35話
約半年ぶりくらいの更新になってしまい大変申し訳ございません!!
完結まで執筆済みなので、このあとは週5回ほどの更新(時々休載日あります)で進みます。
なお、半年前と執筆スタイルが大きく変わっているため、以前とは違う表記をしている箇所がいくつかあります(!?→⁉︎など)が、ご了承ください。
「ミリアさん。なにか良いことでもありましたか? ずいぶんと幸せそうですが」
「ひゃ! なななっなんでもありませんよ」
風呂あがり、メメ様が私の髪の毛を丁寧にとかしてくれている最中にふと、そんなことを聞かれてしまった。レオンハルト様との交際を内緒にすると誓った翌日、さっそくメメ様にバレてしまったか。
嘘をつかない範囲で、内緒を貫く。
「見習いでなく、みなさんと同じように使用人生活を満喫できているからですよ」
「ふふ……。ミリアさんは本当に使用人を楽しんでいるのですね」
「そりゃあもう……。こんなに素敵な人たちに囲まれて毎日を満喫できていますし。最初は恐かったですけれど、夜のマッサージも欠かせないなと思うようになりましたから」
「思い返してみれば、マッサージの初日は悲鳴ばかりでしたね」
当時はなにをされるのかわからず、おまけに足裏や身体をグイグイと押されたのだ。あのときは恐怖だったな……。
「激痛の連続でしたから……。今は痛気持ちよくて癖になってます」
「それは良かったです」
「本当に皆さんに感謝です。ここで毎日ずっといられると思うと嬉しいのですよ」
「いえいえ、ミリアさんが来てから、前より一層公爵邸に活気が出ましたよ。使用人リーダーとしても感謝します」
感謝されるほどのことをした覚えはないんだけどなぁ。さすが褒め殺しで伸ばしていく公爵邸使用人システムだ。
「前回の社交界でもものすごい評価をもらい、ミリアさんの噂が貴族界隈全体に轟いているそうですからね。これはミリアさんも今後覚悟しておく必要があるかもしれません」
「か……覚悟……?」
「まず、縁談の話が飛び込んでくるかと思います。お茶会の招待もすでに何件か公爵邸に届いているのですよ」
「へ?」
縁談の話は困るが、お茶会の招待は嬉しい。今まで誘われる機会なんて公爵邸以外では全くなかったし、世間を全くと言って良いほど知らないのだ。
勉強という意味でも、いろいろな人と関われる機会をもらえているのは有りがたいと思った。
「お茶会に関しては休みの日と合えば参加しても良いのですか?」
「もちろんですよ。あとでミリアさんに届いている招待状や手紙類を明日の朝にでもお渡しするつもりでしたが、今見ますか?」
「はいっ!」
しばらくして、メメ様が戻ってきた。
メメ様は手紙を何枚も持っている。その数、二桁はありそうだった。
「これで全部ですね」
「ありがとうございます」
私はワクワクしながら一枚づつ目を通す。お茶会というから令嬢同士で和気あいあいと楽しむようなものかと思っていた。
だが、招待してくれている差出人が、どれも侯爵、公爵、王族だ。社会経験という理由で参加するには、ハードルが高い気もする。
「ずいぶんと悩まれているようですね」
「はい……」
「これだけ多くの招待に全て応じることは無理があるでしょう。もしもミリアさんがよろしければですが、この中でおすすめの招待を選びましょうか?」
「ありがとうございます! 助かります」
お茶会関連の招待状だけをメメ様に手渡す。
縁談関連の手紙に関しては、一度遠くの領地にいるお父様のところへ届けるつもりだ。縁談は全て断りたい旨とその理由を付け加えて……。
お父様には、レオンハルト様と交際を始めていることを伝えておこうかと思う。
「そちらは?」
「縁談関連です……」
「すごい人気ですね」
「全部断るつもりなので、申しわけない気持ちでいっぱいです……」
お父様に伝えてからになるため、返信はかなり先延ばしになってしまうと思う。待たせてしまうと悪いから、一度お父様に確認してから再度手紙を送ることにした。二度手間になってしまうが、これが一番相手にストレスを与えずに済みそうだと思う。ただ、あくまでこのような場合どうしたら良いのかわからないため、メメ様に相談した。
「良いと思います。むしろ、断るべき……こほんっ。ただ、今後縁談の話を断り続けたいのであれば、その旨も伝えて許可を得たほうが、後々楽になるかと思いますよ」
「なるほど」
「ミリアさんの家庭環境にもよるかと思いますので、こればかりは私はハッキリとは言えません。しかしながら、最近は政略結婚よりも、当事者同士で縁談を進めていく傾向が強いですね。ミリアさんのご家庭もそうだと良いのですが」
「うーん……。何年もご無沙汰してしまっているので……」
「ミリアさんのお父様はどこにいるのでしょう?」
「ジェールリカという村です。」
「あぁ……。簡単に会える距離ではありませんね」
馬を使っても長旅になってしまう。
お父様は毎日ジェールリカ村で領主をしながら農作業もしている。王都に来ることはまず無理なため、会うためにはこちらから出向くのが必然となる。
しかし、私は使用人として働いているためそれも不可能だ。もうお父様と会えることすらないかもしれないという覚悟をしている。
「話を戻しますが、ジェールリカ村まで手紙を送り、戻ってくるまではかなりの時間が必要となるでしょう。その旨も先方への手紙に付け加えておくと良いかもしれませんね」
「承知しました。ご教授ありがとうございます」
メメ様に聞いておいて良かった。
アドバイスを参考に、縁談関連の手紙や、お父様へ送る書状を徹夜で書き上げた。
翌朝、寝不足で使用人任務に挑み、メメ様から厳しく叱責されてしまう。さらに、レオンハルト様からも呼び出されてしまうのだった。