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56話

「「「「「「「「「「おかえりなさいませ!」」」」」」」」」」


 久しぶりの公爵邸。

 無事に帰ってきて、ガイムさんと使用人たち、さらには警備や門番含む全員に出迎えられた。長旅で色々とあったが、ようやく帰ってきたという気分だ。


 ここがマイホームなんだなぁと改めて思う。

 真っ先に怪我をしてしまった馬の状態がどうなのか確認したが、無事に回復できたそうでなにより。


「お風呂の準備を済ませてあります。長旅の疲れをひとまず洗い流してきてください」

「ん。助かる。ミリアよ、先に使うが良い」

「へ⁉︎ あの浴場はレオンハルト様専用のものでしょう?」

「構わないよ」

「本当に良いのですか?」


 執事のガイムさんですら、レオンハルト様専用の浴室は使ったことがない。当然使用人リーダーのメメ様もだ。

 念のため、二度聞いてしまった。


「長旅で疲れただろう? 普段の湯浴みよりも、ゆったりとできるから使ってくれ」

「ありがとうございます!」

「……はぁ。では私はミリアさんの着替えを用意しておきますね。すぐに浴場へ行ってください」


 メメ様にまで手間をかけさせてしまい申しわけなく思う。それにしても、使用人たちがざわざわとしていた。

 おそらく、私が浴室を使わせていただくという、今までだったらありえないようなことをしてしまうのだから、疑問になったのだと思う。


 このあとレオンハルトも使うわけだから、すぐに浴室へ向かった。

 湯浴みと違い、足を思いっきり伸ばしてゆったりと湯船に浸かることができる浴場。何度か掃除をしたことはあるが、実際に使ってみると想像以上に疲れが吹っ飛ぶ。


 毎日長距離乗馬をしていたため、足もおしりも腰もパンパンの筋肉痛だった。

 それがすべて湯船にとろけていくように疲労が解消されていく……。浴場の向こう側からメメ様の声が聞こえてきた。


「着替えはこちらに用意しておきましたよ」

「ありがとうございます」

「いえ。それから……、言葉遣いに気をつけてくださいね。バレてしまいますよ」

「言葉遣い?」

「無意識に名前で呼んでいたでしょう?」

「名前?」

「主人様に対してレオンハルト様と……」


 メメ様はクスクスと笑っている。怒ってはいないようだけれど、私がやらかしてしまったことをようやく理解できた。


「あああああああっ!」


 言われるまで気がつかなかった。

 うっかりしていた。長旅で、レオンハルト様のことを名前呼びしていたことに慣れすぎてしまっていたのだ。


 もしかして、さっき使用人たちがざわざわしていたのもそれが原因だったのかもしれない。ただでさえレオンハルト様と二人での旅だったのだから、そういう間柄に発展していたと思われる可能性だってある。

 一番気をつけなければいけないことを忘れていた……。


「ふふ。よほど深い仲になったのでしょうね」

「違います違いますっ! ちゃんと一線は守っていますからっ!」

「ふふふ、可愛らしい。あとでゆっくりと話を聞きましょう」

「あわわわ……」

「今はゆっくり休んでくださいね。うっかりするほど疲れているのでしょう」


 公爵邸に妙な監視が入っていることや、なにかしら危険なことがあるかもしれないということも思い出した。そのため、使用人のみんなには念のために恋仲になったことを黙っておくことも。


 このあと、どうやって弁明すれば良いのか悩みに悩んだ。

 そしていつの間にか、浴槽内で目を瞑って寝てしまった。

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