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53話

「まさか……全ての部屋の掃除をたった一日で……」

「さすがミリアだ」


 張り切ってせっせと掃除をさせてもらった。アルバス伯爵邸で使用人をやっていたときと同じくらいの仕事量だったと思う。


 久しぶりに思いっきり朝から晩まで掃除三昧をさせてもらった。さすがに多少の疲れはあるが、嫌な気分ではない。

 むしろ、お父様の屋敷が綺麗になったから嬉しい。


「ありがとうミリア。おかげで屋敷の中の空気も綺麗になったような気がするよ。本当に感謝しかない」

「いえいえ。でも、食事の用意まではできなくて申しわけありません」

「レオンハルト公爵様が作ってくださったよ」

「え⁉︎」

「なにを驚いている? 私とてなにも出来ないわけではないぞ」


 そんなに失礼なことまでは考えていなかったが、驚いたのは間違いない。

 レオンハルト様は公爵という立場で、毎日国に関する仕事をしていて忙しい。とてもじゃないが、使用人がやるような仕事をする暇などないのだ。だからこそ、サポートという形で私たち使用人や執事がいる。


 食卓テーブルに用意された料理を見ると、どれも美味しそうなものばかり。これをレオンハルト様が一人で……。


「食材があまりにも素晴らしいからな。ミリアには到底及ばないが、作ってみた」


 盛り付け方も綺麗だし、丁寧に作ったんだなということが伝わってくる。さっそくいただくことにした。


「美味しい〜! 美味しいですよ!」

「そうか、作ってみて良かった」

「レオンハルト様は料理が上手なのですね!」

「ずっとやってみたかったのだよ。公爵邸ではみんながいる手前、作るわけにもいかないからな……」


 こんなに美味しい料理ができるのだし、是非とも使用人のみんなにも食べてもらったらどうだろうかと思ってしまう。むしろ、私がまた食べたいと思ってしまった。


「いつ料理を覚えたのですか?」

「ガイムからコッソリと教わったことがあってな」


 またまた名執事ガイムさんだ……。ガイムさんに苦手なことや出来ないことってあるのだろうか。


「こちらに来たおかげで念願だった料理にも挑戦することができた。ログルス子爵様に感謝します」

「なにをおっしゃいますか。満足なおもてなしもできず、むしろ家のことを手伝っていただいてしまって……。お礼を言うのは私のほうですよ」


 二人とも笑顔だ。

 まだ出会って間もないのに、お父様とレオンハルト様はすっかり仲良くなっていた。良い関係でいられそうな気がする。


 なかなかここまで来ることは難しいけれど、一年に一度くらいは会えるようになれたら嬉しい。


「そういえば、これは二人に話しておいたほうが良いかと思うことがありまして」


 お父様が思い出したかのようにふとつぶやき椅子から立ち上がった。一度部屋から出て、すぐに戻ってきた。数枚の手紙のような物を手に持って。


「アルバス伯爵様から手紙が届いていてね……」

「え?」


 私はお父様から手紙を受け取った。


「読んでもらえれば分かると思う……」


 嫌な予感しかしないが、手紙を読んでみた。

 内容としてはこうだ。


・ミリアが使用人として再び伯爵邸に仕えるようログルスが説得しろ。

・公爵邸は厳しすぎる環境にあるからミリアの精神が参ってしまうから伯爵邸で保護したい。

・シャルネラが深く反省していて、仕事量の割り振りの見直しもする。

・協力しなければ今後、ジェールリカ村に対し物資の援助も売買も取りやめにする。


 脅迫文ではないか。しかも、しっかりと見たらわかるのだが、この独特の字体はシャルネラ様が書いたものだ。


「これ、いつごろ届いたのですか?」

「速達ではない馬車通達で三日前だよ」


 ということは、あの社交界が終わったころに出した手紙ということになる。使用人を雇うことを禁止されている状況なのに、この手紙を書いたということになるが……。

 このことは、ハッキリと言ったほうが良い気がした。

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