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「東京で人喰い事件発生」
最近の話題といえば、これに限る。田舎とはいえ、曲がりなりにも東京都の一員である私たちにとっては興味深いニュース。
「相変わらず、人喰いだのいう割にはあれよね。学校なくなんないよね」
「ねー。休みにしてくれてもいいのに」
模倣犯も少しばかりはいるらしいし、犯人もすぐに捕まるようだから、問題が大きくならないのかも知れない。
「いやー。男子どもは直ぐにゾンビだなんだって騒いでだけどねー」
この件でうるさかったのは男子を始めとした生徒たちだろう。真剣に捉えすぎて、熱弁し始めてシェルターがどうのっていう話をしてた。
金曜日くらいから話題になったこの話で月曜に休んだ奴もいたけど今日、火曜日にはしっかりと来てるし。
「だって、ゾンビが本物だったらもう日本終わってるし」
だとさ。
「美羽。いざとなったら私のこと守ってね」
山田美羽。私の友達。体術、剣術に自信があって、暴漢も撃退したことがある。
とてもその華奢な肉体からは想像できないけど。
「えー、ズルい。私のことも守ってよね」
「いや、いいよ。私だけでいい、夏代子は見捨ててよし」
長嶋夏代子。私の友達。彼氏募集中らしいけどギャルっぽい割にはロマンチストなところがあるから、なかなかいい相手が見つからず、付き合った人もいない。
「任せな。二人まとめて守ってやんよ」
それを聞いて私も夏代子も美羽に視線を向ける。
なんて頼りになる奴だ。
「その代わりー」
一拍置いて
「次の授業の宿題見して」
そんな一言で全部台無しになるけども。
「しょうがないなー」
そんな火曜日の昼休みは平和なまま過ぎていった。