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39話

「主人様の部屋を掃除、管理するには本来三人で担当します。それを一人で午前中に終わらせてしまったのですよ。どうやったらこんなにも素早く通常の規定時間までに終わらせられるのか……。本日はミリアさん一人で作業ですから、夕食までに終わらせられれば良かったのですよ」

「そうでしたか……。どうりで午後の作業の指示がなかったのですね」

「ミリアさんは仕事の完成度は以前と変わらずに作業スピードも上がっていますね。これならば、どこで使用人をやっても重宝されるでしょうね……」

「他に行くつもりはありませんよ?」


 行くわけがない。レオンハルト様と交際をしているのだから。ずっとここにいることになると思う。

 もちろんそんなことは言えないが、メメ様はなぜかフッと笑った。


「そうであって欲しいですね。それにしても社交会に出席されてから、また一段と素晴らしい使用人になられましたね。乗馬レッスンもそうですが、むしろ無理をして頑張っているのではないかと心配です」


 やっていることは修行期間のときと特に変わっていない。乗馬に関しては目的があって覚えたいだけで、それが使用人業務にも繋がってくるならば、なおさら早く覚えたいと思う。

 掃除も無理はしていない。レオンハルト様の部屋だから特別に綺麗にするというわけではなく、どの部屋も同じようにやらせていただいている。

 修行期間のときと変わったと言えば、やる気がさらに増えたことと、もっともっと覚えていきたいと思っているくらいだ。

 メメ様が心配そうにしながら私に視線を向けてきた。


「無理はしていませんので、午後の仕事もください」


 私はウキウキしながらメメ様におねだりするように頼み込んだ。はぁっとため息をはくメメ様。


「ミリアさんにだけ仕事量を多くさせるわけにはいきませんよ」

「うーん……やっていて楽しいですし。昼ごはんのあと、なにもすることがないほうが困っちゃいます」

「左様ですか……。旦那様に確認をとってからになりますが、本日の買い出しに同行しますか? 今日は私が担当ですので」

「良いのですか?」

「はい。練習も兼ねて、馬の操縦をミリアさんにしてもらいます。旦那様からの報告では、すでに馬車の操縦に限り、補助付きならば大丈夫だと言われていましたので」


 これはまたしても、ご褒美だ。

 早く乗馬に慣れたいと思っているし、ゆっくり走らせる馬車なら昨日の段階でできるようになった。メメ様も一緒にいてくれるなら、安心もできる。


「ぜひ、お願いします!」

「ふふ……、そんなに笑みを浮かべるなんて。こんなに楽しんで使用人業務ができる人も珍しいです」


 それは、褒めて伸ばしすぎる公爵邸で仕事をしているからだ。どういうわけかみんなが必ず褒めてくれる。

 アルバス伯爵邸でやっていたころは、褒められることが一切なく、やって当たりまえの日々だった。

 やっていることは同じことのはずなのに、今のほうがやる気がみなぎってくるのだ。

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