3 痛覚遮断と再生
タトゥーを入れた時の痛みで汗をぐっしょりかいたので風呂に入ろうとしたが、鏡と電灯の破片が辺り一面に散らばっていたため、風呂に入るのをあきらめて近所にある銭湯に行くことに決めた。
家の風呂からボディーソープとタオルだけを引っ提げて夜の街を歩いく。
以前の銭湯ならタトゥー禁止であったが、これだけ荒廃した世界になると、もうそんなことは関係ないだろうと捨て鉢な気分で銭湯の暖簾をくぐった。
中は黴臭くすえた匂いがして、当然のように入れ墨やタトゥーを貼り付けた男たちが着替えていた、俺がシャツを脱いで裸になると、胸にある「不死」のタトゥーをチラチラ見る連中がいたが、目を合わせないように素早く湯船につかり、ボディーソープで全身をあらって銭湯を出る。
銭湯の前に三人の男が立っていてこちらをニヤニヤ眺めながらのたのたと近づいて来た。
「おめぇ見ない顔だな、ぼくちゃん」
「胸に不死なんて入れて超人気取りか?」
「俺たちが試してやるよ」
奴らはそう言うと俺の腹に拳を叩き込んできたので、膝から崩れると顔面に膝を入れてきた。
歯が折れる感触がする。
その後蹴り倒されて蹴りを散々に叩き込まれた。
「ヘッ!気取ったタトゥーを入れやがって、またここに来たら同じ目に合わせてやるよ」
奴らはそう言ってどこかへ消えて行った。
体中が痛み、歯が折れたことにショックを受ける。
よろよろとアパートへの道どりをたどり部屋に戻った、相変わらず薄暗い陰気な部屋だ。
「そうか・・・忘れていたけれど、不死は不死でも痛覚と身体の損傷はあるんだ」
俺はタトゥーペンを取りだして胸に当てた。
「うっつぅ・・・相変わらず痛いな、だが前よりずっとましだ」
俺は「不死」の横に「痛覚遮断」と書き込んだ、その後すぐに別の文字を胸に彫り込む。
「いたっ、痛覚遮断が聞いていないのか!?いや・・・これはこのペンの痛みは遮断されないと言うことだろう」
俺が次に書いたのは「再生」の文字だった。
すると、さっき殴られた傷が回復していき折れた歯もギリギリと音を立てて再生していった。
「最低限これだけあれば防御は大丈夫だろう・・・書ける場所は限られている慎重に考えて書き込まないといけないな」
取りあえずは数日過ごしてから考えようと押し入れを開けると、ボロボロの布団が転がり出た。
「布団を盗まれていないだけましだな」
そう言って俺は布団を引いてもぐりこみ、そのまますぐに寝入ってしまった。