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野心家の高校生の物語

人生は長いですが頑張るときに頑張りがきかないと後悔します。

 別府高校温泉科


 第一章


 高校に入学しても続けていた剣道部を辞めて半年が経ったころから悪夢が始まった。

 段田の学力では第一志望の私立高校は無理で仕方なく近隣の公立の高校に在籍し小学校から続けていた剣道をも高校では続けようと文武両道だった自分にも酔っているかのようだった。この公立校は飛び抜けて学力レベルの高い高校ではないのだが卒業生の半数は国立大学に合格し毎年、かの東京大学にも一人二人と現役合格するような学校だ。


「良いじゃないか。別府高校で、、頑張れば希望の大学に行ける。電気屋の前山君も九州大学の医学部に行ったじゃないか」

 泣きながら私立高校不合格を学力不足と剣道の腕前に自分を呪った中学の卒業時点でもある。

「剣道は辞めておけ。勉強だけ頑張らなければ帝大クラスの医学部は無理だろう」

 親心からかつい他人でも遠慮して言えないで居ることも、子供の人生の分岐点に置いては人生の先駆者としての意見を言わなければならないのだろう。

 弁護士である段田の父親は大学卒業後、十年の浪人生活を経て司法試験に受かった苦労人だった。法律家、とりわけ弁護士という職業柄、人の、人生の時間の大事さ、環境の大事さ人と人との関わりの大事さは爪で心をえぐられるくらいに知っていた。


 段田は幼少期から両親から職業選択を無くされ。医者一択の教育方針を受けた。「職業選択の自由」を唄う日本国憲法の下部である父親は、それは無視した。段田の書いた小学校時代の作文には小学校2年生にして「医者になって父親を長生きさせたい」とう作文が今も残っている。段田は小学生時代から勉強とは、それは医者になるためのもの、医学部に行きさえすればなんとか医者にはなれるもの、というように教え込まれた。



 別府高校を段田は馬鹿にしていた。地方ではたしかに、この高校生は「頭が良い」という一般田舎人レベルの範疇だと思っていた。有名私立高校を落ちはしたが中学はトップの成績の段田は、高校、田舎の公立校ではトップだろうと慢心して最初の試験を受けた。11番だった。225人中11番。

「嘘。誰が俺より上よ?」

 トップは同じ私立高校を落ちた中島君を中心に怱々たる有名私立高校を落ちた連中が連なっていた。

「こんなど田舎に野心家が結構いたんだ、、、、それに私立受かったやつは別府高校を蹴って来ていない。

「補欠者が出たのはそのせいか・・」


「東京大学の理Ⅲって志望校、書いたやつがいる!!」

「真面目に志望校、書くように」

 クラス全員が爆笑した。先生も爆笑していた。


「本気ですよ」と段田は先生と目が合ったものの含み笑いでごまかした。


 段田としては剣道部は医学の道とは反比例するものだと諦めていた。しかし、中学時代、県大会個人2位、九州大会ベスト4、剣道部が逃がすわけがない。

「中学生くらいなら文武両道、出来るんだよ」

 とあいかわらず父親は剣道には反対だった。

「やりたいなら一旦、入部してみれば、、途中で辞めても良いんでしょう?」

 母親は、段田の気持ちを見透かしてたのか剣道に関して建設的に考えてるようだ。


 昼休みには剣道部が毎日のように入部の勧誘に来た。学内であえば笑顔で入部の良さを誇示してきた。剣道部顧問の先生も殺し文句で

「剣道部OBの山口は現役で九州大学の法学部に受かったよ」

 と入部を促す始末。

「段田ぁー。部活は入れ!何でも良いから、」

 担任も部活動は高校時代やるべき経験だと言う。


 しかし、ここで「勉強と部活の両立は出来るだろうか?」

 という疑問に自分自身、さいなまれた。

 中学時代、地元の中学では神童といわれるくらい六神丸といわれるくらいの秀才だった。ただ、比べるべきカテゴリーが貧弱すぎたのであろう。

 この別府高校は、普通に頑張ってるようなひとは地元の国立大に受かる、、だろう。という高校である。入学時、先生も露骨に話して聞かせた

「東大、京大を狙う人は自分で頑張ってください。この別府高校では九州大学くらいのレベルまでは受けないますが、それ以上のレベルの大学を狙う教育は出来ていません」

 段田の最初の落胆だった。

 そう国立の医学部、それも旧帝国大学のレベルはそれに準じるのである。

 文武両道。段田の思うところの両立は中学生の時点でもなしえていなかったのだ。

 剣道部は毎日毎日、迎えに来る。成績は希望のレベルには達してはいない。やるべきかやらざるべきかは大学受験の年にしかわからない。


 担任は、希望の大学を聞いてきた、

「段田ぁー。実際のところ希望の大学は何処ね?」

 爆笑された東京大学理Ⅲは封印するしかない。と思った。嘲られるのは憤慨の境地で先生といえども怒りの対象になると先読みできた。


「九州大学です」一瞬、間を置いて吐露するように言った。

「それだったら勉強も頑張らないといかんな。でも剣道部顧問の荒川先生から段田は是非、入部して欲しいそうだ。どうだ?部活はやるべきよ」


 何が根拠か分からないが「やるべき」の真意を聞きたかったが、高校生くらいのコミュニケーション能力では先生から「理由」を聞き出そうとするのは憚れた。


  先生の言葉を上書きでもするように剣道部員の上級生は入部の誘いに来た。

「やりたい気持ちは十二分にあるんですが、、、、」

 と後の言葉を言えずにいる段田に向かって勧誘の剣道部員は容赦ない。

「じゃぁ入るね!」

「いや、家族が反対してます」と嘘を言う段田。

「それじゃぁ、段田君のお父さんかお母さんに話をつけるから電話して良いかな?」

 よほど、段田を剣道部に入れたいらしい。

「ええ、説得できれば入ります」


 優柔不断。この言葉が段田には似合う。

 この言葉、自分が無い人に多い傾向があるようだ。


 何事も、この頃の段田が自己表現能力が高く、また、少し我が強いくらいであれば良かったのかもしれない。


 第二章      男女共学


 別府高校。この学校、男女共学の学校だった。社会人のための定時制高校もあり、家政科という女子だけを募集する学科もあり普通校を売りとしていながら、なかなかバイタリティーにあふれる人材を育てようとする目論見だったようだ。

 その家政科は併設されてるからか学校行事の際には、あえて作られた男子だけのクラス、俗称「ダンクラ」と授業の時間帯を調整された。

 その「ダンクラ」に段田は在籍していた。


 この時代は、男子は女に対して「可愛い、綺麗な娘」を追い求め。 女子は「かっこいい男」を求め青春を謳歌したいようだ。「アオハル」青い季節の到来である。

 家政科の女の子達も高校入学と共に漫画に出てくるような劇的でもある青い春を迎えたいに違いない。

 休み時間ごとに、男を品定めするのかしないのか、女の子ばかりのクラスは味けないのかダンクラに家政科の女子達は顔を出す。さすがに教室内までは入っては来ないが、さすが地元の高校だけ有って中学時代の同級生と話すという大義名分で廊下からダンクラを見回す。

「なにしにちらちら来るんだ?六組の子達、、」

 何故か「家政科の子」とは言わず「六組の子」と誰もが言う。

 家政科は普通科5クラス、家政科1クラスの学級編成で六組に振り分けられていた。

 俗に別府高校普通科は「頭が良い」とされ「別府高校家政科」は対外的に「普通科に落ちた女の子がまわされ、実業高校でも下の方の学力レベルの女の子が行く高校」と言われていた。たしかに家政科の卒業生は四年制大学に行くことは希であったようだが私立短大には半数が進級した。


 入学して2週間したときまで穏やかだった。宿泊訓練とオリエンテーションを兼ねてダンクラは家政科と同じ環境で武陵会館という宿泊施設でのオリエンテーションである。ダンクラは5組、家政科は6組。すでに1組から4組までは男子も女子も分け隔たり無く進路指導を受け同じ場所、同じ環境で大学を視野に今から勉学の日々が待ってる。3年後ではない受験。受験は始まってるという教えをたたき込まれていた。


「五組はオリエンテーション18時からここで始めます。六組はオリエンテーションは教室に戻って担任からの指導を待つように」

 段田は、なんとなく違和感を平山先生の言葉に感じた。

 ダンクラのオリエンテーションは長い。休憩を挟んで三時間を入学早々から先生達の進路指導を受けなければならない洗礼だった。しかし、ほとんどの生徒は何事でもない試練でも訓練とも思ってるという感じはなく先生の言葉を良く聞いていた。

 しかし、この高校はせいぜい半数が国立大学に受かるようなレベルでしかない。

 段田は、有名私立高校のオリエンテーションを呪った。今頃、東大か京大を視野に入れた進路指導。そんな高校に将来を託す自分に高校を「途中」としか「通り道」としか考えないようにしようと自分に言い聞かせ、「大学は偏差値で言えば九州大学医学部以上の医学部」と行く大学を決めた。

 去年の、大学別偏差値表というのが配られた。


「九州大学医学部っと」声を出さずに偏差値表を下から見上げた。

 東京大学理Ⅱ、東京大学理Ⅰ、九州大学医学部、名古屋大学医学部、東北大学医学部、北海道大学医学部、と同じくらいの所にあり、その上位に大阪大学医学部、京都大学医学部、東京大学理さⅢが連なっている。

「嘘やろ、九州大学が東大の理系と同じ分け無いじゃん!」

 信じられなかった。

「先生 ?九州大学が東京大学より上にあります。印刷ミスですか?」

 爆笑だった。

 段田は面白いことを連発して言ってくれると先生からもダンクラの生徒達からも慕われた。「どこを見てるんですか?そんな訳はないです」

「九州大学の医学部は東大の理Ⅰ、理Ⅱより上にあるんです」


「はぁ、その辺は学部間で偏差値は違っていて医学部は人気の学部で偏差値が高いんです」

「東大って九州大学の医学部より下なんですか?」段田は続ける。

「一概には言えませんが偏差値は、そうです。下と言うより九州大学の医学部は東大の理1、理Ⅱより難しいといえるでしょう」

 ここ別府高校は、年に一人、東京大学合格者をだせば良い方という考え方の学校であり

 その学校の先生達だった。

「段田君が、東京大学を目指してるようですので、この際に言っておきます。東京大学、京都大学を視野に入れてる人は、自分なりに学校に頼らずに自分で勉強してください。九州大学くらいの学校までは別府高校のカリキュラムをすべてこなせれば、合格出来ます。しかし、それ以上の大学は別府高校では範疇にありません」

「、、、、、、、」無言だった。

「段田ぁー。東京大学理Ⅲは本気だったか?」古川先生がにやけながら言う。

「無理ぞ!」

「やってみなければ分からないでしょう?」段田は本気で食い下がった。

「大分県の高校から東大理Ⅲは今まで居ない」

「マジッスか?」段田は泣きそうだった。

 しかし、こういうときに中学時代ではあるが剣道の猛者と言われた段田は闘争心に火が付く。古川先生は言った。

「部活は入るように」

「そんな暇は無いですね」

「いいから入るように」古川先生はたたみ込むように譲らない。


 オリエンテーションから食堂に戻ると家政科の女の子達は、なんとなく元気なく食事を終えようかとしてるとこだった。しかし、違和感から話して聞けば良いものを誰も言葉を掛けずに「家政科の女子」「違和感」はなんで有ろうか。人の持つ気質からにじみ出るオーラというものだろうか・・・・。

 とダンクラは自分たちばかりで爆笑また笑い、ふざけあっていた。

「段田のように面白いやつ、初めてよ」

「俺は真剣だ」段田は本当に真剣だった。

「東大?マジッスか?」

「いや、、九州大学の医学部で良い」現実的に(それなら大丈夫!)という感想を期待した。

「なんでも、別府高校で1番だった人が一年浪人して受かったらしい、九州大学医学部、、」

「マジッスか?」

 えらく良く使うフレーズだと言葉を換えることにした。

「東京大学の理系は去年受かってたね」

 たしかに卒業生の進路状況に記載されている。


 気が重くなってきた。そして風呂に行けと先生から通達が来た。夜はもう21時を過ぎていた。別府温泉。そうこの高校は別府楼門に代表される別府市の別府温泉にある高校であった。高校からの温泉への道すがら、温泉地ならではの場末のネオンが所々に見受けられる。中学を出たばかりで頭でっかちな段田でも性は目覚めてもいた。オナニーは毎日しているようだし、ソープランドではなにをするかと言うことも知っていた。

「ソープランドって看板が多いですね。何軒もあるようです」

 段田は何気なく緒方に言ってみた。

「別府はソープランドで有名らしいよ」

「高校生は入れないよね」

「岸川は、昨日、高校入学祝いで行ったらしいよ」

「童貞を抜けたか?」

「いや、中学校時代からセックスしてたらしいぞ」

「別府高校生って、真面目じゃないのか?」段田は憮然と腹立たしくなった。

「何しに、高校に来てんだ!!」段田は本気で怒り出した。

「高校は勉強だけじゃ無いよ」緒方は冷静だ。

 童貞の段田は、先に童貞を捨てたことが妬ましいのか規律を守らない同級生に敵意をおぼえた。

 この時期、中学の義務教育から高校へと、また社会人へと、進む道は人それぞれであるが大人への第一歩といえるような時期では無いだろうか。


 楼門は東京駅をデザインした人が作った建物で内部には動物が描かれている。干支の動物たちである。東京駅の干支の何個かと別府楼門の干支の何個かを足せば十二支となるそうだ。そびえ立つような門で、朱色で 彩られている。外観は緻密な造形物が何層も折り重なったように上に立ち、赤色が燃えるような炎をお印象づけるように、また炎をも屋根で押さえつけるように「傘の中の炎」その言葉では見た者しか分からない。 楼門から入ると家族風呂、大衆浴場とある。段田達生徒は迷わず大衆浴場に行く。


  風呂からの帰る段田達一行。今までは、別府という町は段田にすればハイカラな観光地であった。故に、大衆浴場といえ温泉に入ることは修学旅行気分だと入る前は予感していた。しかし、周りの別府高校生の反応は「ただの風呂」「家庭の風呂」というような感じで騒ぐことも無く体を洗うことに理知的に見えた。こんな事で感動してる位なので「高校生」。まだまだ見えてない予見できない生活があるのであろう。

 楼門から別府高校へ。それは三つの岩山が連なる小さな山の麓に鎮座した学校である。山並みに下から大グラウンド、中グラウンドとあり一番上に校舎があるへんてこりんな学校だ。校門から校舎まで登り十五分くらい歩きで掛かる。さぞかし足腰が三年も居れば鍛えるであろうかというものだ。

 

 第三章  部活は辞めた


 すでにご存じのようにもう部活は辞めていた。半年の間に「剣道」をこのように嫌になったことは自分自身でも意外だった。

 剣道部は、入部前、色々なことを言ってきた。

「頭髪は自由ですよ」

「毎週、土日は練習は休みだし、一時間くらいしか練習はないよ」

 剣道部は、別府高校の顔で県内では強い高校なので女の子に持て囃されるよ」

「 対外試合でも注目されるよ」


 段田が入部した切っ掛けは、過去の別府高校剣道部栄光の足跡からだった。五年前には県下で準優勝、玉竜旗大会ベスト8である。この若いときの段田にして疑うことを知らない無知の無知の段田にしてこの業績は魅力だった。

 しかし、今のメンバーの先輩達にして

「高校生でも強いってレベルは中学剣道の俺でもやりこなせるね!」

 となかば呆れた。別府高校剣道部。在籍中の先輩の成績。インターハイ県予選。一回戦敗退。段田は呆れて露骨にため息をついた。

 時代が変わると公立の部活なんて地に落ちる。このことを知ったのは漫画本での経験からだった。漫画に書いてある。

 私立高校には名門の剣道部が軒をつなれる。高校野球と同じく、時代が変わってもぶれないように「剣道」を愛し猛者という猛者が強い学校に行く。


 それに色々、別府高校入学時にマニフェストならぬ部活の利点の話を聞いたが、全部、嘘だった。

「頭髪自由は、2年生から」

「部活の休み無し。練習時間は2時間を超える」

「別府高校の顔は弓道部です。誰も剣道部に注目なんかしてない」

「対外試合では昔の栄光を引きずってる野暮なうっとうしい高校で有名」


 段田は人の嘘が大嫌いです。だから先輩がインターハイ予選県大会で一回戦敗退したときに退部を伝えた。「こんな弱い剣道部は嫌なので辞めます」段田は正直に気持ちを伝えた。

 もちろん漫画で習ってはいたが勢いだけの「弱い剣道部員」はリンチを段田に仕掛けてくるようになりました。 このことは高校生活の「落とし穴」と段田はこのときは気づかなかった。

 ただ部活を辞めただけ。三ヶ月居た部活動をやめただけ。

 しかし、自分の思いとは裏腹に中傷は根深く残った。


  第四章 ガム頂戴


 部活の無い生活はその分、時間がある。「医学部合格」を誓っている段田にして「猛勉強」は必修だった。医学部に受かるには別府高校で上位では無理だ。一番かそれに準じる成績1、5番くらいで無いと合格出来ない。

 それに段田は笑われはしたが入学時に「東大」「医学部」を爆笑されながらも豪語した経緯があった。

「これからは一心不乱に勉強」

 と心に誓いながら、坂口君から貰った一枚のガムをかみながら駅の待合室で帰り電車の来るのを待っていた。このときの事を思う出すとホームに入ってしまっていたら次の誘惑から逃れられたのかもしれない。

「ガム。頂戴!」

 と同じ学年の家政科の女の子が声を気軽に掛けてきた。

「もう持ってないよ」

「なら一万円で良いよ」

 何のことか分からずにキョトンとする段田に優しく笑っていた。背は低いが可愛い女の子だった。

「籐武さん?6組よね?」

 今度は、なんとなく興味をそそられるような優しく楽しい笑いだった。


「何のこと?」

 ますます分からず、段田にしては自分に女の子の方から声を掛けてきたことにも不思議だった。

「知らないの?あなたなら良いよ。だから一万円」


 ここは温泉街。ソープランドも軒をつなれる。

 勉強のこと、剣道のことしか知らなかった段田は素っ気なく答えた。

「今は、30円しか持ってないよ。一万なんて家にも無いよ」

 籐武は笑わず、白けたように「今度は無いよ」と言って踵を返した。

 自分から声を掛けて理不尽な要求をして怒って帰る。

「なんじゃ?」

 段田の方こそ、良い気分がそがれた一瞬を感じた。

 高校生活。女子の存在は筆致だ。童貞も早く捨てたい。勉強もしなくてはいけない。女の子との交際は現況には悪影響と考えてはいなかった。

 籐武さんか・・・なかなか可愛い。いや別府高校でも可愛い上の方だな・・・

 と「今度は無いよ」とは何だろう?と数学的に帰納してみても理解できなかった。


  第五章

 家政科のオリエンテーション


「普通科の邪魔はしないでください。あなたたちは家政科で校舎、クラスの配置から普通科と同じく学校生活を送ることになります。しかし、あなたたち家政科は実業科であり就職がメインです。普通科の生徒は、厳しい受験環境下に置かれます。 普通科は、高校は受験のための通過点でしか有りません。大学に行くことがメインです。決して邪魔はしないように」

 そして、どのような進路が待っているのか・・・求人は別府高校に来る。企業の人事課でも高卒採用をする企業は偏差値表片手に面接を用意してくれるらしい。高校卒にしては有名な企業もある。家政科といえども、普通科のお零れがあれば有名企業に就職できた。

 それだけを伝えるオリエンテーションだった。

 籐武達家政科の子は、入学当初からちらちら男を物色していた。良く6組の子達が連れたってダンクラの生徒と話をしていたがオリエンテーションから誰も来なくなった。

 それからの家政科の生徒は、普通科の生徒とは「家政科の一瞥」として顔を合わせても話さない、男も女も家政科の女の子とははなさない現状が続いていた。

 先生からひどく怒られるという状況なのである。昭和の男尊女卑の世界か魔女狩りの世界でもあるのか別府高校では家政科の女の子が普通科の生徒と話すことを禁じていた。


「別府高校・・・来なければ良かった・・・」家政科の女の子達は人知れず悩むようになった。別府高校。大分県では名の通ったと錯覚しているような学校ではある。多分、田舎では中学時点の進路指導も行き届かず成績だけで振り分けるような進路指導なのだろう。そのうえ、ど田舎では高校の存在が少なく選択肢が都会に比べて圧倒的に限られることも問題である。オリエンテーションの数日あとから家政科は退学してしまう生徒がいた。


 第六章  偽エリート達の偏見


 別府高校。地方では「頭が良い」とされている高校である。また、ここに通う生徒はプライドも持っている。公立の中学校と言えば悪さをする人も居れば虐める輩、虐められる子供達も居る。ただ中学生であり、その子供達が高校生になる。地方の公立中学校では上位の成績の子供達が別府高校普通科には通うことのようだ。

 家政科の生徒はどちらかというと「輩」だった。

 段田は、この「輩達」が綺麗に見えていた。高校生で化粧を上手く施し、すれ違うときは心地よい香水の匂いがした。よく妄想に浸りながらお気に入りの家政科女子でオナニーをした。 この頃の、女の子達を「枯れ葉が落ちても笑う」と言うが男の子達は「女子のブラ紐の線を見ただけで射精する」とでも言って過言でも無いのかもしれない。昔は元服は十五才。一番、肉体的に子供を作ることに適した時期でもあろう。

 しかし、男子連中は、「家政科の女子」に交際を申し込むような事はなかった。会話が無いこともあるのだが可愛い女の子は多く居るのではあるが「切っ掛け」さえも作ろうとはしなかった。それは一方的に接触を禁じられているからでも無くそれぞれの個々人の自発的なものだった。

「籐武。田代。日渡。内田。このちびっ子四人組、、、、可愛いよね? 」

 段田は前々からのお気に入り四人衆を友人に鎌を掛けてみた。

「段田は、ああいう感じが好きなの。不良っぽい女」

「いやいや、清楚系がいいけど」

「なら、他がよくない?」

 とすぐに会話が切れる。

 どの友人に聞いても迎合してくれることも無く、素っ気なく盛り上がらない。

 しかし、普通科の女の子の話になると「やりてぇ」「なめてぇ」「なでなでしたい」とか、かなり下品ですが興味の度合いが格段に違う。

 不思議な高校でもある。同級生でありながら、その向こうに何があるのだろうか。そびえているのか掘り返さなくてはならないのか、なんでもない錯覚なのか。この頃の段田には「純情」というものしか理解できなかった。



 第七章  辞めたら終わりではなかった


 部活を辞めたところで別府高校生として縁が切れる訳でもなかった。同級生にも剣道を続ける人は居たし、上級生に期待されつつ入部した経緯もばつが悪いものになった。剣道部との縁を切るには別府高校を辞めるしかない。実際、そういう部活を辞めることと同時に学校を退学する学生は高校でも大学でも結構な割合でいるのである。

「学校まで辞めなくても、、ただ部活を辞めただけでは?」

 と疑問に思われるかもしれないが上級生同級生の有言しかり無言然りの圧力は

「高校は勉強だけでは無いよ」と言った友人の言葉然りである。

 良いとも悪いこともグレーなことも経験していくことが学校なのかもしれない。

 この頃の段田はまだまだマザーコンプレックスが抜けず、剣道部の先輩から直々に母親に電話が掛かってきたときに

「そんなに剣道をやりたがってるなら入部させても良いですよ」

 と了解した母親を煙たがった。

 ジレンマ。ここに将来への予見と現在の実力が伴わない場合、場当たり的な考え方なら自由にやれば良いのだろうが将来を見据えれば遣りたいことも我慢しながら修業の時代を乗り切らなければ成らないのかもしれない。

 人生とは選択の連続でもある。日本。自由の国、日本。たぶんアメリカは「自由の国」を唄っているが日本の方が生きやすく自由であろう。

 自由すぎれば先人のせいにして窮屈なら世に中のせいにする。それが自由というものであり日本国です。この自由にさせる母親が段田は窮屈で自由にさせようとはしない無理強いする父親がこの頃の段田には良き忠告者だった。なにせ段田には自分が無く何をすべきかも自分では考えきれなかったからである。

 ただ剣道部、剣道は弱いのに別府高校生相手にして先輩には「番長」が、別府高校の番長が居座っていた。 ガタイが大きく強いそうだ。剣道は強くないのだが喧嘩は強いと言うことであった。実際、段田はこの先輩とは二つ上の学年の先輩にして剣道は互角であった。


 福田は、段田が退部して一週間後に剣道部を退部した。剣道部は弱い。しかし縦社会は厳しいという伝統が根強く残る九州の田舎高校である。OBには警察官、消防士、自衛官、教師が多く、高校生からそういう社会に慣れておこうかと言うような気概も感じられそうである。 その福田は剣道部を辞めたその直後にラグビー部に入部した。

 別府高校の番長、鳥越の顔を潰したのは間違いなかった。剣道部のような部活動を辞めた場合、その後は部活なんかしないで空を眺める「青空部」が無難なのだ。

「舐めてるな」

 鳥越は、剣道部の部室で剣道部員全員に福田への制裁を言い放った。

 過去の栄光にすがっているだけの剣道部。こういう「輩」とは将来的にも付き合わない方が無難のようだ。面子を潰された。高校生でも、そう考えるような気難しい剣道部員である。



 第八章   剣道部の制裁


 番長鳥越は、直接は手を下したりはしない。卑怯なのである。普通、高校は三学年有るので1年生を2年生がシメる。2年生を3年生がシメる。この構造である。福田は、定説に従い2年生の山崎にシメられた。

 竹刀で防具も着けさせず、剣道部室に置いて一対一ではあるが 無抵抗である福田に頭は蹴るし竹刀で体をたたくし正座させた上に一方的な制裁だった。ここで1年生は上級生に刃向かわない、、、という構図は日本の仕来りではあるが段田には無かった。



「なんでやり返さなかった?山崎だろう?チビで下手くその、、、、」

「後が怖いよ。もしやり返したら剣道部員と鳥越が出てくる」

「鳥越ねぇ、、強いそうだね」

「段田は、なんて言って辞めたんだ?」と聞く福田に段田は正直に答えた

「こんな弱い剣道部は嫌だと言ったけど」

 福田は言葉を無くし唖然と段田の顔を不思議そうにまた涙をも浮かべているかのようでもあった。

「それだけ言えればたいしたものだよ!」

「段田もシメられたんだろう?」

 なかば助けを求めるかのように同調を期するかのような福田だった

「いや。俺は何もやられてはいない」

「今のところ、再入部を促されてる」

「だからか、、」福田も納得したようだ。

「俺が他の部活動に入ればシメだろうね」

 二人は高校生活の現実を社会への第一歩としてこのときは受け止めることは出来ないようだった。


 第九章 落ちていく学業成績


 煩悩に対する誘惑が多いのも高校である。たしかに公立の中学校のように成績優秀者、素行不良者、知的レベルの低い人、平々凡々な人が入れ混ざっていると言うわけでは無く、一応、受験という適性検査で普通高校、大学に進学を希望する人たちを選んで学ばせる高校であるから学校は表向きは受験一色のようにも外部の人には感じられるようだ。しかし、何処の高校にしろ男は女の子と遊びたいのが本音である。これは勉強が出来る出来ないは関係が無い。本能が関係しているようです。実際、有名私立高校生達は勉強は当然出来て、加えて何かの特技を持っていることが人望とされる。親元を離れて私立高校や体育会系の有望校に籍を置く高校生達は「性」に関して弾けていく人も多いようだ。

 勉強が出来る人は校則を守り不純異性行為などはしない。大正時代のようなことは誰ももう当然だとは思ってはいない時代です。

 中学生くらいで異性間での性交渉を済ませている人が過半数に登るときに段田は未だに女の子には奥手であった。勿論、童貞である。それも毎日、オナニーを欠かさない童貞である。


 高校一年生。一応、高校受験も終わり希望の高校に来た同級生達は「ここで童貞を捨てるんだ!」と言わんばかりに女の子へのアプローチをする。「セックスをしましょう」と直接は言うような時期ではないが、この時期の男達は勃起がスゴい。女の子と話すとき腰を引き勃起を隠しながら女の子と会話を楽しむ男子達ですらある。

 段田はダンクラに居たせいか時折、すれ違う家政科のお気に入りの女子をオカズに日々、オナニーをするのが日課だった。

 中学生時代は、エロ本片手に勉強の合間にオナニーをしてストレス発散をしていたのだが、高校生になり環境が変わると具体的な女子を妄想の中で脱がせて舐めて揉んで入れて

 射精した。勉強の合間にオナニーではなく妄想癖が著しい段田はやるせなくなるようにオナニーの合間に勉強をするような状態で学業成績は入学時の11番を筆頭に落ちる一方だった。

 担任である古川先生はそんな段田を気遣ってか

「段田ぁ。部活辞めて成績が落ちてないか?」

 といつもの半笑いでは無く、本当に心配そうに聞いてきた

「いやぁ、部活がないぶん時間はあるんですが集中できなくて、、、、」

 古川先生は、それみろと言わんばかりに

「おまえ達くらいの時期は血気盛んで時間に縛られるくらいが良いんだ。ある程度の実力がある学生だった短時間でも別府高校の授業くらいこなせるんだよ」

「、、、、」段田は無言だった。

「剣道部、辞めたのなら他の部活動にでも入れよ!」

(気楽に言うなよ。鳥越にシメられるよ)

 それが最初に思った言葉だが先生にチクる事も出来ず「そうですねぇ」と言葉を濁しながら職員室を出た。

 有名私立高校を落ちた段田。別府高校に置いてもさほどめざましいような成績でも無い。

 持っていたプライドと自信は勉強においても剣道においても木っ端みじんに砕けたことを感じた。



  第十章  ガム有るよ


 家政科の女子と仲良く話す普通科の男子が一人、見受けられた。誰も気にしないようで気にするのが高校生であるし大人の世界でも変わらないのだが違和感が漂う。

 なんとなく親しくしているが付き合っているような感じではない。誰も、聞きはしないが

 裏の事情では

 松本は、家政科の田代と戦没者を尊ぶ慰霊碑のある忠霊塔のベンチで乳繰り合っていたということだった。

 松本は、同じダンクラの生徒だったので段田は躊躇もせずに聞きに行く始末だった。

「家政科の田代に入れたの?」

 松本に、段田は普通に聞いたつもりだが松本は 顔を仰け反らせて青ざめた。

「何故、知ってるの?」

「みんな知ってるよ。付き合ってるのか?」段田は自分は嘘をついても他人が嘘をつくことは憤慨するような性格だった。

「いや。そういうわけでは無いのだが、、、、」

 口ごもる松本に、それ以上追求することはなかった。

「俺も、やりたいなぁ。セックス」

「段田は童貞?」

「いや、中学時代に済ませてるけど最近、剣道やってたからセックスまで時間がなかった」

「ふ~ん」松本の余裕のある反応に(遣りやがった)段田は焦った。


 この頃でも、ダンクラに在籍し女子と接点が無い段田は高校入学から会話した女子は家政科の籐武だけだった。

 その日から、ガムを噛みながら暇な下校時間を駅の待合室で1時間は過ごしていた。今度は、ガムを用意して籐武が声を掛けてくれることを願いそわそわしながら籐武との会話を上手く転がせるように言葉を用意していた。


  第十一章  黒い春


  一週間ほど、待合室でガムを噛みながらボサッとしている日が続いた。ガムを噛みながらぶらぶらするような別府高校の生徒はあまり見かけはしないし一年生でも過半数は放課後は部活動に学習塾と忙しくしているような同級生達だった。段田は剣道部を辞めたばかりで何をしようか模索しているかのようにでも思われた。

 そんな時、籐武が日渡と共に段田の方に歩いてきた。通りすぎようか段田を目標に歩いてきているのか分からないが目が合った時、段田は勇気を出して話しかけた

「ガム。食べる?」

 学内では話もしない普通科男子が話しかけてくることに家政科の籐武、日渡は表情は全く変えずに

「要らない」と籐武は言った。

「じゃぁ日渡さんは食べる?」と焦りながら言葉を丸投げした。

 ニヤけながら日渡はガムを手に取る。

「この子が良いの?」籐武が話し始めた。

「じゃぁ一万円ね」

 今度は、段田が解せないような顔になるのが当然だった。

「なんで一万円なの?」

 籐武と日渡は顔を見合わせて言葉を詰まらせるような態度を取った。

「知らないの?」

「知らないよ」段田は何も知らなかった。

 籐武と日渡は、こそこそ話す訳でもなく段田が目の前に居るにもかかわらず


「この人、何も知らないで私たちを呼んでたんだ、」

「本当かな?」」


 段田は二人の会話を聞きながら籐武に言った

「籐武さんと話したかったんだ」

「呼んだ?本当?って何のこと?」段田は話し出した途端に饒舌になる自分を感じた。


「ほら。本当に何も知らない。」日渡は、巨乳で有名で段田のオカズだった。しかし、可愛い最初に声を掛けてくれたというだけで段田はあえて籐武に積極的であるということをアピールすることにした。段田は顔重視のセックスを知らない青い男子だったのである。


 二人は、立ち去るわけでも無く無言のまま段田の言葉を待っているようだった。

「一万円くらいなら今日は持ってるんだ」

「一万円、丁度?」

「いや、一万七千円有るよ」

 籐武と日渡は、ウンと二人で顔を見合わせながら話し始めた

「一人なら一万円。二人なら二万円。だけどホテル代あるから、、」籐武は続ける。「自宅だったら私たちにやる分で済むよ」

 純情で勉強と剣道しかしてこなかった段田でも黒い感情をこのとき理解できた。

「この別府温泉駅の待合室でガムを噛みながら三十分以上待ってることが私たちを呼ぶ合図なの」日渡は真面目な顔で話し始めた。

「ただ、同じ高校の生徒は注意してるの。直感で、口が堅そうな人だけ私たちは遊んであげるの」

 籐武も黙って段田を見ながら日渡の話に付け加えた。

「言わない?お金で私たちと出来るって事?ここまで話をさせて無しはなしだよ」


 段田は内心、強烈に軋轢を感じずには居られなかった。同じ高校の生徒が売春をしている。テレビで違法性を唄っている高校生の売春はいつの時代にも問題になる。お金がある成人に高校生が体を売ることが主流なのだが、籐武、日渡は高校生である段田の声に応えた形になる。

 違法性は免れない。発覚すれば 学校は退学、家庭裁判所行きは免れはしないだろう。段田の父親は弁護士だ。医者を目指している傍ら法律も大まかなことは見聞きしている。父親の書斎で見ていた法律書を読まなくても悪い事だとは分かっていた。


「明日じゃ駄目かな?」段田は、困ったように二人に尋ねた。

「駄目よ」二人はステレオのように両方から声を荒らげるように言った。


 暫く、三人の沈黙は続いた。初対面では無いのだが、話をするのはほぼ初めてだった。それが同級生に於ける売春の需要供給の話だった。

 段田は、持ち前のいい加減さで

「じゃぁ三人で遊ぼうよ。足りないお金は明日持ってくるということで、、」

 籐武と日渡は

「いいよ」と頷きながら天使のように微笑んだ。

 三人で遊ぶと言うことで二人がたじろいで断られることを少し期待したが二人の女の子達はそういう状況も慣れているのかあっさりしたものだった。


 第十二章     買春


 三人は程なく歩いてファンファというラブホテルに着いた。駅からさほど遠くも無く、籐武、日渡がよく使うラブホテルだそうだ。買春をして売春をする同級生と童貞を捧げるということなど微塵も予見していなかっただけに目は泳ぎ手元は震え、歩きは おぼつかない。ラブホテルまでの道すがら心臓が爆発しそうだった。

「段田君、童貞?」 女の子からは聞きにくいことをこの状況からか籐武は尋ねた

「いや。そうじゃない、、といえば嘘だ。童貞です」

 なぜか標準語、丁寧語になる段田。

「どっちに先にして欲しい?」

「どういうこと?」

「童貞を捨てるのが私かヒワちゃんかってこと」

「そうか一本しか無いから先に入れたら、童貞はそこで終了か、、」

「難しく考えなくていいよ。覚えてるよ、童貞喪失は。歳をとっても、、」

 日渡は、何も言わずに顔は穏やかにしている。


 段田は考えながら二人のあとからラブホテルの部屋に入った。個別のコテージに制服姿で入っていく三人にもなんの注意もされない。ラブホテル。とかく秘匿性が重んじられ「人の秘め事」に対する秘密主義からであろう。


 部屋に入るなり籐武、日渡はポケットからタバコをだし、吸い始めた。今日この頃、始めたタバコの習慣では無いことは段田にも分かった。

「段田君。決めた?どっちから先にやる?」

 段田は決心が付かなかったので

「とりあえず。二人、脱いで」

 と精一杯、声に出した。

 するすると二人は制服のスカートを脱ぎいで綺麗に折りたたみブラウスを脱いで折りたたみ次にブラ、パンティーと脱いだ下着をその上において段田の言葉を待っているようだった。


 若い四肢。段田にすれば同級生の女体を見定めることも目を合わすことすら出来ないで居た。

「本当に、童貞ね」日渡がクスッと言った。


「籐武さんと先にするよ。童貞は籐武さんに捧げます」

「一生、覚えててくれる。私のこと、、」籐武は優しくキスをしてきた。

 段田は、これで弾けたのキスをしながら右胸から乳首の周り円を描くように 触りながら乳首をつまみ手のひらで転がし。それを繰り返して「おっぱい」の感覚を初めて抱いた。それから口を使っての愛撫に移り、父親のアダルトビデオで観たセックスを真似するしかこの場合なかった。日渡は、この二人を見ているのか段田のペニスに興味があるのか、段田の股間ばかりに視線があった。

 籐武をセックスの対象として今、現在、接触中ではあるのだが日渡の視線も気になり出す始末である。しかし、若い雄の体というものは色々考えすぎても考えなくても勃起するもののようだ。段田の、マックスペニスに成るのに一分もかからなかった。と言うことはキスを楽しんでいるときには全回ペニスだったのであう。なかなか服を脱がない段田の服を脱がせたのは日渡だった。スラックスを段田が籐武を攻めている最中に日渡は後ろから手を回してベルトを外し段田のスラックスを脱がせ、ボクサーパンツもするりと脱がせてしまった。


「大きい、、」日渡はびっくりしたようだった。

「日渡さん、後でね、」と言いながら籐武の身体をなめ回している段田は局部から流れる籐武の愛液に感動すら覚えて「入れる」と決心したように言った。

 籐武は時折、吐くあえぎ声から「コンドームはしてね」と可愛く言った。

 ラブホテルにコンドームは用意されており段田はそれを使うことにした。

 ぎりぎり入るようで段田のペニスにはキツい感じがしたがコンドームとはそういうものだろうと段田は籐武に入る準備をした。

 正常位。膣口を目標に段田はペニスを入れようとする。

「入らない?入らない?ここだよね?」と籐武に段田は不思議そうに聞いた。

 籐武は誘導するように段田のペニスを「えっ」と言いながら握った。「えっ。大きすぎない?」

 段田は不思議に思い。もう一度、強引に入れようとした。しかし、籐武に膣口が小さすぎてペニスの先さえも入らなかった。

 籐武は上体を起こししてマジマジと段田のペニスに見入った。「おおきい、、このサイズ初めて見た。こういう人が巨根って言うんだね、、」

 段田は憮然とエレクト中のペニスを自分で握りながら

「そんなに大きいのかな?入らないってことがあるの?」

「私は、マンコがちいさいのかな?」籐武は小柄からか自然と作りが華奢で小さいことを少し気にしているかのようだった。

「ヒワちゃんとやってみて、」と籐武から促されて日渡に愛撫もキスもしないで正常位で膣口を目指した。

「すぅ」とモーゼの十戒で道を進むように段田のペニスが膣に導かれ日渡をあえぎ声に変わらせてしまった。このとき、腰を振り、若い疲れ知らずの段田はやったことの無いピストン運動をアダルトビデオで見るように、まねてやってみた。時折、引っかかる膣壁に、痛いような内部。腰を動かすたびに日渡は「うおお。うおおお」と低い声を出している。

 段田は、女の内部を少しの間、楽しんで日渡の中で射精した。

 段田は、日渡の横に添って寝ながら大きい胸をもてあそびだした。さぞかもお金の分は楽しみたいというようなさもしい考えでは無く若い綺麗な大きい胸は男にとっては魅力的であるようだ。程よく右に左に両手で日渡の胸を持て遊んでいると、若い段田はまたエレクトした。最高潮というようなペニスに入る血潮がペニスのサイズでは足りないような血流の量にようにも感じられるほどだった。

「もう一回、入れて良い?」段田は遠慮しながら日渡に言った。

 日渡は、段田のペニスはさすがに大きいと思ったらしく

「ちょっと痛かったんだよぉ。痛いのは嫌」


 籐武はこの会話に興味を持ったらしく

「ヒワちゃん。どうだった?大きいチンコ」

「どうって、、、、処女喪失の感覚っていったらいいのかなぁ、」

 籐武は、処女喪失の最初の感覚を思い出したいのか

「私に入れて。段田君」と言い出してきた。

「ん」といいつつ段田は今度は籐武を四つん這いにさせた。

「この方が、入れやすいと聞いたことがあるよ」段田はセックスに関しても勉強熱心だったことがこのときの自己満足感を飛躍的に充実させた。

 極限まで固くなったペニスを籐武の背後からお尻の下にある膣口をめがけて容赦なく入れ込んだ。

「ぎゃぁ」と籐武は泣きそうな声を出す。血が出てきた。容赦せずに段田はピストン運動をやりながら

「こっちの方が早く射精しそう」などと籐武がぎゃぁぎゃあ叫んでいるにも関わらず段田はセックスをやめない。籐武も「辞めて」とは言わなかった。しばらく叫んでいた籐武も段田のペニスの大きさに慣れてきたのか自分の胸を揉み出した。

「私が上になりたい」と籐武少し腰を段田から遠ざけまた段田を誘導してベッドにうつむけに寝かし付け籐武は自分から段田のペニスをバギナに入れようとする。一度、開いた膣口は入れやすいようで籐武と段田は窮屈な一体感を抱きながら果てた。籐武も、痙攣していた。


 日渡は血が出ている籐武のバギナをマジマジと見ながら

「処女喪失みたいね」と言った。

 段田は聞いてみた。「何歳の時が初体験なの?二人は?」

「私は、中学一年」日渡が正直に言う。

「私は、今よ、、、、」籐武が嘘っぽくニヤけながら言う。

 日渡はキャキャと声をあげ段田はニヤけていた。

 これで三人の場が和んだのか別府高校の悪口で盛り上がりだした。事情は色々あるが家政科の日渡、籐武にしろ段田にしろ別府高校は好きでは無かった。タバコを二人は吸いながら段田も又、タバコをもらい初めて喫煙した。そうやって放課後の黒い春がやってきたようだ。

まだまだ続きます。

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