22 偽造カード
みまはさっさと車の助手席に座り込んでいたので、俺も運転席についてみまに声をかけた。
「みまは運転できるのかい?」
「免許を持っていない、と言うよりもカードが無いの」
「カードが無いってなると身分不詳になるんじゃないのか」
「そう、前に務めていたレストランの店長がね、給料振り込みの隙にスキミングをして、私の口座からヤクを買い付けていたの、頭が良いのはカードで依頼を出して、実際は会う時に売人と示し合わせて跡が残らないようにやり取りをしていたの」
俺が黙って聞いているとみまは先をつづけた。
「それである日店にマトリが来て私を連れて行こうとしたけど、うまいこと逃げ出せたの、運が良かった、そこからはお金が使えないのと、マトリがまだうろついているのを警戒して3日かけてこの町に着いた」
「それで、なんで殺し屋に?」
「私を拾った佐々木が面倒見てやるから売りか殺し屋になるか選ばせたの、結果は今の通り、何か月かあそこの連中相手に訓練を受けた、食事は与えられたけど家は与えら無くてね毎日転々とすみかを変えた、そこに暁が来たってわけ」
「・・・偽造カードみたいなものは作れなかったの?」
「偽造カードを作るには、まずお金が入ったカードが必要なの、パラドクスね」
「佐々木のヤツみまを飼い殺しみたいにしてやがったのか・・・ひでぇな」
「マシな方よ、佐々木が囲ってくれなかったら野垂れ死にか、クスリ打たれて売りに出されて頭がおかしくなって死ぬの」
「よし、じゃあすぐなんでもやに行って偽造カードを作ろう」
「・・・ありがとう」
なんでもやに到着して店内に入ると店員が声をかけてきた。
「おっ?君たち昨日の今日でどうしたんだい」
「この子に偽造カードが必要でね」
「持ってなかったのか、それはいけない、実は偽造カードづくりが一番得意でね、すぐすむよ、顔写真とるからこっち来て」
みまは顔写真を撮影され、店員はノートパソコンを素早く操作し始めた。
「おっ、良いのがあるぞ、行方不明の21歳の女で前科も借金も無いし貯金もそれなりにある、行方不明を消して、とよし!」
店員はそう言うと店の奥にある機械を操作し始めた。
動作音がしばらく続いた後で彼はカードを取りだして眺め、スキャンにかけた。
「問題なく動作するよ、中の金から作業代を引いておいたけど、昨日と合わせて稼がせてもらったから割り引いておいたよ。
「ここの相場なんて知らないし、安くしておいたなんて言われてもこっちはわかんないぞ」
「ははは、こりゃ手厳しい」
店員の笑いを背後に俺たちは車に乗り駅前を後にした。
お読みいただきありがとうございます。
よろしければブックマークと評価をお願いします。




