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二十三話

※謝罪と訂正です!

間違えて二十二話をすっとばして二十三話を投稿してました!

誠に申し訳無い!

 

 屋敷の裏庭。

 日もいい具合に昇り、雲一つない良い天気に恵まれている青空。

 こんな日には皆で弁当でも囲んでのんびりしたい。

 いや、ある意味のんびりしていると言えばしている。

 俺、アロスフィアさん、エメリーさんで裏庭の一角にブルーシートを敷いて、今から始まらんとする試合を見物しようとしている。

 ちなみにアロスフィアさんはヘクトールさんに姿を見られないように不可視化の魔法を使っている。

 

「ふっふーん。 全く活躍を見せられていないけど、これでもAランクの傭兵。 拳撃の狂熊と呼ばれた女! ボクが実力を見てくれるわ!」


 カンフーよろしく変な構えを見せる着ぐるみことヘクトールさん。

 なんかテンション高いな。

 それに相対しているのは漆黒の肌を持つ二メートル近い身長の巨漢。

 顔に鼻や耳、口は無く、真っ赤な眼に黒い瞳孔が浮かんでいる。

 ムキムキの筋肉にどうしても目が行ってしまう極限まで鍛えられた肉体。

 何故かパンツ一丁に蝶ネクタイをした禿頭のナイスガイ。地肌しかないのにあの蝶ネクタイどこにどうやって着けてるんだろ。

 見た目は完全にネタ枠っぽいし、正面から見るとなかなか怖いが、接してみるととてもいい人である。

 ……人かどうかは置いておいて。

 彼の名前はニグレド田中さん。

 マーケットアプリでなぜかタイムセールをしていたので、アロスフィアさんに相談し購入した三騎士のうちの一人。

 お値段三人セット価格で一億五千万エルク。

 バカ高いお値段だけど、アロスフィアさんが何処から持ってきたのか凄い神々しい感じの剣を持ってきてそれをマーケットアプリに呑み込ませたら三億チャージされた。

 敵から奪ったものだから別にアロスフィアさんのお財布に損害は無いとの仰せだったので遠慮なく使ったけど、相当ヤバイ剣だったんだろうな。

 ……国宝とかじゃないよね?もう呑み込ませたから出せって言われても無理だし。


 なぜこんなことをしているのか。

 それはリフェルから届いた手紙に端を発している。

 彼女からの手紙には俺からお金を巻き上げた連中が見つかったから町に来いというものだった。

 そしてアロスフィアさんとエメリーさんに大反対された。

 俺が間違いなくトラブルに巻き込まれるだろうから、という理由だ。

 今までの流れで町にいけば絶対にろくでもない事に巻き込まれて、拐われたり怪我させられたりする可能性が高いと。

 自分でも正直それはありそうな気がしてる。

 お金は気にしないとは言われたけど、それでも盗まれたままというのは心にトゲのように刺さったままでどうしても気になってしまう。

 それだと普段の生活を気持ちよく過ごせない。

 ……という話をしたらいざというときに使える戦力が必要という話になり、マーケットアプリの戦闘獣やホムンクルスの話をしたら購入しようという流れになり、購入したホムンクルスの実力を確かめようという話になったのだ。

 町に行くならアロスフィアさんは呪いもあってついていけないし、エメリーさんもトラブルの原因となりやすいし、おそらく今回の公国の兵士達を襲った件で何か言われるだろうから行けないと。

 しかし二人としては俺を絶対に一人にしたくないから、ヘクトールさんを護衛につけるけどそれでも万全を期したいらしい。

 それで今こうして購入した三騎士の一人、ニグレド田中さんに出てきてもらってヘクトールさんが実力を確かめようとしているのだけど……田中さんの圧がすごいな。

 最近女所帯というか、女性にしか囲まれていないから、彼の存在感はとても新鮮だ。

 まるで巨大な岩がそこに存在するかのような圧迫感。


「田中さん。 お互いケガには気をつけてね」


 実力を確かめる為とはいえ二人がケガをするのはよろしくない。

 田中さんが親指をグッとあげてサムズアップしてきた。

 彼、喋らないんだよな。

 喋れないのか喋らないのかどっちなんだろ。

  

 というか田中さんのあの身体ってケガするのかな?

 あとで触らせてもらおう。

 ちなみに今回なぜニグレド田中さんで他の二騎士ではないのか。

 単純に見た目のせいだ。

 田中さんもなかなかのビジュアルをしているけど、他はそもそも町の中で召喚するには危ない見た目をしている。

 

 ルベド佐藤さんはカエルだ。

 めちゃくちゃ毒々しい赤い色をしたカエルさんで、個人的にはとても可愛いと思う。

 まるまるムチムチとしたフォルムをしていて、大きさは五十センチくらいとなかなか大きい。

 クリっとした丸い目は愛嬌がある。

 背中に毒持ちと分かりやすいドクロマークさえ無ければ、ペットとして持ち込めたかもしれないのに……残念。

 個人的には愛らしくて好きだ。


 そしてアルベド萬太郎くん。

 真っ白な悪魔である。

 最早人前に出すことも憚られるほどの見事な悪魔である。

 体長は翼を含めると五メートルはあろうかという巨体。

 剥き出しの肌は筋肉がピクピクと蠢動しており、腕や足、胸のいたるところに目玉がありギョロギョロと視線を彷徨わせている。

 頬付近まで裂けた口のなかには鋭い牙が並び、涎が垂れている様子がなんとも怖い。

 顔には大きな目玉が一つあり、虹彩が真っ赤で瞳孔が十字の形をしている。

 ……こんな見た目だけど性格は信じられんくらいに良い子なのである。

 裏庭の花を丁寧に手入れしてくれたり、スレイプニルに一緒にニンジンをやる時にはおっかなビックリしながらも、ニコニコしていた。顔は怖いけど。


 まあ、こういう状況なので一番見た目が無難なニグレド田中さんに緊急時はお願いするしかない。

 ちなみに三騎士達はマーケットアプリ内にいつでも常駐、召喚出来るので連れていくこと自体は出来る。

 マーケットアプリさんどんどんおかしな進化を遂げていってるなぁ。 



「いくよタナカさん!」


 ヘクトールさんが鋭い踏み込みで田中さんに向かう。

 着ぐるみ対黒い人。

 見た目はシュールだが動きが笑い事じゃない。

 一瞬で間合いを潰したヘクトールさんの拳が田中さんを襲う。

 手加減されていたとはいえ、ヘクトールさんの拳を受けた俺だから分かる。

 あの拳は本当に痛い。

 エメリーさんも避ける一撃だ。

 田中さんはどうするのか……ってええ?

 避けずに受け止めた!?

 鳩尾付近にクリーンヒットしてるのに微動だにしていない!?

 ヘクトールさんは更に連続で同じ箇所に拳を打ち込むけど、田中さんは全く気にした様子が無い。

 最初の一撃は様子見だったのかもしれないけど、今打ち込まれている拳は多分本気の一撃だ。

 聞こえてくる衝撃音が重すぎる。

 本当に大丈夫よね田中さん。


「はぁ、はぁ……え、き、効いてないの? ボク、結構本気で殴ってるんだけど」


 さすがにおかしいと思ったのかヘクトールさん息を切らしながら距離を取った。

 そりゃそうだよな。なんで効いてないの田中さん。

 前にエメリーさんとの試合をしてた時にも思ったけど、ヘクトールさんの拳ってかなり重そうなのに。


 今度は田中さんが動いた。

 いや、動いたといってもゆっくりと腕を上げ、指をヘクトールさんに向けただけなんだけど。

 何をするつもりなのかと思っていると、指先が黒く光った。


 次の瞬間。

 ヘクトールさんが危険を察したのか、その場から一瞬で横っ飛びで移動し、同時に田中さんの指から真っ黒な光線が……レーザーがヘクトールさんが居た場所を貫いた。

 え、レーザー!?

 黒いレーザーは多分最初から当てるつもりは無かったんだろうけど、林に当たらないように射角を少し上に向けていたようで、そのまま空を……雲を貫いていった。


「え、えぇぇぇ!? ち、ちょっとそれはヤバイよボク死ぬよ!?」


 田中さんは首を傾げ、今度は構えを取った。

 何か武術の心得があるんだろうか。

 田中さんが構えた瞬間、ヘクトールさんが息を呑んだのが分かる。

 ヘクトールさんの構えはなんというか、いつでも動けるような軽やかさを感じる。

 それに対して田中さんの構えは、どっしりと腰を落としどんな攻撃にも対応してみせるといった風に感じる。


「……なるほど。 あれは攻めにくいですね」


「そうなんですか? やっぱりエメリーさん達くらいになるとそういうのが分かるんですね」


「ええ、まあ。 タナカさんのあの構え。 どれだけ速く、どれだけ重い攻撃でも受け流してカウンターをしてくるでしょう。 やるなら中、遠距離から崩してから接近戦で止めを刺すべきですが、あのずば抜けた防御力があるからヘクティでは決め手に欠けますね」


 すごいキッチリ考察してくれてるけど、決め手はいらない……。

 実力を見るだけだから強いって分かったなら終わりでいいとおもうんだけどなぁ。


「うふふふ。 でもヘクトールさんの性格だと絶対膝をつかせてやるって思っていそうですね」


「……やっぱりヘクトールさん熱くなってます?」


「ええ、着ぐるみで見えませんけど、楽しそうな雰囲気が伝わってきますね」


 透明でどこにいるか分からないけど、声だけ聞くとアロスフィアさんもちょっと楽しそう。


 田中さんの構えを見て何かを察したのか、ヘクトールさんも構えを変えた。

 拳を腰付近に添え、左手を前に突き出している。

 なんか空手か何かで見たことある。

 正拳突きだっけ?

 右手に力を溜めて一撃必殺を狙っているように見える。

 ……必殺しちゃダメなんだけど。間に入って止めようとしたら巻き込まれそうで怖いから無理。

 成り行きを見守ろう。


 二人の間に沈黙が流れ、見ているこっちが緊張してくる。


 沈黙を破ったのはヘクトールさん。

 まるで滑空でもしているかのように流れるような動きで田中さんの懐に入った。

 正に一瞬。

 瞬きの間に間合いを潰したヘクトールさんの拳に田中さんは反応出来なかった。

 田中さんのお腹に捩じ込むように拳が突き刺さっている。

 衝撃が後方へ突き抜け、裏庭や林にまで衝撃波が及んでいる。

 いや、それ死ぬんじゃ……?


「うっそ……これでも効いてないの?」


 ヘクトールさんの言葉が聞こえた。

 え、効いてないの?

 田中さんは何もなかったかのようにヘクトールさんの腕を掴み、空へ放り投げた。

 何をするのかと思ったら手を手刀の形にして、そのままヘクトールさんの方向へ向けた。

 まさか……?


「え!? ウソウソウソウソ!? ちょっまっ!?」


 黒いレーザーが放たれた。

 いやいやいやいやいや!

 レーザーは不味いって!


「さ、さすがにそれは危ないですね」


 隣からアロスフィアさんの声が聞こえ、ヘクトールさんの周囲で何かが光った。

 ヘクトールさんに向かっていた黒い五本のレーザーが直撃したかと思った瞬間、淡い光に全て弾かれた。

 アロスフィアさんが何かしてくれたみたいだ。

 そのまま落ちてくるヘクトールさん。

 そしてその落ちてくるヘクトールさんに向けて極太レーザーブレードのようなものを用意して待ち構える田中さん。

 ガチで殺しにいってない!?


「た、田中さん!? ニグレド田中さん、ストップ! そこまで!」


 流石にやりすぎですよ。

 最初に言ってたお互いケガしないようにっていうオーダーはどこに行っちゃったの?

 こちらの声に反応して田中さんがレーザーブレードを引っ込めてくれた。

 よ、よかった。


 そのままくるくると回転して落ちて見事な着地をきめる着ぐるみ、いやヘクトールさん。

 なぜか着地の姿勢のまま動かないので近づいてみると、えらく振るえている。


「ど、どうしたんですかヘクトールさん?」


「し、死ぬかと思ったよ……こ、腰が抜けて動けないし怖くて漏らすかと……」


「試合と言ったのにヘクティが全力を出すからですよ。 タナカさんもアレがあなたの試合のレベルと判断してあのレベルに合わせたんでしょうから」


 ん?

 ああ、そういうことか。

 ヘクトールさんは全力だったけど、田中さんとしてはそれが試合としての実力で本気じゃないと思い、それに合わせた実力を田中さんは見せてくれたのかな。

 つまりもっと上があるから多少危ない技でも対処出来ると思っていたと。

 しかしヘクトールさんの全力に合わせられるってことは田中さんも十分強いって事だよな。

 普通に合格でしょ。


「……私の本気でどこまで渡り合えるか分かりませんが、タナカさんは下手したら私より強いかもしれませんね」


「え、エメちゃんより怖かったかも」


 おおう……いやでもこれならマーケットアプリに待機してもらっていざという時には最初に田中さんに出てきてもらおう。

 本当にヤバイ時には三騎士全員出てきてもらえばいい。


「……ふと思ったのですけど」


「うぉう!? 何も見えない所から声が来るとやっぱり驚きますね。 どうしたんですか?」


「お値段で強さが決まると思っているのですけど、あのお値段で三騎士さんがこの強さなのですよね? もっとお高いホムンクルスなどもいたみたいですけど、一番高いのはどれ程の強さなのかとちょっと気になってしまいまして」


「……確かに。 一番高いので三兆ですもんね。 想像もつかないですね」


 三騎士はセット価格+タイムセールで一億五千万だったけど、一人五千万の強さなのかそれとも一億五千万の強さなのか。

 五千万の価値であの強さなら三兆は星の一つでも破壊してみせそうで怖い。

 購入することはまず無いだろうなぁ。そもそもそんな金を用意出来ないし。


 いやでもこれで雑魚な俺が一人になってしまった時の緊急時の護衛も手に入ったし、安心してお出かけ出来るよ。

 しかしニグレド田中さんでこの強さ……あとのルベド佐藤さんやアルベド萬太郎くんはどれ程のものなんだろうか。

 ……過剰戦力かもしれない。

※今さらですが、この作品には作者の悪ふざけやネタや性癖が多分に含まれています(*´∀`*)

 ご注意ください(*´∀`*)

 共感出来てしまった貴方はこちら側の人間かもしれません(・ω・*)

 ようこそ変人の世界へ(*´∀`*)


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― 新着の感想 ―
[一言] 取り敢えず何だ。うん。一瞬、あれ?エイプリルフールってもう終わったよね?とか思ってしまったw
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