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25 つつましく暮らせば

自働車は軽いエンジン音とすべらかな挙動で走り出した。

車内では皆無言であった。

屋敷に着くとまず壮年の男が自働車から降りて、続いてみまと暁の順に降車した。


屋敷に入ると先ほどと同じ部屋に通された。

ソファーに座るとすぐに紅茶が出される。


壮年の男は静かにしゃべりだした。

「私共の味方をしていただきありがとうございます、ですがまだ心配事が残りますが」


「大丈夫だよ、あそこのおじさんたちはそこのところ心得ているから2度と元旦那が手を出して来ることは無いよ」

みまはすこしだけ明るい声でそう言った。


「ありがとうございます」女性も深々と頭をさげる。


「仕事ですから、今はまだ下請け仕事ですが、その内正しいことのために活動するつもりです」

みまも2回うなづいた。


「正しいことですか・・・この世の中に正しいことがどれほどあるのでしょうか、正しいとはどう判断するのでしょうか」

壮年の男は疲れたような目つきで話した。


「・・・それがわからないから下請け仕事をしている、汚れ仕事が多いほど正しくなれる気がする」


「汚れ仕事が多いほど?普通は逆の思考をするのでは?」

「俺たちが今後相手にしなければならないのは薄汚れた奴らだ、白くては出来ない、白い奴らを汚さないためには俺たちが汚れるしかない」


男は懐に手を入れて金属でできた板を出した。

「これは私の名刺です、プラチナで出来ています、私の顔が利く方々はこれを見せれば協力してくれるでしょう、それと電話番号の交換を」


「俺はスマホを取りだして電話番号の交換をした」


駐車スペースに置いてあったSUVの乗り込みエンジンをかける、ハンドルを切ると屋敷の主人と女性が頭をさげていた。


そのまま車線を走り、海岸線に向かった。


「なにか良いことをした気分だね」

みまがぽつりとこぼす。


「あの人は正しいことは何か、と言っていたが確実にあるのがわかったな、小さなことでも良いんだ、それは俺たちを救い、よどんだ連中も救う、そんな気がする。


そのまま海岸線を走りコテージにたどり着くと室内に入り、みまがテレビをつける。

テレビからは歌が流れている。


「つつましく暮らせばハッピーみんなで平等につつましく、皆で社会を支えましょう」


そんな歌だった。


「この歌はね、社会適合長屋のCMなの、同じ形で同じ間取り、ずらっと並んでいて、そこに住むと身分が保証されるの、だけどね刑務所と一緒かもっとひどい、住人が互いに監視し合って政府に密告する」


「クソみたいな曲だな」


俺はそうつぶやいた。

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