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二十話


 私、メリケス・リンドバーグは実力のある魔法使いだと自他共に認めている。

 アトレイユ公国内だけで言えば十指に入るのではないだろうか。

 年齢も三十歳を過ぎ体力、魔力共に充実し今が最高に脂がのっている時期……まさに絶好調だ。

 どんな者が相手でも負ける気がしないし、竜種ですら単独で追い払ったこともある。

 そんな私に国から国敵であるアロスフィア・アルルコルの討伐に協力するように要請が来た。


 昔話で語られる伝説の化物。

 かつてアトレイユ公国で信仰されていた聖獣イグニファスを殺害したと言われ、更に過去に遡れば混沌の神をも倒したとされる。

 本来なら断るべきだった。


 しかし今回は公国も本気で戦力を投入しアロスフィア討伐に動いていた。

 神の祝福を受けたとされる聖騎士クリフ・アストリオン。

 Sランクに近い実力があり、公国から授けられた聖剣を持てばSランクを超えるとさえ言われている公国最強の実力者。

 聖剣を持てばあらゆる傷を一瞬で癒し、疲れる事を知らず、竜の皮膚ですら紙を切り裂くが如き切れ味を誇り、所有者の魔力を莫大な程に高めるという。

 そこに私が加わればどんな化物であろうと負ける要素など無い。

 これでアロスフィアを討伐出来れば、富も名声も思うままだ。



 ………………そう思っていた。

 甘かった。

 今はただ自惚れていた過去の自分を全力で殴り倒したい気持ちで一杯だ。


 アストリオンの命令に反応して私を中心として、超高位魔法エクステンションの発動を開始した。

 対象を異空間に閉じ込め、空間内に存在するあらゆるものを消滅させるこの世界において人間に可能な最強の魔法。

 これを受けて生きているものなど存在しない。

 詠唱に多少の時間はかかるが、その時間を護るためにアストリオンがいる。

 それを本人も分かっているから剣を抜き、あの化物……アロスフィアと対峙していた。


 初めて姿を見たアロスフィアは恐らく呪いによる影響か、とてもおぞましい生き物に見えた。

 人の姿をした化物。

 見ているだけで心を掻き乱される気持ちの悪さ。

 吐き気すら催すそれは、従者らしきメイドの女に何かを話しかけると微笑んだ。

 私達が今まさに殺そうとしているのに何を余裕を見せていると思った。

 そしてその数瞬後、私達は……アトレイユ公国の兵士達の全てがいつの間にか別の空間にいた。


 決して油断などしていない。

 アロスフィアの一挙手一投足を見逃すまいと誰もが集中していた。

 決して魔法を発動する素振りなど見せていなかった。

 それだと言うのにいつの間にか異様な空間に引きずり込まれていたのだ。

 どこを見渡しても黒。空も大地も無いのになぜか見えない足元が存在する。

 まるで宙に浮いているように見える。

 どこまでも続く真っ黒な空間に私達は放り込まれたのだ。

 今回の作戦にはおよそ八万近い兵士達が動員されている。

 その全てがこの空間に引きずり込まれているのだろうか?

 

「以前から暗殺者をちょくちょく送ってこられていたみたいですが、実害も無いので放置していましたけど……どうもそれであなた方は勘違いをされたみたいですね」


 本来なら聞き惚れるような美しい声が、呪いによって耳を塞ぎたくなるような不快感を覚える。

 これが奴の声なのか。

 アロスフィアは一体なんの魔法を使っているのか身体をゆっくりと浮き上がらせ四メートル近く昇ったところで上昇を止め、言葉を続ける。


「私が初めて……そう、私の長い生の中で初めてその存在を愛しいと、心の底から欲しい思った人……うふふ、愛していると言っても過言ではないあの人をあんなにも傷つけるなんて。 許せる筈がありませんよねぇ……」


 なにやら愛など口にしているが、あれは愛の言葉などではない。

 呪いによる影響など関係無い。

 愛を語る者があんなにおぞましい笑みを浮かべるものか。


「アストリオン! あの女を速く殺せ! 足止めでもいい! あと一分持ちこたえればエクステンションを放てる!」


 私の声に反応したのか、はたまた同じ考えにいたったのか。

 それは分からないがアストリオンが全兵士に告げた。


「総員! 攻撃開始!」


 多くの兵士を用意したとしても、相手はたった一人。

 波状攻撃をするにしても一度に攻撃出来る数はたかが知れている。

 遠距離から数多くの弓矢やエクステンションの発動に関わらない者達の魔法がアロスフィアへと向けられた。

 アストリオンも聖剣から魔力を迸らせ、極大な閃光を放った。

 エクステンション程ではないにしても竜種でも一撃で仕留められる。間違いなく最強の一角を崩す技だ。


 一分。

 短い筈なのに永遠にも思えるその時間。


 何度となく振るわれる聖剣の閃光の嵐。

 その間断を埋めるように放たれる剛弓による一撃や魔法の数々。

 効いているのかどうかも分からないような状況になっても誰も手を止めない。

 止められないのだ。


「その存在を消し去ってくれる! エクステンション!」


 魔法や聖剣の攻撃によって視界が塞がれているが、アロスフィアがいた空間を広範囲に指定し包み込む。

 空間内で超魔力が生まれ万物を消滅させる黒い渦が形成されていく。

 問題なく発動し、私達は勝利を確信した。


「この程度で私を倒せると本気で思っていたのですか?」


 エクステンションの中から。

 本来なら消滅の魔法によって消え去っている最中の筈の人物の声がハッキリと響いた。

 次の瞬間、空間が軋みガラスの割れるような音と共にエクステンションを包む空間が弾けとんだ。

 中から掠り傷一つ無いアロスフィアが悠然と現れた。


「バカな! 聖剣や弓矢は間違いなく直撃していた! エクステンションも間違いなく発動した! 何故生きている!」


 アストリオンの言葉は尤もだ。

 あれだけの攻撃で傷一つ、いや埃一つついていない。

 おかしい。

 そんな生き物が存在する筈がない。


「うふふふふふふ。 貴方達が弱いから、ですよ。 私は優しいから、貴方以外は優しく殺してあげるわね。 ふふふ……エクステンション」


 黒い空間が軋み始めた。

 まさか。

 まさかまさかまさかまさか!

 エクステンションは本来異空間を形成し対象を閉じ込めて中に存在する対象を完全に消滅させる魔法。

 この黒い空間全てがエクステンションの中だとしたらアロスフィアに向かう攻撃も全てが消滅させられていたのか?

 そんなバカな……。

 それならばこの空間に引きずり込まれた時点で敗けではないか。


「悉く、消えなさい」


 私が最後に見たのは悪魔の残酷なまでの笑みとその悪魔に捕まったアストリオンの姿。

 そして一瞬にして消滅していく兵士達の姿だった。 





※ちょいちょい6000~8000文字とかになったりしてるんですけど、見にくいですかね(o゜з゜o)?

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