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人喰い  作者: 青い傘
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ひとしきり音を立てずに泣いた後、私は立ち上がり、2階の出口へ歩き出す。何やら、身体が軽いような気もする。意識を失っていたとはいえ、5~6時間も寝ていたからだろうか。


モールの中は見渡す限りは人影もなく、物音もしない。出口から外に出ても、近くに人喰いの気配は感じない。改めて月明りしかないモールの駐車場のはずなのにちらほらと人喰いがいることが確認できることが違和感ではある。


私の家まではそう遠くはない。歩いても10数分のところにある住宅街の一角に我が家はある。モールの人気の少ない南入り口から出れば良さそう。そんなことをぼーっと考えながら歩いていたからか、ちょうど死角になっていた階段の降りた先で上空を見上げたままで動かない人喰いに遭遇した。


一瞬の出来事は向こうの方が反応速度が速かった。距離がものすごく近いこともあり、私がそれに反応できたのはその顔が私の目の前にきたときだった。


「っ!」


一番最初に反応したのは右手だった。反射的に押しのけようとしたのか掌底の形であごの部分を思い切りたたきつけることになった。普段、やらない行為をしてびっくりはしたがもう一つの驚きがあった。


あごのところに決めた掌底が人喰いの頭を吹き飛ばしていた。完全に首から上を吹き飛ばしており、地面へと血やら何やらが飛び散った。人喰いとはいえ、人の形をしたものの生命活動を止めてしまったことには不思議と罪悪感などはなかった。むしろ、この力がさっきまで持っていなかったことに対して、発散のしようがない怒りが残る。


何となしに人喰いを吹き飛ばした右手を見ると噛まれたような傷跡が増えている。それもくっきりはっきりと跡が残っており、今まで良く気づかなかったものだとも思う。手袋も必要だなと思う。


駐車場の端を歩き続ければ、襲われることもほとんどなく、出口へと出ることが出来た。一度、どう頑張ってもよけられそうにないのがいたので、背中を見せている瞬間に、駆け出して右手で思い切り、顔を殴り飛ばした。


その経験からも私の体は少しおかしいことは分かった。最初は右手だけもしれないと思っていたけれど少し力をいれて駆け出せば、一足で行ける距離が以前とは比べ物にならないし、左手も小石を握りつぶせるくらいの力があった。


最初は普通に道路を歩いて行こうと思っていた。けれども、まばらではあるが道路にもやつらがいるのと曲がり角などを警戒しないといけないことを考えていていたら、いい案を思いついた。


屋根の上を歩いていけばいい。


ジャンプ力も上昇していたので、屋根から屋根に移動することも苦にならない。途中からは普段とは違うことが出来ることにテンションも上がってきてしまい、あっという間に自宅へとついた。


屋根の上から、2階の私の部屋のベランダへと降りる。念のため、窓から様子を覗くと朝から何も変わっていないようだった。


「鍵をかけるの忘れてたな」


そんなずぼらな性格が逆に味方した。窓を割らずに入れることに越したことはない。


気を張っていたつもりはなかったし、意識も失っていた割にはベッドに乗ってしまったら最後、意識は遠のいていくのであった。


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