1 異世界からの帰還
俺は田中暁いわゆる異世界転生者だった。
「文字」を空間に書くことで能力が発動するスキルを持っていた、文字の力はすさまじく、向こうの世界での威力絶大で、仲間と手を合わせて魔王の討伐に成功した、そして今現在、始まりの宮殿に立っている。
始まりの宮殿は転生者が召喚されて、異世界に送られる宮殿で、女神がスキルの説明や異世界の状況を教えてくれる、よくある異世界転生モノで最初に送られる場所だ、目の前に女神もいる。
「女神よ、異世界を滅びから救ったぞ、これでまた元の生活に戻してくれるんだろうな」
おれはブラック企業に勤めていて、20代前半の若さで過労死をしたのだ、元の生活に戻ると言うことはブラックな生活に戻ると言うことになる、だが異世界にいる間に会社を辞めると決意していたので何の問題もない。
「そのことなのですが、非常にお伝えしにくいことではありますがあなたを異世界へ送った影響から、元いた日本と違う時空に分岐してしまったのです」
女神が何を言っているのか良くわからないが、ただ事ではないと悟った。
「具体的にどう言うことなんだ」
「はい、日本は企業主体の国家となり、政治は傀儡で弱き者は搾取され強き者、ヤクザと大手企業が支配する荒廃した国になり、ほぼ鎖国状態に陥りました・・・」
「おいおいおい!!元々俺が住んでいた町や近所のおっさんとかはどうなったんだよ!」
「変わり果てた姿です、ホームレスがあふれ、犯罪率300%を突破、あなたに分かりやすく言えばディストピアと言われる状態です」
「デ・・・そうだ!!両親は!?妹はどうなっている!!」
「全員死亡されました・・・」
「何があったんだ!!誰が殺した!!」
「ご両親は企業ヤクザの立ち退きに逆らったため放火で焼き殺されました、妹さんはその場で捕獲され・・・い、忌者にされたあとで殺されて川に捨てられました」
「ぐっ・・・ぐぐぐ・・・許さねぇ滅してやる!!おい女神!俺のスキルは使えるか!異世界同様に作動するのか!?」
「同じではありませんが使用できます、異世界でのあなたは空間に文字を書くことでスキルを使用できました、ですがそれはあの世界の空間だったからです、この世界ではあなたがあなたである証、己の肉体に文字を刻むことでのみスキルを得ることが出来ます」
「身体に・・・なんでそんな、マジックペンで書き込めばいいのか?」
「いいえ、文字通り刻み込むのです、この世界で言うタトゥーを刻むことで文字の力を得ることが出来ます」
俺は女神の言っていることが理解できなかった、身体に?文字のタトゥーを入れる??
女神は黙ってこちらを見つめていた。




