16 佐々木
「どうしたお前ら、昨日の今日で」
「新興産業」の男は椅子にふんぞり返って言った。
「仕事を紹介してもらいに」
みまがつぶやくと、それを聞いた男が笑い声をあげた。
「はっははは、抜けた人間が同業者をやるのにウチに仕事をもらいに来たって?笑わせるな」
「私がいた頃も仕事は余っていたし他の業者にどんどん回して紹介料を取っていた、難しい仕事も他に回していたでしょう」
「・・・・お前たちにもその仕事を回せってのか」
「俺も虫がいい話だって思っている、だがみまは大丈夫だと言っててね、あんたは頼れると聞いたのさ」
(とりあえず現状は理解しているが、頼れるのはあんたしかいないと下手に出てくすぐってみる・・・)
「ふん、わきまえてはいるんだな、いいだろう、仕事をやる、ちょうど難物が入っていてな、2-3外注に出したがどれも失敗して仕事を投げてきた、生かしてとらえて連れて来る、出来たら今後も仕事を回してやるよ」
「佐々木さん、端末にデータを」
みまがそう言うとスマホを差し出した。
(佐々木って言うのか・・・信用していいのだろうか)
そのようなことを考えているとみまがしゃべりだした。
「ホームレスの殺害3件、娼婦の殺害2件、それ以外にも犯行に及んだ可能性あり・・・」
「写真は2枚のみだ、防犯カメラからは顔がはっきり映っているのはそれだけだ、探し屋に行けばある程度は探ってくれるが、エグい料金を取られるぞ、そこがこの仕事の難しさだな」
佐々木は頭の後ろで手を組んでいる。
「やります」
みまがそう言ってスマホを胸にしまった。
外に出て歩きながらみまに話しかける。
「なにかあてがあるのか?」
「ない、あなたのタトゥー能力が頼りだよ」
「・・・そうだな、この仕事は人探しが重要になる、何か鋭い単語を掘るのは今後も役に立ちそうだ」
そこそこらの路地に入り込んで上着を脱いでタトゥーペンを取りだす。
「色々考えたが、一番広い意味合いがあるのがこれだった」
ペンで文字掘り込んでいくが、案外と小さな文字だ。
「探索」
「これが良いだろう、人でも物でも探せるし、山の中などの込み入った場所でも使えると思う」
そう言って上着を着て路地から出た。
「さっそく使ってみよう」
俺は探索とつぶやくと目の前に数字や文字地図と枠が浮かび上がった。
「これは・・・どうするんだ?」
そうつぶやいたところでみまが対象の画像を見せてきた、すると枠の中に対象の顔写真がはまり電子音が聞こえた。
後ろ向きの矢印も空間に浮かび上がって見える。
こちら方向に行けと言う意味だろう。
「これは便利だ、これなら対象が見つかるかもしれない」
俺はそう言って振り返った。
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