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64話 Side

「他にもシャルネラ嬢には聞くことがある。以前、レオンハルトの公爵邸前でうろついていたな?」

「え……それは……」


 あの日の出来事まで聞かれるとは想定外だった。これは偽りの手紙どころの話ではない。

 下手をすれば、国外追放……。もしくは強制労働なんてことも……。


 なんとかして誤魔化す。


「どうなのだ⁉︎」

「は、はい。いました。ミリアさんにどうしても戻ってきて欲しかったためです。しかし、どこかへ遠乗りしているそうで、門番の方がそう言っていたため仕方なくウロウロと……」


 嘘はついていない。

 黒服の男たちと会った別の日にも公爵邸の近くをウロウロしていたのだ。使用人たちが連れ去られているのか確認したかったために。


「私は別の日の話を聞いている。すでに話は多方面から聞いているのだが、それでも誤魔化すか?」

「シャルネラよ。いったいなにをしたのだ? 国王陛下がここまでご立腹なのは初めて見たぞ……」

「ええ……アルバス様、助けてください。私はなにも知りません」

「黒服の男と言ってもまだ誤魔化すか?」

「ひっ!」


 もうダメだ。

 誤魔化しきれないがなんとかしてこの窮地を脱出しなければ、私の念願だったスローライフも水の泡。

 せっかく誤魔化して誤魔化して、誤魔化しまくってアルバス伯爵と結婚するところまで辿り着いたのだ。


 あともう一歩なのだから、頑張れ私っ!


「……これは捜査協力だ。正直に話せば先ほどの件の情状酌量の余地も考えなくはないが」

「本当ですか⁉︎」

「考えよう」


 陛下はまだ、『うん』とは言っていない。嘘ばかりついてきた私だからわかることだが、これは陛下が嘘をついている。

 私に白状させて、あとで処罰しようと企んでいるに違いない。


 だが……。このままではいずれバレてしまう。

 どうしたら良いのかわからず悩みに悩み、しばらく沈黙が続いた。


「捜査協力というのは本当だ。少なくとも、国の役に立ってもらいたい」


 今度は本当のことを言っていると思う。私でも国の役にたてる?そう思ったら、喋らずにはいられなかった。

 私だって、認められたい!


「実は……」


 私は全てを話してしまった。

 黒服の男たちと出会い、貴族令嬢たちの情報を流し、報酬としてミリアさんを公爵邸から伯爵邸に連れ戻してくれることも。


 さらに、言いふらしたことがバレれば私の命が危ないことも伝えた。もちろん、こうなってしまったら黒服の男たちは捕まってくれないと困るため、アジトの場所も喋った。


 さすがにアエル王女の情報を流したことまでは黙っておいたが、これでも充分国に貢献できたと思う。

 今まで言えなかったことを全て吐き出し、スッキリした。

 むしろ、勇気を出してこれだけ情報を伝えたのだから、褒めてほしい。


 国に大いに貢献できた。いや、むしろ国を救った?


 これをキッカケにログルス子爵に出した手紙の件は無罪になって、私にも爵位の授与式があっても良いのでは?

 だんだん気分が良くなってきた。陛下も恐いくらいに笑みを浮かべる。


 一周回って恐いとはこういうことなのだと思い知ることになってしまった……。


「ぶぅぁあああっかもん!」

「ひぃぃぃ!」


 笑顔のまま怒鳴るのはやめてほしい。本当に恐い。


「どうせシャルネラ嬢のことだ。貴族令嬢だけでなく、私の大事な娘、アエルの情報も流したのだろう⁉︎」

「ひいいいいいいいいっ!」


「やはりそうか! 愚か者め! だが、約束は守る。シャルネラ嬢の情報が本当であれば、早急に捕らえることができそうだ! それまではそなたの身の安全も考慮し、アルバス伯爵と共に王宮に残るが良い」

「ありがとうございます!」


 あぁ良かった。散々怒られてしまったが、最終的には国を救った英雄になれそうだ。


 少しだけ使用人の仕事ができない女だと思われていても、この評価は絶大だろう。念願のスローライフまであと少しだ。


「ただし、王宮にある地下牢で過ごせ」

「「え……?」」


「本来なら即処刑だ。ミリア殿、レオンハルト君、そして我が娘アエルまで危険な目にあわせようとしたのだからな。貴重な情報提供で処刑だけは大目に見る。だが、今後まともな生活が送れるとは思うな。そう考え地下牢で充分反省していろ」


 そんなことだけで処刑だなんてあんまりだ。私もアルバス様も、周りにいる護衛にあっという間に拘束され、地下牢へ連れていかれた。


 こんなことになるなんて……。

 ミリアさんが伯爵邸で使用人を続けていたらこんなことにはならなかったのに……。


 全てはアルバス様がいけない。ミリアさんを公爵邸で修行させるだなんて言ってから全てがおかしくなってしまった。

 私は、地下牢の中でひたすらアルバス様に文句を言い続けた。


 だが、アルバス様は私のことをまるで相手にもしてくれず、話すら聞いてくれなかった。

 そんな……。

 私、このあとどうしたらいいのよ……。

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