21 責任と運命
キッチンから小気味良い音が聞こえてくる、みまが料理をする音だ。
その音からでも料理に手慣れていることがうかがえる。
しばらくしてテーブルに食品が並ぶ。
「ホイコーローと卵スープだよ、いただきます」
みまに合わせて俺も手を合わせる。
「うまいね」
「でしょう」
手短な会話で食を進めていく。
食事が終わり俺が食器の片付けをしてリビングに戻るとみまはテレビを観ていた。
中年を過ぎた司会者が大勢の観客に対して煽りを入れている。
「何と言っても世界で一番面白いテレビ番組は!!!????」
「ランニングメーーーーン!!」
「おどろいた、俺が以前住んでいた日本で全く同じ映画を、フィクションとして鑑賞されていたよ・・・」
「どんな内容?」
「凶器を持ったマッチョの男たちを相手に、でっち上げられた凶悪犯を戦わせるって内容だ」
「本当に同じなのね・・・その内容で合っているよ」
「凶悪犯はね、死刑かこのテレビに出るか選ばせられるの、何もしていない思想的な人間もこの番組に出されるの」
「警察は見逃しているのか?」
「見逃す?まだ警察を信じているの?見逃すのではなく推奨しているのよ、正義の名のもとにね」
俺は黙るしかなかった、そして一つの答えに行きついた。
「掃除屋・・・俺たちのやろうとしている掃除屋はこれと同じなんじゃないのか・・・」
「暁はまだ気付いていなかったんだ、でもね、この番組と違って私たちは二人が責任と運命を負うの、こんな誰が責任を持つのかわからないテレビ番組と違ってね」
「そうか、そうだな」
「そうだよ」
俺たちはテレビを消してシャワーを浴びて、それぞれの部屋で床についた。
翌日は10過ぎに新興産業に車を乗り付け佐々木に仕事の話を持ち掛けた。
「あるぜ、仕事が、面倒なのがな」
「面倒ではない仕事なんてあるのか?」
俺は佐々木の言葉に返した。
「ははっちげぇねぇ、今回の仕事は行方不明者の捜索でな、この女だ」
佐々木が俺の端末に画像を送信してきたので確認したが、30代半ばの笑顔が美しい女性だった。
「旦那からの依頼でな、なけなしの金を積んできた」
「面倒ごとがあったら殺して良いのか?」
「その辺はみまがこころえている、うまくやれ」
「大丈夫だよ、これでもプロだから、暁は新米だから私に合わせてね」
みまはそう言うと階段の方へ向かって行ったので、俺もそれを追う形で付いて行った。
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