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47話

「行ってきます」

「「「「「「「「「「お気をつけて」」」」」」」」」」


 ついにジェールリカ村へ出発する日がきた。

 乗馬の練習もバッチリだ。馬との絆も深めた。愛着がわきすぎて、練習相手の馬を、『ライトちゃん』と名付けてしまっている。


 毎日一緒にいてすっかり仲良くなり、今では馬の世話もほぼ私が担当してしまうくらいだ。

 レオンハルト様は、可愛い名前だと気に入ってくれた。今後はライトと呼んでくれるそうだ。


「ミリアよ、では行くぞ」

「はい!」


 レオンハルト様と私はそれぞれの馬に乗って公爵邸の門を出た。


「予定通りに王都を出たら高速で走らせる。大丈夫か?」

「はい。そのために毎日乗馬レッスンをさせていただいたのですから」

「だが、見慣れた敷地内と見知らぬ土地を走るのではわけが違う。気は抜かないようにな」

「はい!」


 レオンハルト様は、乗馬に関しては本当に安全を第一に考えている。

 私もレッスンを受けたうえで、今まで以上に安全に気を配るようになった。王都内は人もたくさんいるから、慎重に歩行で進んでいく。気をつけていたのだが、それでもトラブルはつきものだ。


「ひゃ!」

「ミリア! ぐ……!」


 レオンハルト様の馬が滑って転倒してしまった。

 前方は気をつけていたはず。


 だが、どういうわけか、突然なにか妙な液体が地面に出てきたのだ。いくら歩行とはいえ、目の前に突然現れたら、避けきれなかった。


 私が乗っているライトちゃんも滑ってしまい、せめて怪我は絶対にさせないように絶妙な手綱操作で窮地を脱出する。ギリギリ転倒は阻止したが、私はさすがに体勢を崩し、落馬した。


 だが、ガイムさんに護身術の応用を習ったおかげで、しっかりと受け身をとることができた。


「大丈夫ですか⁉︎」

「私は大丈夫だ。それよりもライトを!」

「は、はい!」


 すぐに立ち上がり、興奮気味になってしまったライトちゃんをなだめることに全力を注ぐ。もしこのまま暴れてしまって関係のない人たちに危害を加えてしまったら大事件になってしまうからだ。なにより、馬のことが心配である。


「大丈夫。大丈夫だから……」


 ライトちゃんの後方には行かないようにして、何度も撫でて落ち着かせる。ようやく冷静になってくれたため、レオンハルト様に乗っていた馬の元へ急ぐ。


「転倒の衝撃で馬が前足を怪我をしてしまった。苦しそうだし出血が……」


 レオンハルト様は、カバンの中から包帯を取り出し、慣れた手つきで手当てをしていく。

 馬も暴れることはなかった。普段からレオンハルト様に懐いているから、応急処置してくれているのだと分かってくれているのだろう。


「これでひとまずはよし……と」

「優しいのですね」

「私の大事なパートナーだから当然だよ。だが、このまま遠乗りは無理だ。ガイムに連れて帰ってもらい、馬に休養を与えなければ。それにしても……」


 馬が転倒してしまった原因の地面を、レオンハルト様がジロリと見る。


「これは油か。なぜ地面に撒かれた……」

「突然現れたのですよ……」


 レオンハルト様は不穏な表情で考えているようで、ライトちゃんの顔を撫でてから乗った。

 同時に、うしろから付いてきていたガイムさんが駆けつけてくる。


「大丈夫でございますか?」

「あぁ。だが、私の乗っていた馬が負傷してしまった。ミリアよ。あとのことはガイムに任せ、私たちは早急に王都を出る! ここは危険かもしれない」

「は、はい⁉︎ どうするのですか?」

「ライトに二人で乗って向かう」

「ほえ⁉︎」


 レオンハルト様が真剣そのものだった。

 早く乗れと言うため、私は有無を言わさずライトちゃんに乗り、手綱はレオンハルト様が握る。

 え……と、私の背中とレオンハルト様が密着状態ですけれども⁉︎

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