17 廃墟
俺は視界に表示される矢印をたどって歩き始めたが、その内機能をある程度把握してきた。
初期設定は徒歩モードで、これをたどると膨大な時間がかかるが、そこに公共交通機関を追加することで、駅まで順路と、乗る列車が分かる。
「・・・ん?いやこれ駅まで行って数駅先で降りてタクシーを指示している、この距離ならここからタクシーに乗った方が都合が良いぞ、使い勝手がイマイチだな」
「使い込むと学習する類の能力じゃないかな」
「しかしこれは行先に対象がいるのか?どうやってデータを集めている?監視カメラか?いや、そんな精度じゃないぞこれは・・・」
「そもそもの能力が人知の及ばないものだから、出力される機能もそう言うたぐいなのかもしれないね」
俺たちはタクシーを呼んで、行先の座標を運転手に伝える。
「お客さん、これは山ん中だよ?ハイキングか何かかい?」
運転手が疑問符を投げかけてくる。
「細かいことは聞かないで欲しいな」
俺は運転手に言葉を返す。
「はぁ、そうですか」
それっきり運転手は黙り込んでしまった。
どんどん山の中に進み、大きな建物の廃墟が見えてきた地点でタクシーを停車させた。
「30分ぐらいで戻って来るから待機していてね」
運転手に声をかける。
しばらく荒れ道を進むと黒のSUVが停車してあるのが見えた。
「対象かは分からないが、誰かが潜んでいることは確かだな、よし行こう」
みまはポケットから拳銃を取りだしたマガジンと薬室を確認した。
俺が先行してみまは後ろから拳銃を下に降ろしてついて来る。
「旅館の廃墟みたいだな・・・ここなら暮らせるってことか」
そうつぶやくと、視線の矢印が建物内に伸びている。
素早く建物に入り、2階を示す矢印に従い、階段を登る。
矢印は部屋の一室に伸びているが、部屋のドアは半開きになっている。
手で突入の合図をすると、ドアを蹴り開けそのままダッシュで障子戸をけ破る。
あぐらをかいて座っていた男が驚いた顔をしている、そのままの勢いで首に蹴りを入れ、背中にまわって首を締め上げた。
すぐに男は昏倒したので、みまは無言で結束バンドを出してきた。
それで男の手足を拘束して、担いで部屋を出て行く。
建物から出た所で男は目を覚まし、暴れ出したが、みまが拳銃を見せて言った。
「おとなしくしないと殺す」
男はそれでおとなしくなり、タクシーの停まっている場所へと向かった。
「あっあー・・・運転手のヤツ逃げやがった・・・どうすんだこれ」
俺がそう言うと、みまは「あれがある」とSUⅤを指で示した。
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