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69話

 王宮で叙爵式を受け、私は正式に子爵になった。

 同時に、レオンハルト様との婚約も発表した。入籍はミレニガムへ移動する当日。

 全てを報告したのだが、使用人の仲間たちは誰一人驚かなかったのである。


「ミリアさんと主人様が恋仲だったことは知っていましたよ」

「え……?」

「隠しているようでしたが、バレバレです」

「むしろ、一生懸命隠そうとしているミリアさんが可愛かったので、そのままにしておいたんです」


「な……いつから気がついていたのです?」

「いつって……。ミリアさんが主人様と遠乗りする少し前?」

「あ、私は帰ってきてからですよー。ミリアさんが主人様を名前で呼んでいたときに気がつきましたねー」


 そんなに早くからバレていたなんて想定外すぎる……。


「黙っていてすまなかったな。ミリアの叙爵とともに、今後は私とミリアはミレニガンという街の領主をすることになった。つまり……、ここを離れミレニガンを拠点とし生活することになる」


 使用人たち全員が沈黙し、目が泳いでいた。レオンハルト様は構わずに話を続ける。


「今後はこの公爵邸は別邸となるが、今までどおり使用人たちの訓練の場として使ってもらいたい。なお、ミレニガンで使用人を続けたい者がいれば、もちろん受け入れる。しばらくはまだ公爵邸で過ごすから、それまでに今後どうするかをそれぞれ考えてもらいたい」


 その日、私は誠心誠意を込めてお菓子を作った。紅茶も用意して、その夜、使用人たちに振る舞ったのだ。


「今まで公爵邸でたくさんのことを学びました。使用人のみなさんも優しく、本当に楽しい使用人ライフを送れたと思っています。私にできることはこれくらいしかありませんが、召し上がってください」


 使用人たちでのお茶会を始め、一人ずつお礼を言って回った。これでもう会えなくなるというわけではないのだが、毎日一緒に働いてきた人たちと別の道へ進むのは、寂しくなる。

 最後に使用人リーダーのメメ様と話をした。


「まずは子爵への叙爵おめでとうございます。ミリアさんなら、いつかはこうなると思っていましたよ」

「メメ様たちからたくさんのことを教わったおかげですよ」


「ふふ。ミリアさんはもっと自分に自信を持ちましょうね。ここに使用人として配属されたときから驚かされてばかりでしたから」

「褒めすぎですよ」


 最後まで公爵邸では褒めて伸ばしましょうシステムが全うされた。

 ミレニガンへ行ったら再び厳しい世界で戦うかもしれないし、頑張らなければだ。


 だが、メメ様は意外なことを言ってくるのだった。


「いえいえ。何度も言いますが、公爵邸の使用人教育は王都で一番厳しいと有名ですからね。前にも言いましたが、疑っていましたね? これは本当のことですよ?」

「え?」


「やはり今まで気がつかなかったのですね……。まぁミリアさんらしいですので良しとしましょう。ミレニガンへ行っても、使用人としても子爵としても活躍していくことを応援します」

「あ……ありがとうございます! でも、これからもまだまだ知らないことが多いですし、変わらず勉強していきます」

「ふふ。世界一の使用人と言われそうですね」


 またまたお世辞を……。

 いや、本当のことなのか。世界一なんて目指すつもりはない。

 レオンハルト様が快適に生活できる場所を作りお世話をする。それが私たち使用人の仕事だ。

 どうせなら、レオンハルト様に世界一幸せになってもらいたい。そのためにこれからも私は頑張っていく。

 お茶会も終わり、言いたいことやお礼は全部全員に伝えた。

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