13 隠匿と開錠
ルイトと呼ばれた男は大柄でいかにも格闘技をやっていると言う雰囲気だった。
相手がかまえを取ると俺もかまえに入った。
いきなりパンチがとんできたのでゆるりと避ける、2発3発ともそうだ、システマの基礎は脱力にある。
しばらく相手の攻撃を避けていたところで、懐に入りパンチを2発お見舞いする。
ルイトは驚いた様子で組み手の体勢に入ったので、俺はそれに合わせて身体をひねり、腕を取ってフロアに叩きつけた。
マウントを取り顔面に重い拳を叩き込み続ける。
「それまでだ!やめろ!」
シバが大声を出して近寄ってきた。
「お前何者だ、みまを足抜けさせて何をするつもりだ」
「復讐だよ、家族を殺された、みまは友人にそっくりだったから放っておけなかった」
「ふうん・・・気に入った、みまは渡すそれとこれは俺の名刺だ、何か情報が欲しい時や人数が必要な時は相談に乗ってやる」
やることを片付けて階下に降りるとおばちゃんが待ち構えていた。
「すごい音がしたじゃない、久しぶりねぇもめごとは、お兄さんもみまちゃんも傷一つ無いってことは、まぁそう言うことなのね」
おばちゃんは手を振って俺たちを送り出してくれた。
「ルイトさんを叩きのめすなんて本当にチートなんだね、あの人はあそこで一番の使い手なの」
「システマって格闘技をタトゥーで刻んであるんだ、気配感知も先読みもできる、基本はリラックスと呼吸の格闘技なんだよ」
「とにかくみまが解放されて良かったよ」
「良くないよ、300万円も使って」
「昨日話した異世界で活躍した報酬としてとんでもない額がカードに振り込まれているんだ、なんてことないよ」
そのまま昨日と同じ宿に入り、この先どうするのか話しあった。
まず土建屋に御剣に入り込み、頭をやっている男を処理する。
実行犯が違うのは間違いないが、指示を出したのは御剣の頭に間違いないからだ。
だが以前と同じでは門前払いを食ってしまう。
「そこで、だ、新たな文字を身体に刻む」
「なんて文字なの?」
「隠匿と開錠だ、これなら堂々と出入りできる。
俺は上半身裸になると「隠匿」「開錠」の文字をわき腹に刻んだ。
(胴体に書き込める場所が少なくなってきたな、慎重に文字を選ばないといけない)
みまは昨日よりかは幾分明るい表情で、良くしゃべった、足抜け出来たのが嬉しいのだろう。
(金をボラれたし卑怯な格闘戦をけしかけられたけど、まぁ物分かりの悪い奴ではなくて良かった、こっちを使えるコマとしてふんだのだろうけど・・・)
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