28話 ミリアの社交会編6
レオンハルト様のダンスは、まるでガイムさんのように上手く美しく、一緒に踊っていてとても楽しい。
「ここまで可憐なダンスを披露してくれるとは……。正直言って嬉しい」
「レオンハルト様のダンスも素敵です。一緒に踊れて楽しめました」
「そう言ってくれるとなお嬉しい。昔厳しい特訓を受けた成果が報われた気がするよ」
「特訓とは、もしかしてガイムさんですか?」
「そうだ。彼はかつて貴族界隈主催の社交ダンス大会で優勝したことがある実力者なのだよ。彼に習ったのだから恥じることのないよう踊れなければとずっと思っていた」
レオンハルト様もガイムさんのスパルタレッスンを受けていたことを知り、親近感がわいた。
私はまだまだダンスにおいて覚えなければならないことがたくさんあるし、今日の社交会が終わってもダンスを習いたいと思っている。
もちろん、ガイムさんが練習に付き合ってくださればの話ではあるが。
「ミリアは素晴らしいな。短期間でこれほどまで上手くなったのだろう?」
「いえ、まだまだ覚えなければならないことがありますよ」
「やれやれ、どこまで好奇心旺盛なのだ……。周りの者たちの反応に気がついていないのか?」
「え?」
私はレオンハルト様と一緒に踊ることが楽しすぎて夢中になりすぎていた。
そのせいで、周りを見ている暇などなかったのだ。
ふと、あたりをきょろきょろと見渡すと、私たちに尊敬の眼差しのようなものを向けられていた。
「さすが国王陛下がゲストで招待したというだけのことはありますわね」
「今回のゲストの理由は、彼女の社交ダンスが素晴らしいから呼んだに違いないでしょう」
「一緒に踊られているレオンハルト公爵が羨ましいかぎりだ」
う、嘘でしょう!?
私、そんなにうまく踊れていたのかなんて自覚がまるでない。
ガイムさんたちの教えかたが非常に上手かったし付きっきりでレッスンしていたからだし、帰ったら褒められたって報告しておかなければ。
教えてくださったみんなに感謝しかない。
いっぽう、ものすごい殺気のような視線も向けられていた。
私がその方向へ振り向くと、すぐに笑顔になっていたがおそらく勘違いではないだろう。
シャルネラ様から向けられていたと思われる殺気は、まるでアルバス伯爵邸で使用人をしていたときに毎日のように向けられていたようなものだった。
久しぶりにその視線を向けられ、今がいかに幸せな毎日を送れているのかを思い知ったのである。
あらためてアルバス伯爵邸には戻りたくないという気持ちを思い出すのだった。
社交ダンスも終わり、主催者の国王陛下が再びみんなに挨拶をする。
「今日は、最近王都に新たな兆しを与えた者を招待している。彼女のおかげで貧民層も起死回生の目処がたち、労働のチャンスを与えることに成功した。その結果、労働者が増え、国に活気が増したのだ。その功績をたたえ、本日の社交会をもって表彰をしたいと思っている」
国王陛下が私に視線を向けてきた。
今日二回目だけれど……。
う、嘘でしょう!?
私、そんなに貢献したなんて自覚がまるでない。
アエル王女からはそのようなことを何度か言われていたけれど、私のモチベーションを上げるために少し大袈裟に言ってくれているものかと思ってしまっていた。
だって、それくらい信じがたいことだったのだから……。
「ミリアならびにその主人のレオンハルト公爵よ、こちらへ来てほしい」
「さ、ミリアよ。行くぞ」
「え、え!? ちょっと……ご主人様!?」
私はレオンハルト様から手を握られ、ひっぱるような形で国王陛下のいるところへ連れていかれた。
ゆ……ユメではないよね!?
こんなことが起こるなんてユメにも思わなかった。
私、どうなっちゃうんだろう……。