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9話 ミリア独自のもみほぐし

「本日からはミリアさんにもマッサージをやる側になっていただきます」

「はいっ!」


 マッサージをされまくって二週間。

 痛気持ちいい毎日を送って、身体がすこぶる調子が良い。

 だが、やはりやってもらっている間は(特に足裏のグイグイ押されるやつ)悶絶との戦いだった。


 私は使用人のみんなともずいぶん打ち解けてきていて、仲良くなっている。

 今度はみんなを気持ちよくさせる番だ。


「ミリアさんはまずは足首周りから担当していただきましょうか」

「あ、はい……」


 足首まわりからギュッと握られて絞られるように膝方面へグイって動かされるのがやたら気持ちよかった。

 だが、これに関してだけはもっと気持ちよくなれそうな方法を知っている。

 シャルネラ様からマッサージを強要されていたときに、どうやったら満足していただけるだろうかと練りに練った揉み方がある。


 足首のほぐしをすることに変わりはないだろうから、私流のやり方で揉んでみることにした。


「ひゃっ!」

「あ、申しわけございません」


 私がグイッと足首を握った瞬間に使用人が悲鳴をあげてしまった。

 これは明らかに私が独自のやり方で握ったからいけなかったのだろう。

 すぐに手を止めて謝ったのだが……。


「いえ、そのまま続けて欲しいです」

「え?」

「あの……あまりにも気持ち良過ぎて、つい声が出てしまっただけです」

「そ、そうでしたか。では……」


 私は再びグイッと絞るように握った。


「ひゃっ……」


 非常に気持ちよさそうな顔をしてくれている。

 今度は構わずに揉み続けた。


「ミリアさん……、いったいどうやって揉んでいるのですか? その……、今まで感じたこともないような気持ち良さと開放感で……」

「「「「「「「「「「なんですって!?」」」」」」」」」」


「え……えぇと、マッサージにとても厳しかった人に喜んでもらうように毎日研究をしていたらできるようになった揉み方で……」

「「「「「「「「「「次、私!!!!」」」」」」」」」」


 この日、私は結局全員の足首を揉むことになってしまった。

 シャルネラ様は厳しかったけれど、きっと私を一人前のマッサージができる女になるように育ててくれていたのかもしれない。


「ミリアさんに厳しくしていたお方、きっと今ごろ困っているでしょう」


 メメ様がクスりと笑いながら、そう言う。


「そんなことはないと思いますよ」

「どうでしょうね。ミリアさんは修行する必要などないくらいの完璧な使用人ですし。どうしてわざわざ修行させようとお考えになったのか、当主の方に疑問を抱きます」

「でも、今こうして楽しい時間を過ごせていますし、私は幸せですよ。それに、メイクはまだまだ練習しないとですし」

「そうですね。はぁ、生き返るような気持ち良さでした。さぁ、みなさん。今度は私たちがミリアさんに特別スペシャルフルコースをして差し上げましょう!」

「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」


 身体中の至る部分を丁寧に揉み解してくれた。

 だんだん痛くて悶絶というよりも、気持ち良過ぎて極楽という感覚に変わっていくようだった。


 ところで、シャルネラ様のことを思い出してしまったけれど、彼女たちは元気にやっているのだろうか。

 伯爵邸に戻りたいという気持ちは全くないが、何年も一緒だったから気になる。

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