。


「・・・俺たちは善人を殺してしまったと言うことか・・・?」

俺がそうつぶやくとみまが返事を返してきた。


「違うよ、コイツは善人じゃない、孤児やホームレスの救済施設は臓器売買の農場なんだよ、ある程度生活の面倒を見て、里親が見つかったとか就職先があったとか、そんなようなことで処理して買い手に流すの」


「・・・みまは知っていたのか?」

「うん」

「どうして教えてくれなかった」

「狙撃に余計な感情が入ると良くないから、掃除するには感情が薄い方がいい」


俺は自分が想像していた以上の悪党が、聖人の顔をしてメディアに出ていることに、この世界の絶望を感じていた。


「今回、暗殺対象になったのはなんでだ?」

「手広くやりすぎたの、中規模のマフィアの仕事があいつに乗っ取られたのよ、当然面白くないから消してしまおうと言う流れだね」


「それはいい、それはとてもいいことだ、悪党の依頼が悪党を消すことなのはとても良い、頭を吹き飛ばしたかいがある」

「・・・暁、あまり考えないことだよ、そうしないと飲まれるよ悪の彼岸に」


「・・・そうかそうだな、みまが見ていてくれなければ淀むところだった、晩飯にしよう!」


俺は椅子から立ち上がってキッチンに向かった。

料理をしていると集中できるので、余計なことを考えなくて済む。


料理をしていると玄関がノックされた。

「はい」

ドアを開けると警官が二人立っていた。


「今日の狙撃事件はご存じですか?」

「はい、いまテレビを観ている所です」

「そうですか、ここは現場から比較的近くですが妙な行動をしている人物は見かけませんでしたか?」

「妙なのはそこら中にいますけど、よそ者みたいなのは見かけませんね」


「・・・そうですか、なにか心当たりがあればここに電話してください」

「わかりました、お疲れ様です」


警官二人はドアを閉めて戻って行った。


「警察が来たよ」

「なになに容疑者扱い?」

「いや、妙な人物を見かけなかったかって」


みまはため息をついて言った。

「通り一遍の捜査だね、やる気ないなぁ」

「そもそも警察もあいつのやっていた人身売買のことは掴んでいたんだろう?」

「ワイロをじゃぶじゃぶもらっているはずだよ、関係性が表に出ると困るから適当な捜査しかしないだろうね」


俺はキッチンに戻り料理を再開した。





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