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27 臓器売買①

「で、お前たちの今回の仕事は債務者を連れてくることだ、いや、俺たちに引き渡すまでが仕事だ」

「行く先は闇金の事務所か?」

「おいおい口が悪いぜ、きちんと許可を取って商売している連中だぞ」


(以前の日本では闇金とされていたものがほとんど合法化されているってことか・・・いったいどれほどの金が動いて被害者がいるんだ)


俺は新興産業を後にしてSUVに乗り込む、住所は分かっているが網膜表示のナビがあった方が便利だ。

表示には約30分の距離で、目的地の風景は郊外の田舎でも都会でもないと言った風景だ。


みまは黙って車窓を眺めているだけだが、いつもとどこか違うような気がする、気になったので声をかけるかどうか迷っていたところで、彼女は口を開いた。


「私の家族も金融屋に半ば騙された形で取り立てをされていたんだ、アイツら平気で家を壊すの、警察なんて機能していないからね、それである日家族が消えて家が乗っ取られた、私は逃げたの」


それだけ言うとみまはまた黙り込んでしまった。


目的地が近付きそれを示す電子音が聞こえる。

自働車のハンドルを回しゴミだらけで廃墟と見まごうばかりのアパートの前庭に乗り付けた。


「部屋は202か・・」

俺たちは踏み抜きそうな階段を登り2階に出た、廊下には雑誌や空き缶などが転がる。


部屋をノックすると、ドタバタと慌てた様子でドアを開けて中年男性が出て来た。

「新興産業からの請負であんた達を連れに来た」


「どうか、それだけは、いつまでかかってもお金は払います!!お願いします!!」

俺はしばらく考えた後でこの男の話を聞くために部屋の中に土足で入った。


6畳一間の中には母親と娘らしき二人が抱き合って肩を震わせてきた。


「なんで借金で首が回らなくなっているのか話してもらおうか」


父親と思われる男は頭をたれてぼそぼそと話をし出した。


投資話を持ち掛けられ、最初は大きく儲かったが徐々に右肩下がりをして最終的に投資先が破綻して借金が出来た。

そこに補填として金を貸すと提案してきたので、サインをしてなんとか生活が安定してきたと思っていたところに、とんでもない利子をつけられて、数字も改ざんされた電子書類が提示された。


家族はその時初めて騙されたと気付いたそうだ。


「どうか、娘と家内だけでも・・・私の身体だけでご勘弁を願えませんか!!」


「身体・・・?」

俺が妙な反応をしたのを見てみまはぽつりと答えた。


「臓器売買、3人とも業者に売られて内臓でも何でも取れるところ全部取られてあとは豚の餌になるの」

「臓器売買・・・この人たちは死ぬってことか?」

「そうだよ」


みまは遠くを見るような目つきで答えた。

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