20 玉田
コテージの中は荒れていると言うより古くてかび臭いだけで、ある程度の体裁は整っていた。
納戸の中を調べていたみまは声をあげる。
「ねぇねぇ、バーベキューセットがあるよ、炭は見当たらないけど」
「キッチンを調べたけどこっちも過不足なく揃っている」
2人はベランダに出て海を眺める。
「ゴミだらけだな・・・不思議だな、さっきの男がどうなるかは想像がついて、それにはなんとも思わないけれども、ゴミだらけの海を見ると悲しくなるな」
「私も同じ、私は麻痺しちゃっているの」
二人はしばらく海を眺めていて、日が落ちるころになると買い出しに出かけた。
「この辺にすんでるヨタ者御用達のスーパーがあるんだけど、そこでいい?」
みまが問いかけてきたので俺はそこで良いと返事をした。
「なんだこりゃ・・・パチンコ屋じゃないのか?」
パチンコ屋にしか見えないそのスーパーは電飾があふれんばかりに施されており、スーパー玉田とたんぽぽの花に彩られた店名が光っている。
そこらには転がっている酔っ払いやホームレスが壁に寄っかかっている。
店内に入ると要冷蔵の食品が床に重ねられており、刺身は黒く変色している。
「いい、ここは加工食品やパッケージ商品はいいけど、総菜の類は食べちゃだめよ、下手するとお腹壊すから」
みまが総菜を指さしてそう言った。
「元からその気だけど自炊だな、調味料と野菜を買っていこう、肉は良く火を通せば大丈夫か?」
みまがうなづくので当面必要な物を無造作にかごに入れて行った。
ビニール袋にをさげて二人してコテージへの道を歩いて行くと、ボロボロのコートを着た男が飛び出してきた。
「そ、その食料を置いてどっかへいけ!刺すぞ!!」
男はナイフをかざして脅しをかけている。
そこにみまが近付いてスーパーの袋を地面に置いた。
その刹那、みまは男のナイフをもぎり落とし左手で胸元から千枚通しを抜き出して、男の喉元に当てた。
「おじさん相手が悪いよ、早く逃げないと死ぬよ」
彼女がそう言うと、男は転びながら走り去った。
「おっかねーの」
「おたがいさまだよ」
「俺たちはこれからこう言うことをやっていかなければならないんだよな」
俺はそうつぶやき、みまは地面のビニール袋を手にしてコテージの方へ歩いて行った。
「さて晩飯はどっちが作る?俺は異世界で炊事もしていたからそれなりに出来るけれども」
「私は以前レストランに務めていて大概のメニューはできるよ、今日は私が作るよ」
海辺まで歩いて行く二人の姿は幸せそうに見えたが、それは本当にそうなのか誰にも分からないことだ。
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